20020325

日本育英会労組 小泉の特殊法人改革に反撃

廃止許さぬ闘いを展開

柳沢 淳・中央執行委員長 に聞く


◆利潤追求の育英会廃止
 「育英会の廃止」というのは必ずしも「小泉行革」からのみ浮上したのではなくて、1981年の「第2次臨時行政調査会」から始まった。
 この第2臨調のスローガンは「受益者負担、自助努力、民間活力の導入」だった。当時の大蔵省が出した報告書の中に「奨学金に利子を導入しよう」という文言があり、84年には育英会の奨学金に1部有利子化が強行された。
 こんにち、小泉政権は道路公団などをあげて「特殊法人=悪玉」というイメージをつくり、「育英会の廃止」をはじめ、住宅金融公庫の廃止、住宅都市整備公団の賃貸部門はたたき売るなど、国民生活と密接に結びついた特殊法人を容赦なく切り捨てようとしている。
 小泉政権は育英会廃止の理由として、1つは「民業圧迫」、2つ目は「滞納が多い」ことをあげている。
 まず「民業圧迫」についてだが、これは奨学金制度について何も分かっていない。民業である銀行や郵便局、あるいは政策金融(国民金融公庫など)は商法にもとづいた商売で、当然利益を追求する。だから学生・生徒に直接貸すということはあり得ない。また担保のない親には絶対貸さない。しかし、育英会の奨学金は憲法と教育基本法にもとづいて、いわゆる教育の機会均等を保障する手段としての機能を果たしている。「民間の教育ローンがあるから邪魔」という論理はない。1部有利子化された現在でも、利率は年に約0.5%だ。これに比べて銀行の教育ローンは大体10倍以上の利率だ。
 また、「滞納が多い」と言うが、民間の教育ローンの場合、たとえば銀行が20年月賦で貸して、たまたま1年目に滞納すると20年分全部不良債権化して一括返還を迫る。しかし育英会の奨学金は、ある月払えなくて次のボーナスで返してもセーフだ。 
 つまり、育英会は基本理念として憲法と教育基本法に裏打ちされている教育の機会均等を保障するため活動している。営利目的の教育ローンとは考え方の基礎が違う。  政府は「育英会は廃止するが、奨学金事業は続ける」と言っている。しかし、独立法人化されれば、効率化が優先され、限りなく銀行の教育ローンに近くなる。

◆効率一辺倒は亡国の道
 現在、約76万人もの奨学生が高校、大学、大学院で学んでいるが、育英会の廃止はそこで学ぶ生徒・学生はもちろん、リストラや失業で困っている親にも大きな被害をもたらすものだ。
 また、「財政難」を廃止の理由に挙げているが、これもナンセンスな話だ。そもそも日本育英会が発足したのは、戦費支出によって財政が破たんしていた43年だ。当時の国会議員が議員連盟をつくって、軍部や右翼の妨害にあいながらも発足にこぎ着けた。実は小泉首相の祖父もその議連の一員だった。
 教育というのは目先の利益でははかれないし、日本の唯一の資源は「人材」だ。やはり教育は「100年の計」で考えなければいけない。ところが「小泉行革」の中身は「効率一辺倒主義」であり、小泉政権はまさに「亡国の政権」だ。

◆廃止反対へ一歩も引かぬ
 政府の計画では独立法人化の後には文部科学省の中に「審査委員会」を設けて、育英会後の行政法人の利益が上がっているかどうか評価するという。そこで「効率が悪い」となれば3〜5年の間で「組織を見直す」という。
 また自民党の行革部会の中では「育英会廃止後の職員については選別する」という議論が行われている。加えて、団交の中で「これまでの協定・慣行はすべて破棄する」と言ってきている。
 育英会廃止議論が行われた第2臨調での大きな目玉が「国鉄改革」で、その中で国労が大変な攻撃を受けてきた。このことが日本の労働運動にとっても大きな痛手となった。「小泉行革」もその流れを受け継いで、国民の利益を真っ向から踏みにじり、抵抗の術をつぶそうというわけだ。
 こういうことを許すわけにはいかないし、一歩も引かない覚悟だ。廃止反対のパンフを全国的に配布している。また廃止反対の署名は今日までの3カ月間に約30万人分が集まった。3月8日には24時間ストライキを打ち抜いた。育英会労組は全労連と全労協に加盟しているが、連合傘下の組合も廃止反対の署名運動に取り組んでくれている。また学校前でも署名運動を行っている。4月には第2次の署名運動を計画している。
 いま、小泉政権は一連の「鈴木宗男問題」などでピンチになっているので、ここで倒閣運動を起こすつもりで闘い抜きたい。組合員には「後はないのだからとにかく前へ進もう」と訴えている。

【激励先】
東京都新宿区市谷本村町10−7 日本育英会労働組合 電話・FAX・03-3269-6096

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