20000905


自治労大会に参加して
闘い求める全国の仲間たち

人事評価問われる自治労

自治労組合員  吉永 真一


 自治労(榎本庸夫委員長・約百一万人)は八月二十三日から長野県で、第七十回定期大会を開催した。今年の大会は中間年大会で、第六十九回大会で決定した二〇〇〇年〜二〇〇一年度運動方針に基づく一年の総括などが議論された。賃下げ攻撃に続き、人事評価制度の導入など、ますます行革攻撃が強まっている。こうした攻撃に自治労がどう闘うかが問われている。


 これまでの大会では、政治方針をめぐって、「民主党基軸」いう中央の方針に対して、東北や九州などの県本部から「社民党を含めるように」修正案が出された。それらの県本部の代議員や傍聴者は「民主党といっても、その前は合理化推進の自民党ではないか。労組とは相いれないのが実際だ」との声を上がった。だが、今回の大会では、そうした政治方針をめぐっても応酬が少なくなった。
 これは、昨年の方針で決まったことや、すでに六月に総選挙が行われたからだが、これは運動方針の決定が二年に一回という大会方式にも関係しているだろう。分科委員会方式は細かいところまで議論できるかもしれないが、参加者全員が全国の闘いを共有できなくなってしまう。また、全員での議論はヤジも含めて一定の緊迫感もあった。そうした点も、大会の盛り上がりに関係していると思う。

人事評価制度で議論白熱

 労働分科委員会では「人事評価制度」をめぐって、熱心な討論が行われた。
 昨年は、公務員の賃金抑制攻撃の中で七都県で基本賃金の一律削減が行われた。そして人事院は非現業の国家公務員給与について、基本給の改定を見送り、扶養手当のみ四百七十四円引き上げることなどを求める勧告を行った。
 さらに人事院は、「能力、実績などの評価・活用に関する研究会」を設置し、人事管理を「能力、実績」を重視したシステムに変更し、新たな人事評価システムを作成しようとしている。
 だが、本部は新たな人事評価制度について、公平性、客観性、透明性、納得性が得られること、職員間の競争を煽(あお)るのではなく、能力開発や適材適所の配置を中心に活用すること、などを求めるという。つまり本部は反対せず、運用を「民主的」にしてくれというものだ。
 この問題で、青森、香川、大分など十三県本部から、反対の立場を明確にせよ、闘おうという修正案が出された。本部は趣旨取り入れを答弁し、結果的に修正案は取り下げられた。だが、本部は差別や分断を導く現在の人事管理制度には反対だが、人事制度改革には反対ではないというもので、非常に不十分な対応だ。
 「ベアゼロ、一時金削減の上に能力主義や新人事管理制度まで打ち出してきた。新評価制度は問題が大きすぎる。自治労は人事院を糾弾すべきだ」(栃木)という代議員の声に表れているように、人事評価制度について明確に反対の態度を打ち出して闘うべきだ。この点で活発な議論になり盛り上がったのはよかったのではないか(別掲)。

行革推進の鷲尾・鳩山

 やはりこうした問題が出てくるのは、政府の行革攻撃があり、それに有効に反撃できていないからだと思う。九四年に自治省が地方行革の通達を出し、地方行革が本格的に始まった。そして九六年に新地方行革が出され、九七年十月には新々地方行革案が出された。
 こうした攻撃の中で、現業職場では民営化をはじめ相当な合理化が行われた。人事評価制度の導入もそうした攻撃の一つであり、いよいよ自治労への組織攻撃と公務員減らしが本格化するだろう。
 この点で、きちんとしていなければ、闘わないで敗北してしまうのではないか。そうした危ぐを感じる。連合の鷲尾会長は来賓として、「社会構造改革に伴い、自治体職場の基盤に大きな変化が求められています… 職場改革、自治体改革を積極的に進めていきましょう」などとあいさつしたが、こうした観点では闘えず、職場は守れない。
 なぜなら構造改革を進め、職場の基盤を大きく変えるなどというのは、当局の主張と同じであり、合理化推進そのものだとしか思えない。
 また、民主党の鳩山代表は「財政の健全化に資するための改革の道筋をどこに求めるのか、共同作業をお願いしたい」などとあいさつした。これも財政改革のために、公務員に血を流せと言っているだけではないか。

職場闘争破壊の日共の分裂

 共産党が自治労連などという分裂組織をつくり、自治労を割ったのはちょうど十年前である。
 分裂組織の存在は職場でも大きな障害になっている。大会でも北海道、横浜や山口県から組織競合している報告があった。職場で分裂しているところでは、どちらにも属さない未組織の仲間も多くいる。そのため当局は、さまざまな合理化提案について、組合が拒否すれば、「分かりました。組合員でない方にお願いします」という。そうなれば、同じ職場で自治労組合員はやらないことを未組織の仲間がやることになる。そして組合員との溝が大きくなってしまう。こうした悪循環がある。
 それだけに共産党の分裂攻撃は、実質的には当局の合理化攻撃を手助けしているといえる。
 こうしたことからも、自治労運動をどう発展させるのか。どう闘うのかがますます重要になっていると感じている。しかも、若い三十歳代の組合員は共産党との分裂や組織戦争を知らない。あるいは労働組合とは「制度政策要求の連合労働運動」だと認識し、職場で闘うことを知らない仲間が増えている。
 この点で、職場闘争を基礎にするのは当然だが、若い世代に労働組合の歴史や闘いを教育しなくてはならないだろう。もちろん共産党の分裂という裏切りについても。二十一世紀を目前にした私たちは、そうした総括とそれに基づく教育を大事にしていく必要があると痛感している。


相つぐ人事評価制度反対の声
大会代議員の発言より(要旨)

富山 新たな人事評価制度に反対することは労働組合として当然のこと、「公平・公正・透明・納得」の4要件は重要とは言えない。差別制度の本質を全組合員に明らかにし、認められないという全組合員的な認識と統一をはかるべきだ。
岩手 青年部総会でも、職場実態や背景を無視した能力成績主 義の導入は、労働者間の競争をあおり、いっそうの格差拡大を招くもので、当局が「もの言わぬ労働者」をつくり、組織の分断を職場にもち込むものだと意思統一し、制度の導入に 反対していくことを全体で確認した。
広島 人事評価制度は労務管理であり、労働者の権利はく奪につながる。青年層と中高年層の分断をはかり、賃金抑制の狙いは明らか。差別と分断を前提としたもので、労働組合の闘 いを後退させるものだ。
高知 自治労産別として統一闘争強化の方針を確定闘争に向けて提起してほしい。高知県職労は人事評価システム・勤勉手 当の成績率がすでに導入されており、組合員アンケートでは7割が反対している。導入は、当局にとって都合のよい職場 づくりにつながる。
宮崎 現業職場を中心とする民間委託や賃金引き下げ攻撃が強 まっている。財政分析や労使交渉では不十分。行革に対して、特に現業職場を中心とした攻撃に産別をあげた闘いとして運動の再構築が求められている。


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