20000715


資料 各労組の総選挙総括

勤労国民の政治実現へ総括は重要


 総選挙で自公保への批判が噴出し、与党は六十五議席を失った。だが、野党の側も政治の転換を訴えず、労働者や中小商工業者などの要求を政策として示せなかったばかりか、民主党は課税最低限の引き下げなど、大衆課税を掲げ財界の政治を支える姿を露呈した。支配層はこの危機に引き続き保守二大政党制の策動を続けており、政治再編は急速に進むであろう。主な労組の総選挙の総括について若干紹介するが、政治の根本的転換のために、労働組合が総選挙の総括を行うのは重要である。


自治労(自治労新聞より)
民主が躍進、自公保後退―組織内協力候補は8人が当選

 第四十二回衆議院総選挙では、民主党が百二十七議席を獲得する躍進を見せた。社民党も健闘し十九議席を確保。自公保の与党三党は絶対安定多数を確保したものの六十五議席減の二百七十一議席へと後退した。自治労組織内協力候補は八人が当選した。
 六月二十五日に行なわれた第四十二回衆議院総選挙では、自民・公明・保守の与党三党が解散時議席数の三百三十六議席を大きく割り込み、二百七十一議席へと後退。連合・自治労が支援した民主党は三十二議席増の百二十七議席を獲得。また社民党は五議席増の十九議席を獲得した。投票率は六二・四九%で、過去最低だった前回の五九・六五%を僅かに上回った。この総選挙に自治労は、比例単独候補二人(民主)、小選挙区比例重複候補十七人(民主十一人・社民六人)の組織内協力候補を擁立。各地で与党候補とのし烈な選挙戦を展開し、比例区七人、小選挙区一人の計八人が当選した。
 今回の総選挙は、政権の枠組み、森首相の「失言」に示される国民軽視の政治姿勢、財政再建、地方分権、介護を始めとする社会保障システムなどを争点にたたかわれた。自公保政権との対決を鮮明にした民主党をはじめとする民主・リベラル勢力が前進したことは、巨大与党を後退させると同時に、来年の参院選挙においてもさらに野党勢力が伸長し、民主党を中心とする政権の実現につなげていく地歩を築いたものと評価できる。


日教組(ホームページより)
「戦前回帰」NO! ―総選挙結果から―教育基本法にもとづき、子どもを大切にする社会へ

 衆議院選挙が終了しました。今回の選挙で争点となったのは、まず、第一点に景気・雇用対策、第二点が教育問題でした。また、昨年の第百四十五国会で、ガイドライン関連法、「国旗・国歌法」、「盗聴法」など、憲法で保障された基本的人権や憲法九条などに抵触するような重要法案が、十分な国民的なコンセンサス形成もなく、成立したことに対して、国民がどのような審判を下すかが問われた選挙でした。また、森首相の「神の国」発言、「教育勅語」絶賛発言などにみられる、一連の「戦前回帰」を志向する首相の資質も争点となりました。
 選挙結果は、すでにマスコミ報道で伝えられています。憲法・教育基本法を基調においた教育の実現をめざしてきた日教組としては、今回の選挙結果について、第百四十五国会で成立した各法案や「戦前回帰」を志向する森首相の資質へ対して、国民の多数が「ノー」という意思を表明したものと受けとめます。
 日教組は、十五人の日教組推薦候補者(日政連)を擁してとりくみました。そのうち、現職七人の候補者の当選を勝ち取りました。
 日教組は引き続き、「学級崩壊」・いじめ・不登校など子どもたちが社会・おとなに対して発信している「メッセージ」を真摯(しんし)に受け止めた政治となるよう、幅広い市民のみなさんといっしょに取り組んでいきます。


ゼンセン同盟
高木 剛会長の談話より

「願い」かなえられなかったが次への期待抱かせる結果に

 二十一世紀初頭の日本の政治の方向を決める衆議院議員選挙が終わりました。
 結果は自民、公明、保守の与党三党が二百七十一議席の絶対安定多数(二百六十九議席)を上回り、「政治に新しい流れを!」という私達の願いはかなえられませんでした。残念です。
 しかし、自民党は解散時の二百七十一から二百三十三に議席を減らし、政治を変えようという国民の意識が芽生えた選挙であり、民主党の躍進は次の総選挙への期待を抱かせるという捉え方もできると思います。
 ゼンセン同盟の組織内・重点候補は、滋賀一区で川端候補が堂々の当選、愛知八区の伴野候補が選挙区では僅差で敗れたものの、比例代表で当選、宮崎一区の米沢候補は健闘虚しく涙をのみました。川端さん、伴野さんの国会での活躍を期待したいと思います。

今後も続く「流れを変える」闘い

 加盟組合のみなさんには、全国各地で果敢に闘っていただき、心から感謝申しあげます。ゼンセン同盟の政治への影響力強化のため、力を尽くしていだたきました。懸命に闘っていただいたにもかかわらず、勝利に結びつかなかった選挙区もありましたが、そのご労苦に対して、衷心(ちゅうしん)より敬意を表したいと思います。
 政治の流れを変える闘いは、今後も続きます。来年は、参議院選挙が行われます。働く者の生活の改善と権利の向上という課題は、労使の関係だけでは解決できず、政治の場での解決にゆだねざるを得ないものがたくさんあります。
 今後も労働組合と政治の係わりを認識し合い、政治活動に力を注いでいきましょう。これからもがんばり合っていきましょう。


電機連合
大会での鈴木 勝利委員長あいさつより
自己否定を恐れずに政治・経済・社会の改革を

 今回の総選挙は、三つの選択、一つに政権の枠組み、自・公・保なのか、民主党中心なのかの選択であり、二つに、総理の選択、自民党の敗北による総理の交代を求めるか否かの選択であり、三つに、政策の選択、後世にばく大な借財を残し、利権に癒着したなりふり構わぬ公共投資による景気回復なのか、あるいは、公共投資は必要不可欠なものに限定した上で財政の改革を図るという選択、さらに投票の物差しとして、一つに今までの経済政策の業績評価をどうみるかであり、二つに公共投資とは都市部の税金を地方に再配分する性格を持っていることを考慮しても、これだけの借財を後世の負担にさせてしまってよいのかどうかでありました。
 今回の選挙では大きく二つの問題が浮き彫りになったのではないかと思います。一つは、民主党の躍進はあったものの、自・公・保の連立政権は継続されることになったことであり、一つは、現在の選挙制度の矛盾であります。制度の矛盾とはよく指摘されている一票格差の問題です。選挙区による一票の格差は最大で二・四七倍といわれていますが、これは視点を変えれば、都市部の選挙民は地方の二・四七分の一の価値しかないということであり、明らかに民主主義の原点に反しているといわざるを得ません。
 二つに、今回の選挙で明らかにされた自民党の体質に危険な兆候を見ないわけにはいかないことです。
  日本経済のおかれている環境への的確な対応、そして電機産業や各企業が進める構造改革に対し、意識改革や処遇システムを通じ私たち自身が自己改革を図っているにもかかわわらず、自民党政治は改革を怠るどころか、むしろ税金を使って地元や業界への利権誘導を堂々と主張するという、五五年体制の旧態然たる政治手法に回帰していることであります。元建設大臣の受託収賄罪による逮捕がこのことを雄弁に物語っています。
 そうした政治状況の中での一点の光明は民主党による「課税最低限の引き下げ」問題の提起であります。この問題そのものの良否は税制改革の中で明らかにしていくものですが、この問題提起の一番の意義は、大衆迎合の側面を持つ総選挙に対し、敢えて「苦い薬論」を展開したことにあります。票欲しさに選挙公約は「甘い水」だけを示していればよいという風潮に風穴を開けたものであり大いに評価するものですが、それは同時に私たち選挙民にも重要な意思決定を迫ったものであります。


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