20010131

2001年春闘を闘う

「港を戦争の道具にするな」

規制緩和は国民生活破壊

全日本港湾労働組合 安田憲司委員長に聞く


 労働組合では、二〇〇一年春闘の準備が始まった。港湾の規制緩和で大きな影響を受けている全日本港湾労働組合の安田憲司委員長に、規制緩和問題や今後の闘いなどについて聞いた。

 港湾の規制緩和問題だが、二つある。
 一つは、そのために港湾に働く労働者に犠牲が押しつけられており、その問題で当然、闘わなくてはならない。
 もう一つは、港湾の問題を日本の物流問題としてとらえ、それが国民生活にどう影響しているのかを問題にしたい。つまり、安定した経済秩序がなければ、国民生活を安定させることはできない。
 さまざまなものが輸入されているが、大部分は港湾を通じて入ってくる。以前は、輸入品が目で分かったが、コンテナで来ると中身が分からない。しかも二重梱包(こんぽう)されたコンテナについては、中身の表示義務さえ、法律にはない。中身が分からないことは、港湾作業者も、全国に運ぶトラック運転手にも大変危険である。われわれは最低限、危険物の入ったコンテナには、危険マークを表示するように政府に求めている。
 かつてベトナム戦争当時は、船で米兵の死体なども運ばれ、われわれはその作業に反対して闘った。新ガイドラインにともなう周辺事態法にも関係するが、コンテナに弾薬が入っていてもチェックできない問題もある。知らないうちに戦争に協力させられていることになる。
 さらに化学物質は、現在は四万種類を超えるほど増えている。それらが運ばれて、事故を起こしても、どう対応すればよいかという問題もある。消化のために水をかけて化学反応することもあり得るだろう。
 しかもコンテナのサイズは、事実上米国のサイズになっている。最近まで、二十五トンのコンテナが来ても、国内法では二十トンまでしか運べなかった。特例として黙認していた。米国はさらに三十トン、三十五トンと大型化したコンテナで日本にものを運んでくる。それに対して、道交法一つ見ても整備されていない。道路の構造上も不安がある。
 三十トンものコンテナが狭い日本の道路を走り回り、大事故になっても不思議ではない。米国では道路に大型専用車線があり、普通車が走ればたいへんな罰金を取られる。だからどんなに渋滞していても、大型車線に入る車はない。日本は、規制緩和だけをいうが、こうした法的措置を含む対応がない。
 このように規制緩和によって、国民生活に悪影響を与えていることを強くアピールしていきたい。港湾の産別としてはもちろんだが、トラック輸送などの労働組合とは交運労協という形で連携があるが、そこにとどまらず消費者団体などとも連携を強めたい。そうやって広範な国民と共に規制緩和が国民生活のどう影響しているかを考え、安定した物流、港湾の秩序をつくっていきたい。

    ◇   ◇

 今、大きな問題になっているのが、常陸那珂湊港、北九州の響灘港などの巨大港建設だ。しかも非指定港としていっさいの規制がないようになる。例えば響灘港は、これまでの九州全体の港で取り扱ってきた貨物の一・五倍の処理能力をもつという。そうなれば、関門、博多などの港が衰退するのは目に見えている。
 春闘において規制緩和の影響については、煮つめていく。つまり労資で、規制緩和による欠陥をうめる。それは業者側が進めた規制緩和の結果であり、当然,、業者側が責任をとる形でうめていく。
 例えば、三百六十五日、二十四時間港湾が仕事をできるようにという提案がある。それならば、きちんと代休を出し、週四十時間、週休二日制を守らせる。
 また、周辺事態法などに反対する運動は、引き続き強めたい。反戦・平和は港湾の伝統である。第二次大戦でも、港湾、船舶などで多くの犠牲者が出た。港湾は戦時には軍事拠点として攻撃される。だから「港を戦争の道具にするな」をスローガンに、港湾、船舶、航空などといっそう連携を強めながら、新ガイドライン、周辺事態法などに反対していく。