20010605

規制緩和で進む港の破壊
港・職場を守るために闘う

国、自治体、業界と「活性委員会」を結成

全日本港湾労働組合四国地本委員長・
本部副委員長 元木 末一氏に聞く


 全国の港湾運送では、数年前から規制緩和が行われたことで秩序が乱れ、中小企業の倒産や労働条件の悪化が進んでいる。こうした中、国土交通省、業界、自治体などと共同して「地方港活性委員会」(仮称)を設立した。小泉政権が登場し、構造改革、規制緩和が叫ばれているが、それは弱肉強食の社会をつくるものであり、多くの中小零細企業、労働者に犠牲を押しつけるものでしかない。四国地本の運動は、規制緩和で犠牲を押しつけられる多くの労働組合や中小商工業者にとっても重要な経験である。全港湾副委員長で四国地本の元木末一委員長に聞いた。

 港湾では、横浜や大阪などの六大港を含めた九港で、港湾運送事業の規制緩和が行われた。その結果、ダンピングや過当競争が進み、大手の業者が地方港にまで進出してくることになる。そうなれば、地方港でも現状以上に過当競争になり、秩序が乱れ、労働条件が低下することになる。
 また、地方港で仕事をしている中小零細の業者も、大手により淘汰(とうた)されてしまう。こうしたことが予測される。
 われわれとしては、地方港の秩序を守り、職場を守るためにどう対処するのかが問われた。
 そこで、地方港活性委員会(仮称)を昨年の四月一日に発足させた。委員会は、政府の運輸局、業界、地方自治体とわれわれ労働組合で構成されている。
 そして、今年の三月三十日に高松で第一回の活性委員会を行った。そこで、会長には四国港運協会会長がなり、副会長には私が就任し、事務局は徳島に置いた。
 委員会の目的は、港湾秩序を守り、地方港を活性化させることであり、われわれ港湾労働者にとっては、雇用と労働条件を守ることにある。われわれからすれば、活性委員会は雇用対策委員会という側面をもっている。
 現在は、愛媛、高知、香川にも活性委員会を置くように努力している。

団結と戦闘性こそ力

 この運動で一番難しかったのは、政府だった。つまり国土交通省などは「世の中の流れは、規制緩和なのに、どうして地方港だけ規制するのか」といって、なかなか応じようとしなかった。
 われわれは、地方港に委員会の設置がなければ、雇用は守れない。ルールがない状態でやれば、スポーツでいうと、グランドを走り回るだけなら、体力のある者、力の強い者だけが勝ち残る。これでは、地方の中小零細業者は淘汰されるだけだ。だから、職場を守るためにルールをつくろうというのが、われわれの要求であり、活性委員会の役割があることをしつこく訴えた。
 しかし、なかなか運輸局はうんとはいわなかった。そこで、高松の運輸局で何回も団体交渉を行った。それも毎回百人ぐらいは動員し、とことん議論した。そうしてやっと、運輸局も了承した。運輸局の次に業界と団体交渉を重ね、参加させた。
 この活性委員会の設置は全国的な意義があり、地方港での職場を守る重要な闘いとなっている。だから、全港湾の二〇〇一年春闘では、沖縄から北海道まで全国でこの委員会設置を求めた。
 しかし、なかなか国土交通省がうんといわないので、かなり闘いを組まないと実現は難しい。だからわれわれは四国でやったことを全国に広げたい。
 今年の春闘では、静岡県の清水港で新規参入問題でストライキで闘ったが、これも活性委員会があれば、話し合いで解決しただろう。現在、新規参入業者の免許は運輸局が出すが、その場合にも業者やわれわれ港で働く労働者の声を聞いて、その上で出すなら出すようにしろということだ。これらが委員会の趣旨である。
 また、ダンピング防止は港湾運送事業法の規制緩和の付帯決議だから、鉄鋼や木材などの業界団体にも参加させて、委員会でダンピングしないと宣言させたい。そこまでやらないと港湾を守れない。
 活性委員会設立運動の全国状況は、東北地本はがんばっており、業界団体は参加を表明している。日本海地本は、懇談会を設置して、委員会に向けた準備をしている。関東地本では、業者に同意を求めて運動を進めており、二十社以上が同意している。
 こうした状況だから、まだまだ運動の強化が求められている。そこで今年の全国大会は香川県で行うが、そこで活性委員会の分科会を設置する。四国が先行したので、その経験に学ぶようにする。その上で、秋年末闘争においてもこの問題で闘うことを確認している。
 それにしても団結と戦闘力がなければ、要求を実現することはできない。今回の成果も、すさまじい労力が必要だった。しかし、こうした闘争がなければ実現することはできないだろう。
 最近の労働運動は、机上の議論や少数の幹部による労使協議ばかりが目につくが、昔風といわれようが、闘争を背景にしなければ前進できない。先ほどの清水港もストライキで闘い、新規参入を阻止したように、やはり労働運動は力関係であり、団結と戦闘力こそ力だと思っている。

ページの先頭へ