20000515


労働運動の変革に役立ちたい
労働者の立場で歌い続ける

熊谷誠二さんに聞く


 国労闘争や中小労組のキャラバンで労働者を激励する歌を歌う熊谷誠二さん。労働運動への思いや今後の活動などについて聞いた。


 人生変えた国労との出会い 九六年に「八高線は北風に負ケズ」という本を読んで感動した。そこで八高線(八王子から高崎)の各駅でコンサートをしたいと著者に相談に行った。それならば国労と相談しようということで、国労の人びとと出会った。
 私は、コンサートがしたいという理由で取り組んだが、八高線各駅の駅員の八割が国労組合員であり、いわば「窓際」的な配置だったことを知った。
 国労の組合員の皆さんもコンサートは初めてで困惑していましたが、客を集めるのではなく、地域の人びとといっしょにつくっていくコンサートをしようと呼びかけました。地域の人びとにとって八高線は文字通り「足」であり、公共交通としての八高線を守ろうとアピールした。住民の方々も積極的に協力してくれ、国労はこうした住民のための運動もするんだと新しい関係もできた。
 成功した八高線のコンサートが私の音楽観、人生観を百八十度変えた。それまでは、ライブハウスでラブソングなどを歌っていた。だが、それでよいのかと思った。ラブソングは誰でも歌えるが、働く者を歌う歌手がいない。じゃあ、私がやろうと決めた。

労働者の立場で歌えた
 今回、中小労組政策ネットワークなどの全国キャラバンに参加した。これまでは国労しか知らなかったが、それではだめだと思い、中小労組の皆さんとは初めて会ったが、参加させてもらった。
 今回のキャラバンで一番感激したのは、大分県の佐伯造船での昼休み集会でコンサートをさせてもらったことだ。船をつくる現場を見ましたが、まさに3K職場だ。だが、そこの労働者は仕事に誇りと闘いに自信をもっていた。そこの昼休み集会で歌うことは、職場で労働者の中で歌えることであり、労働者の立場に立って歌えたことに感動した。
 こうした触れ合いのなかで、多くの仲間とも知り合い、そして各地から来てくれということが増えてきた。これは、労働運動の中でも音楽の必要性を感じ始めたのではないかと思う。私も呼ばれていくことに非常にうれしく思っている。

韓国の刺激も伝えたい
 韓国に「コッタジ」という有名な労働歌を歌うグループがある。キャラバンの最中に、「熊谷さんも新しい刺激を求めたほうがよいのではないか」と言われ、夏にはコッタジのサマーキャンプに参加する。そして向こうで受けた刺激を日本に還元した。
 労働運動が変わるために、どうやって若い人を組織していくのかにかかっていると思う。組織する側もそうした点に気づき変わり始めている。だから、私が歌う意味や意義があるのではないか、と思っている。
 恥ずかしい話だが、現在の文化・歌ははやりすたりだけだ。だが、労働者の思いや生活にはそれがない。だから私は歌を歌う限り、労働者に根ざしてやっていきたい。

黙っていてはいけない
 声を上げていくことが大事だと思う。時代が激しく動いているので、信念をもっていないとやれない時代ではないだろうか。
 労働者にとっては、いつリストラされるか分からない。リストラを防ぐためには、一人ひとりが声を上げていくことだ。日本人はおとなし過ぎだと思う。
 私はそうした中で、先頭ではなく輪の中で歌を通じて生きていきたい。また、労働運動が盛んになれば、私の歌もみんなの力でもっと表に出ていけると思う。また、みんなにかかわらなくては曲もできない。現場に入って話をしないと歌はできない。しかも地域ごとに課題は違う。だからもっともっといろいろな所に飛び込んでいきたい。
 やっぱり労働者が元気でないとダメだと。労働者とつき合わないと歌もつくれない。そして歌えば、労働者の心境を歌うのだから、聞いている労働者は元気になる。そのためにもっと多くの仲間とかかわりたい。


キャラバン中につくりあげた曲
ゼッケン  作詞・作曲 熊谷誠二


迷い 戸惑い 立ち止まったとき
後ろを振り返ると いつも同じ思いの奴がいる
背中 押されて 立ち上がった時
後ろを振り返ると いつも同じ思いの奴がいた

ゼッケン 背中に背負った この文字に
俺の全てが 写し出されている
誰の為でもなく 俺の為に 立ち上がったのに
後ろを振り返ると いつも奴がいる

生きる 希望も 涙も 涸れて
つらい思いで 心を過る
遠い 故郷 家族団欒 必ず勝って 帰ってみせると
ゼッケン 胸に張った 細い体に
こぶし振り上げ 闘う俺がいる
誰の為でもなく 俺の為に 立ち上がったのに
後ろを振り返ると いつも奴がいる

ゼッケン 背中に背負った この文字に
俺の全てが 写し出されている
誰の為でもなく 俺の為に 立ち上がったのに
後ろを振り返ると いつも奴がいる
後ろを振り返ると いつも仲間がいる


プロフィール
 1967年埼玉県生まれ。8歳で劇団「こまどり」に入団。NHKドラマ「風の又三郎」で子役デビュー。「1年B組新八先生」「家族ゲーム」「男の家庭科」などテレビ出演多数。
 20歳でフォークシンガーとして音楽活動開始。96年「八高線は北風に負ケズ」コンサート。97年、「ピースサイクル」コンサートや地域に根ざしたコンサート活動を多数行う。
 ファーストアルバムは、「RUNNING ROAD MY DRAEM」。現在、セカンドアルバム準備中。


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