20010215

2001年春闘を闘う

企業、雇用形態を超えた団結を

「横並び」こそ春闘の原点

全国一般 田島 恵一委員長に聞く


 二〇〇一年春闘が始まった。全国の中小企業の労働者の組織化や闘いに努力している全国一般の田島恵一委員長に聞いた。

 二〇〇〇年春闘を総括すると一つのターニングポイントだった、と感じている。
 それは、春闘の原点である統一要求、統一交渉、統一回答という企業を超えた横断的な統一闘争が、結局は資本の論理、各社の業績の論理に負けて、各社ごとの、各労働組合の賃金決定が広がった。
 もう一つは、企業の業績が上がらなければ賃金や労働条件は上がらない、という論理が先行している。中小企業というのは、いわゆる低い利益率などが定着しており、そういう業績至上主義的な賃金決定ならば、中小企業は必ず低賃金になる。春闘を振り返って見ると、主要労組に比べて中小の妥結は八割から八割五分取ってきたが、二〇〇〇年春闘では七割を切っている。格差が開いているのは業績主義的な賃金決定が広がっていることが大きな要因だと思う。
 労働組合側の統一交渉、あるいは企業を超えた連帯した闘い、ここを立て直さなければならないと感じている。その一番の問題点は、「賃金とは何か」ということだ。賃金というのは業績が上がれば上がって、業績が悪ければ低くてよい、ということではない。まず労働者の生活があるべきだ。
 また企業別の賃金決定が広がっていると同時に、職場内においては個人個人のいわゆる年棒制賃金というのが広がりつつある。これは仲間よりも評価を上げようと労働者間の競争を煽る構造だ。そのことが職場の不団結、競争をよんでいる。そういう意味では労働者の原点である助け合いとか連帯というのをもう一度、掘り起こしていく運動が必要だ。
 今後の課題だが、いままで正規雇用労働者の「安全弁」としてパートなど非正規雇用者がいた。ところが「安全弁」だと思っていたらそれが「安全弁」ではなく、結局は正社員が減らされて非正規雇用が増える構造になっている。では正規雇用だから「安全弁」の内側にいるのかといえば、今のリストラ旋風の中でそうならない。
 パートでも派遣でも、正規雇用労働者であっても同じ仕事をしているなら、同じ待遇を求めていく。あるいは同じ団結の輪のなかに組み込んでいくということが必要だ。そういう意味では企業別的な正規雇用労働組合は二十世紀のものであって、二十一世紀はパートや派遣や正規雇用労働者もいっしょになって横断的な労働組合運動をどうつくり上げていくかがまず第一に必要だ。
 ILO条約では、たとえパートでもあっても均等待遇、同一価値労働、同一賃金とうたっている。政府はそれすらも批准しておらず、批准をさせ同待遇を求めていく運動を追求していくことが重要になる。

組織強化、活動家養成に力を

 全国一般は昨年四十五周年を迎えたが、新たなる労働組合運動を展開しようと提起している。全国一般は、合同労組といいながらも企業別労働組合の連合型にどうしても陥ってしまう中で、もう一度、企業の枠を超えて団結体としての運動を追求していく。
 もう一点、重要なのは労働組合の組織率が二一%くらいまで低下し、圧倒的に未組織労働者が多い。未組織労働者の相談活動を全国一般はやっているが、未組織の人たちはほとんどルールなき働かされ方、あるいは労働者としての尊厳さえもないような働かされ方が、あまりにも横行しすぎている。
 労働者の尊厳が守られた働き方、働かされ方が確立するという制度的な側面というのを合わせて取り組んでいく必要がある。まず第一にきちんと労働基準法を守らせる。今は労基法違反が横行している。例えばサービス残業はそうだし、一方的に経営者の都合で解雇されることもある。明確に解雇制限のルールを制定していく運動を強力に進めていきたい。
 昨年から二十数地本でメールでの労働相談を受けつけ、七地本でホームページを設け、メールの相談からの組合づくりというのがかなり進んだ。今までの電話相談とかビラまきなどと同時に多くのチャンネルを設けながらの相談活動を展開していく。
 二〇〇一年春闘の時期に三月に一カ月間かけて、すべての地本が「組織化月間」を取り組む。これが先ほどのホームページ、メールでの呼びかけと同時に全国一斉に、ビラをつくりなが全国一般として集中して取り組む。
 これを組織するためには、企業別組合ではもう取り組めないというのが今までの組織化で明らかだと思う。そういう意味で企業を超えた、横断的な団結体としての全国一般の社会的な役割というのが重要になっていると自覚している。
 だが、問題は主体性である。そのためにはどう若手のオルガナイザーを育てるかというのが全国一般内部においては重要な課題である。五月、六月に東西二カ所で「オルグ学校」を全国一般として開き、活動家の育成、オルグ集団づくりを本部としても意識的に進めていく。やはり活動の担い手をどうつくっていくのかが労働運動にとっては重要な課題だろうと思っている。