20010925

さらなる規制緩和に抗し

港を守るため闘う

全港湾・伊藤彰信書記長に聞く


 小泉改革が進められている中、港湾運送のさらなる規制緩和に直面する全日本港湾労働組合(全港湾)は九月五、六日に第七十一回定期大会を開催した。全港湾は、清水港への新規参入に対し、ストライキで闘い断念させた経験や、港と地域経済を守るために行政なども巻き込んだ「活性化協議会」運動も始めている。規制緩和に反対し、職場での闘争を重視する全港湾の伊藤彰信書記長に聞いた。

 まず、今回の大会の特徴、方針の組み立て方の考え方について。最初に土台として組織の強化・拡大を重要課題に打ち出し、その土台の上に大きな柱を三本立てた。
 一本目は、港湾産別運動の強化ということである。二本目は、中小労働運動の強化、そのための地域闘争、三本目は、国際連帯である。

雇用、労働条件は守る

 産別強化とは、規制緩和、物流の激変に労組として対応するためのものだ。港湾の規制緩和は昨年の秋から十一の港で実施された。
 そこでわれわれは、港湾の「フル・オープン化」を認めるようにかじを切った。フル・オープン化とは、日曜・休日、夜間も港湾作業を行うことだ。これまで、原則として日曜・休日と夜間は作業をしないとなっていたが、それを原則行うことにした。しかし、実際にはこれまでも、例外としてコンテナ作業や石炭や肥料などの大量貨物を扱っている場合には夜でも作業をやっている。
 ただし、行政の考えているフル・オープン化は、税関も日曜でも開ける、夜間荷役の許可も原則自由にすることだ。そうなると港湾管理の問題、海上保安庁や税関などの問題が出てくる。つまり、港湾に関係する業務全体がすべて二十四時間対応できる体制をつくろうとしている。さらに、二〇〇三年を目標にしながら港湾情報などのシステムを統合し、コンピュータで安全管理、税関などの手続きができるようにしようとしている。
 こうした流れの中で、われわれは労働者の労働条件、雇用をどう守っていくのかが問題になる。中央で産別協定を結んでも、実行力がなかなか伴わなかった。
 これからは、東京、大阪などの六大港の闘い方、地方港を中心とした闘い方を全体として包んで闘う。六大港では、これまでの労働条件をどうやって確保していくのかが重点的な課題となっている。協定で拘束八時間、実質七時間、月の時間外労働四十五時間以内となっているので、休日作業をすれば代休を要求するし、四十五時間の時間外労働の規制で人が足りなくなるなら、雇用拡大を求めていく。

いつでも闘える態勢確立

 それから地方港では、規制緩和がまだ実施されていないので、これまでの港湾の秩序、労働者の雇用を維持するために闘っていく。
 今年、静岡県清水港で規制緩和後、初めて新規会社が参入しようとした。その会社は日雇い労働者を集めた。新規参入を許せば過当競争となり、港湾の秩序は破壊される。
 そこで、われわれはストライキで闘い、全国の仲間も連帯ストを準備した。こうした闘いもあり、この会社参入条件をクリアーできず、申請を取り下げた。
 港を守る闘いは、そこで働く労働者全体を組織することが必要だ。そこを踏まえないと、またそういう形で参入される。そのためには、組織力量が重要であり、大会では年間スト権を確立した。これは、初めてだが、いつでもストライキを打てる、組織をあげて反撃する態勢をもっていることを内外に示した。
 さらにわれわれは、労働組合と運輸局、自治体などと共に港湾秩序と地域経済を守るために活性化協議会をつくり、昨年から取り組んできたが、さらに強化したい。とりわけ自治体に対しては、港湾管理者としてどのように港湾問題を考えているのかを議論していきたい。
 なぜかというと響灘の問題で北九州市と交渉してきたが、自治体には港湾管理者という認識が非常に弱い。彼らは「とにかく荷物を集めれば雇用は拡大する」「だから日本一安くて、二十四時間三百六十五日オープンしていく」などと言う。これだけ経済が変化している中で、どういう港をつくるのか、それから地域経済の問題もある。こうした点をもっと議論しないと問題の解決は難しい。だから、活性化協議会というものを強めていくなかで、港湾管理者の参加を要求し、認識を改めらさせる議論をしていきたい。そして、労組、自治体、運輸局などと共に港の秩序を守り、活性化させていく。

企業を超えた中小運動を

 そういう中で中小労働運動、地域労働運動をどう強化するかである。とくに意識しているのは、組織拡大の問題。港湾の荷役作業というのはどんどん機械化が進み、労働者の数は減っている。コンピュータ化の問題、それに付随した仕分け作業、倉庫作業ではパート労働者が働いている。
 そういうところにもわれわれは組織拡大をしていかなくてはいけない。だが、これまでの運動のノウハウでは、なかなか組織化しづらい問題がある。だから、産別運動を強化して、新たな中小運動、企業を超えた労働運動をどうつくっていくか。これを地域でどう進めていくのか。こういうところに踏み出していかないと、結局、企業内の労働運動で、「労働条件下げても雇用は守る」ようになってしまう。そうではなく産別運動を強化する中で、中小の運動も強化して企業を超えた運動をつくっていく。そうしないと、産別運動も強化できない関係になっている。
 大会で分科会をやったが、これまでは職種別だったのを、今年は課題別の分科会にした。その中でかなりいい経験だとかがあった。一つの方向性に向かって議論したというのは重視したい。そうした経験をどのように方針化していくかが重要である。
 全体的な議論になるにはもう少し時間が必要かもしれないが、こうした経験は重要なことだ思う。
 また、もっと活発な議論をする必要があると思う。ナショナルセンター連合が発足して十二年たつが、日本の労働運動の転換点だと思っている。
 港湾でいえば港湾の産別運動の転換期。その中で全港湾として、どういう組織であるべきかもっと議論すべきだと思いう。
 労戦統一問題以降、なるべく他の産別の問題には触れないという傾向があったが。それではうまく問題を克服できない。やはり外に出て運動をつくるということが必要だ。その中で全港湾の組織形態のあり方などを大いに議論すべきだと思う。

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