20010131

21世紀 労働運動を再生させる

労働運動活動家新春座談会

(4)


「風向きが変わった!」

武見 その通りだ。日産のリストラの発表があった後、私は「情勢の風向きが変わってきた」とみんなに言った。まだ労働者が大きく立ち上がるような情勢ではないが、敵の攻撃が強まっているのに既存の(参加路線の)労働組合が闘えず、労働者はどうしたらよいか、真剣に考え始めている。少なくとも、いままで私たちの話を聞いてもらえなかった人たちも含めて、耳を傾けてくれるようになった。
 日産では毎週のようにビラまきをしてきた。以前はビラをまいていても、取ってくれない。ところが、リストラ計画発表以降は取ってくれる。 ぜいたくはできないにしても定年までは雇ってくれるだろうというささやかな夢までも砕かれ、労働組合も当てにならないことがわかった。そういう中で労働者の意識が変わり始めて、私たちの主張が入っていきやすくなっている。
 トヨタでもそういうことが起こってきた。トヨタにしても、いまのままで激しいサバイバル競争に生き残るのは大変で、まだ系列を温存したまま勝ち残ろうとしているが、早晩、攻撃がかかってくるだろう。豊田という資本の支配が強い企業城下町でも、危機感を持ちながらなにをやったらいいかわからない人がいて、私たちはそういう人たちと広く連携して始めた。集会にたくさんの人がきてくれた。そういう経験を通じて、自分たちの主張に自信をもった。小さな勢力でも大きく訴えて連携すれば、影響を与えられる。

規制緩和の犠牲になる労働者との連帯がカギ

川上 一つの組合の中でも、同じような経験をしている。組合というのはいろんな考え方の人がいて、極端にいったら足を引っ張るやつもいるし、全面的に協力してくれる人もいる。それをどうしたら闘う方向にまとめていくかが努力のしどころだ。
 今年はマツダも正念場で、労連としても是々非々で対応するという方針を決めている。状況からして昨年より厳しい回答が出るだろう。組合員から執行部へは毎年批判の嵐(あらし)だ。これに真剣にこたえていくことで、雑草みたいに強くなっていくのだと思う。
司会 では、どう闘うか。もう少し具体的に話していただけませんか。
佐川 こんにち大企業の労働者といえども雇用不安にさらされている。どう闘うか。
 闘争課題で言えば、企業に雇用責任をとらせる解雇制限法を要求する闘いは重要だ。ヨーロッパではEU(欧州連合)指令に基づいて、合併などで企業が変わっても雇用責任はとらせている。いまの日本は、それがまったくない。
 また、企業内組合の限界が出てきているわけで、これをどう克服するか、産業別組合としてつくりかえも含め大きな課題だ。企業ごとに労組が組織されているから、「勝ち組」と「負け組」が労働者間の問題にされてしまっている。
 「勝ち組」「負け組」に仕分けされる労働者がどうしたら連帯して闘えるのか、これを解決しないと、労働者を競わせて利益をとる国際資本に対して効果的に闘えない。この点では、米国の労働総同盟産別会議(AFL−CIO)の経験は学ぶところがある。規制緩和でものすごい貧富の差がついて、組織人員も激減した。彼らは、そこで規制緩和の犠牲になった労働者を組織する以外にないと組織拡大に力を注ぎ、再び前進を始めた。韓国の民主労総も、国際通貨基金(IMF)に対抗し、同じ労働をしていれば、下請けだろうと派遣であろうとパートだろうと時間の単価はいっしょだとして闘っている。
 日本の労働運動は企業内組合の体制にどっぷりつかっている。労働組合はこれしかないと思わされている。そうではない。規制緩和で犠牲になった労働者とどう連帯するか、ここが大事だということをしっかり身につけてやっていく必要がある。
三本 今日は民間の非常に厳しい状況や、能力別賃金などにどう闘うか聞くことができたが、それにとどまらず、社会をどうするのか、職場の中だけでなく、外にいる労働者との連帯や協力関係をどうつくるのかをきちんとつかまないと、自分だけよければよいということになっていく。賃金でも人員問題でも、当局の狙いやその背景をきちんと明らかにして、労働者のためにならないということを暴露しながら、活動したい。すぐに局面を転換することはできなくても、課題としては、若い活動家に話をしたい。
 若い人から見ると、本部の役員は自分が定年になるまでうまくやれればいい、その後のポストをどう確保できるか、そういうことしか考えていない。大きな変動の中で、どういう組合をつくっていくかということは考えない。この点で方向を示し、彼らといっしょに打開したい。
 また、組織の殻に閉じこもっては展望が出てこないので、地域に積極的に出ていきたい。出れば批判も出てくると思うが、それも勉強だと思う。
佐川 規制緩和で、荷主とか大手にとって都合のいい体制づくりが進む。ほとんどの中小下請け業者を含めて労働者が犠牲になる。だから、中小で働く労働者が業者と連携して、荷主に迫る。こういう構造をつくる必要があり、これがグローバリゼーションや競争の論理に対抗し、共に生活の場を確保できる道だ。競争原理からの脱却は、労働組合の連携がなければ道は開けない。
 労働者の世の中に対する考え方が変わらざるを得ない。現存の体制に依存するということでは生活は守れない。そういう労働者をどうつかまえて組織するのかというのは、とくに大事だ。中小下請けのところには七〇%の労働者がいるが、組織されているのは百人以下の企業ではわずか一・七%。組織する課題は、非常に重要になっている。そういう労働者を誰がつかむのか、労働党もおおいに役割を果たしてほしい。
 また、組織するときに企業内労働組合ではなくて、産業別労働組合に組織する仕方を、本格的に考える必要がある。なかなか先の長い話にみえるかもわからんが、最初はちょぼちょぼのように見えても、激動しているからすごいものになるんじゃないか。
武見 昨年は、地域で反リストラ集会をやってみて、「やりようがあるな」という自信が生まれた。
 たとえトヨタが世界的大競争を勝ち抜いたとしても、それは労働者をはじめ中小下請け業者や地域を犠牲にして成り立つことだ。私たちは、トヨタ資本のリストラ攻撃が猛威を振るう前に、攻撃に備え、闘う体制を整えたい。
 資本の容赦のない攻撃は、労働者の意識を急速に変化させている。企業主義・参加路線の呪縛(じゅばく)から労働者を解き放ち、階級的労働運動へ向けた闘いに有利な条件をつくりだしている。それを生かしてできることから始めたい。宣伝活動をもっと強め、労働相談や労働学校も追求したい。
 一昨年まで何から手を着けたらいいのかわからず、職場の問題にだけ追われていた状態から、昨年、外に向かってほんの少し能動的に動いただけで状況が変わってきた。全国の闘いの一翼を担えるようにがんばりたい。

国の進路で先進的役割を、民主党支持に対抗できる闘う陣地を

三本 昨年は国民運動や平和運動での労働組合の役割について重要な経験をした。この方面では、連合になって、総評の時代からすると取り組みが弱くなっていた。そうした状況を突き破るような感じで神奈川では、昨年七月、沖縄での嘉手納米軍基地包囲行動に連帯して、厚木で大きな集会をやった。最初は自信がなかったが、地域の労組が中心となり断固やってみたら、県下各地の労働組合が呼応し、たくさんの人が集まって元気になった。久々の大きな集会で中心を担った労働組合は自信を持った。その政治的影響は、自治体も含め県下に広がった。
 わが国の進路が問われているとき、そういう課題でも労組が積極的に参加して、経験を通じて労働者階級が果たすべき役割を植え付けるようにしていきたい。
佐川 情勢は急だ。戦後の歴史を振り返ってみても、米国が朝鮮戦争をやろうというときはレッドパージをやった。いま米国に追随して新日米安保、ガイドライン見直しなど日本が戦争に踏み込む道が急ピッチで進んでいる。われわれと支配者との競争だと思う。敵の側が苦しくなっているから、われわれがきちんと対応できれば、チャンスになるが、支配層もそういうことを知って、手を打っている。甘くみてはいかん。日米同盟強化、有事体制づくりに抗してどう闘いを構築するか。連合指導部は日米安保を礼賛するところまできている。だが、海員組合、自治労や教組、全国一般など闘う部分もいるわけで、これらが連携して闘い、もっと自信をもって、逆に連合がそういう方向に引っ張ろうと思っても成功しないということを権力からも見えるように、準備しないといけない。
 また、これらの闘いを通じて、労働運動の中に民主党支持勢力に対抗できる闘う勢力の陣地を形成することが重要だ。簡単にそうはならないが、連合が二大政党の片方・民主党支持で固まるようなことになれば、労働運動の発展も、政治の変革も展望が暗くなる。当面は、社民勢力が総結集し、その中心になってもらいたいし、われわれにできることは積極的に進めたい。
 最後に、二十一世紀は労働者にとってまさにインターナショナルな闘いがお互いにとって展望を与えるものとなると思う。昨年末の韓国民主労総・韓国オムロンの京都本社への闘いに対する日韓連帯の闘いは、示唆に富むものであった。
司会 座談会を通じて、皆さんの新たな意欲を感じたし、わが国労働運動の再生に向けて「新たな芽」が成長していることを実感した。
 党は総括文書を出していっそう責任ある立場に立った。二十一世紀の最初の年は、思い切って全国各地の大衆の中に入り、活動家の皆さんと方向をめぐって議論し、具体的な連携も実現して、労働運動の再生のため汗を流したい。どうかよろしくお願いします。

(終わり)