20010425

労組、消費者などがWTOシンポ

政府は確固たる経済外交を


 「フォーラム平和・人権・環境」と「職とみどり、水を守る労農市民連絡会議」は四月十七日、東京で「二十一世紀の環境と食料を考えるWTOシンポジウム」を開催した。会場には、全林野、全農林、全水道などの労働組合や消費者団体、女性団体など約四百人が参加した。
 このシンポジウムは、今年十一月にカタールで開かれるWTOで食料や環境問題が論じられることに対し、地域から運動をつくろうとするもの。それは、グローバリゼーションにどう対応し、食料、農村が担う役割を再確認し、政府に確固たる外交方針を求めるものである。
 シンポジウムで服部信司・東洋大学教授は「WTOで、現在は交渉内容すらまだ各国が合意していない。だが、農業問題については加盟国すべてが提案している。日本も農業の多面的機能を主張し、欧州連合(EU)と連携している。しかし、米国の狙いは農業問題ではなく、自国利益のために他国へのダンピングや規制、発展途上国の労働賃金を国際労働基準にせよ、というものだ。米国中心に世界貿易を行えという、ごう慢な態度だ」と米国を批判した。
 川上豊幸・APECモニターNGOネットワークは「自由化・市場原理というが、それでは持続可能な農業は行えない。大国の食料会社が途上国の土地を買いあさり、プランテーション化してしまっている。そのため、地域住民の農業や環境が破壊されているのは、フィリピン、ブラジルなど世界中でみられている。また、市場原理ということは、もうければよいわけで、食料の安全性さえ無視している。米国は遺伝子操作食品の表示さえ反対している。そのため、タイやスリランカでは、作付け禁止措置がとられたりしている。農業については、各国の小作農、小規模農業などを保護するルールをつくるべきだ」と訴えた。
 篠原孝・農林水産政策研究所長は「ガット・ウルグアイラウンドで米国は自国の強い分野を優先させた。そして、米国は先ほどのアンチダンピング問題でも難癖をつけている。自由貿易といいながら、規制しろというのはおかしい。そこで、わが国政府は、農業の重要性をもっと訴えるべきである。すでに農水省の提言があるが、具体的にすることが必要だ。そして、日本は徹底的にWTOで意見を貫き通すべきだ。フランスは米国から輸入される映画・音楽などについて、自国文化の破壊につながると訴えたが、米国はその主張を認めた。日本は米国からこれほど農産物を買っていながら、市場が閉鎖的などといわれるおぼえはない。日本としてのスタンスを明確にし、貿易に左右されない農業をめざすべきだ」と述べた。
 さらに「食料の安全性からいえば、そこでできたものを食べるのが一番だ。米飯給食を実施し、地元の安全な食料を使おうという運動を起こすべきだ。こうした努力が行われていけば、日本の農業、環境を守ることは可能だ」と語った。
 その後、会場から各地での運動の報告や質疑などが行われた。
 輸入農産物などの急増によるセーフガード問題の発生など、日本農業をめぐる環境は厳しいものがある。だが、独立国として確固たる態度をとることこそ、食料、農村、環境を守る道であることを訴えるシンポジウムとなった。