20010825

特殊法人改革 国民生活への犠牲反対

雇用と生活守る闘いを

渡辺充・政労連委員長に聞く


 小泉政権は「痛む」を伴う改革を掲げている。その中でも特殊法人改革を重視し、特殊法人等改革推進本部を設置して、すべてを廃止または民営化することを打ち出している。この改革は、中小企業の営業や国民生活にも多大な苦難を強いるばかりか、そこに働く労働者にも犠牲を押しつけるものでしかない。しかも民主党も八月十六日、「改革」を競うように三十一法人の廃止と十九法人の民営化を含む独自案を提出した。こうした改革による犠牲を許さず、労働者は同じく痛みにさらされる地方自治体や他の労働組合などと連携し、幅広い戦線を構築して闘おう。政労連(政府関係法人労働組合連合)の渡辺充委員長に聞いた。

 特殊法人改革についてだが、これまでも行革が叫ばれるたびに出てきた。だが、今回の改革はこれまでのものとは違う。そのことは定期大会でもあいさつで述べたが、組合員も認識している。
 では、どこが違うのか。これまでの特殊法人改革は整理・合理化といっても、数合わせ的な面があった。
 今回の改革については、われわれは危機感をもっている。昨年十二月の行政改革大綱、今年に入っての中央省庁再編、独立行政法人と次々に、特殊法人改革を徹底的にやるといわれている。具体的には推進本部を中心に進められてきた。
 さらに、特殊法人等改革基本法という、整理のための基本法が六月二十日に成立している。法律の上でも明確に決められた。この法律は整理するための法律であり、かつてないものである。
 特殊法人がつくられた経過は、戦後民間の力、国民の力は疲弊(ひへい)しており、何とか立ち直らせようとするためにつくられたものだ。そして、戦後復興のために国が中心に引っ張るために、しかもより弾力的にやれるようにつくられた。国家主導で経済成長をさせるためにつくられたのである。
 今回の行革で独立行政法人をつくるときに、特殊法人を徹底的な悪者にした。国鉄の分割・民営化のときも同じような宣伝がやられた。いかにも法人が悪く、自然増殖する、カネはかかるし天下りがある、ということが宣伝された。一方の独立行政法人はすばらしいとイメージがつくられた。
 われわれ政労連のいう改革は国民生活を守り、発展させるためのものだ。特殊法人そのものが、戦後に発足したので時代に合わないものもあるかも知れない。だから、時代に合うものにしていく必要がある。ところが、政府がいう改革はともかく整理してしまおう、というだけだ。
 しかし、特殊法人というものは、政府が計画を立て、財源も含めて、政府と国会で決められている。つまり、法人のほうには決定権はなく、極端に言えば単に事務業務を代行するだけである。
 本州四国連絡橋公団の場合で言えば、橋を何本つくり、その財源はどうするかについては、すべて政府が決めて、その仕事を実行するだけだ。ところが、マスコミも含めて、結論的に橋が多すぎるだとか、カネがかかるからけしからんという。そんなことを言われても公団ではどうしようもないことだ。この点はきちんとしてほしい。
 われわれが反省しているのは、指摘されるような問題点については、きちんと国民にアピールすべきだったということだ。天下り人事問題はある程度やったが、例えば高速道路一つとっても、その仕組みを含めて問題点を訴えることが大事だ。
 政府は、特殊法人をなくせば財政負担がなくなり、すべてがバラ色のごとく言っているが、本当なのか。しかも国民生活にどう影響するのかについてはまたく触れていない。小泉改革の「痛み」がどれほど国民生活に影響するのか。小泉首相は「一度や二度の失敗(失業)にくじけず」などと言うが、労働者にはとても耐えられない。

連携を強め闘う

 この問題を突き詰めていけば、雇用と生活を守る問題となる。各党に要請行動すると「生首を切るなどということはない」と一様にこたえる。だが、それは信用できない。具体的な手だてを聞けば、何もないからだ。
 村山首相当時に、雇用対策本部が初めてつくられることになったが、対策本部ができれば解決するのか。われわれとしては、失業を発生させない闘いが一番重要だと思う。
 これまでも、法人の統廃合の時に職員を一方にシフトして首を切らずに、退職などの自然減で雇用を守った経験もある。ただ、今回の改革がそれでやれるのか、という問題がある。
 小泉改革はわれわれだけでなく、公務員改革も含めれば、公務関係の労働者全体に影響を及ぼすものだ。だから、幅広い連携が大事だ。われわれのような国関係で運動を展開している労組には、国公関係労組連絡会がある。そこでの大同団結が必要だ。われわれも含め国公総連、全駐労、税関労連など六つの組合は、十月に国公連合(仮称)をスタートさせる。そうやってさらに幅広い連携を大切にしていきたい。
 そして、国民へのアピールも大事になる。地方では道路も含めてまだまだ社会基盤整備の必要なところもある。そうした点も訴えたいし、特殊法人の赤字だとか、天下りなどについても、誰に責任があるのかをはっきりさせていきたい。
 こうやって運動を発展させながら、首切りを阻止するためにがんばりたい。

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