20000415


関東バス労組 36万円の賃下げ攻撃へ
21年ぶりの24時間スト

スト背景の集団交渉が力

関東バス労組  陸川 知威書記長に聞く


 二〇〇〇年春闘は、中小労組は引き続き闘っている。そうした中で、私鉄総連の中小労組十六組合は、三月二十四日に第一波ストライキを闘った。二十一年ぶりにストライキで闘った関東バス労組(鈴木俊文委員長、九百十二人)の陸川知威書記長に、ストライキの取り組みや今後の運動などについて聞いた。


 春闘要求は、私鉄の統一要求である賃上げ一万一千円と年間臨時給(一時金)五・三カ月プラス〇・二カ月を提出した。
 会社側は収支が悪く、賃上げゼロ、一時金を据え置いても約三億円の赤字になると主張し、三月二十四日のストライキ前日に経営側が示した数字は、賃上げゼロ、臨時給は四・二〇カ月であった。これは賃下げであり、とても認められないので、ストライキに入った。労働協約改定での時限ストは過去にあったが、全日ストライキは二十一年ぶりだった。
 そして第二波ストライキとして三月二十八日に全日ストを予定していた。だが、それでは不十分であり、二十九日にも全日ストを構え、四十八時間ストを準備し、闘争を強化した。
 経営側は二十八日午前零時過ぎに、賃上げ千五十円、年間臨時給は五・一四カ月と、解決協力金として一人一律二万五千円を示し、妥結した。だが関東バス労組は四六年結成以来、大手と同水準をかち取っており、今年初めて格差がついてしまった。

赤字をすべて労働者に転嫁

 今回の闘いの背景だが、会社のバス路線は新宿から杉並にかけてであり、九八年の都営地下鉄の開通によって打撃を受けてきた。九九年度は約三億円の赤字になるといわれている。
 さらに石原都知事は、七十歳以上の高齢者が無料でバスに乗れるシルバーパス打ち切りを出している。私の母親も月に一度の病院へ行くのもバスだし、買い物もバスで行く。敬老パスが有料化されたら、年に二万円近い金を払うだろうか。月に何度もバスに乗らない年金生活の高齢者は乗らなくなるだろう。そうなれば当社は、シルバーパスが収入の一割を占めているので、大打撃となる。また来年四月には乗合バスの需給調整規制が撤廃される。新規参入業者が出てくれば、過当競争になる。これらのことが背景にある。
 第一次回答だと、一人当たり年間約三十六万円の減額になる。この三十六万円を組合員数でかければ約三億円となる。つまり、会社は赤字予想の三億円をすべて、組合員に押しつけようとしていた。何の企業努力もしないで、労働者にだけ犠牲を押しつけるものだ。
 このことを訴えながら、「闘わなければ賃下げとなる」「生活を守るためにがんばってくれ」とオルグした。その点では、組合員も理解してくれ、よくがんばってくれた。
 結果として、昨年実績の臨時給までには至らなかったが、精いっぱい闘った成果だ。組合員も闘ったから、ここまでいけたと思っている。闘わなければ年間三十六万円の減になっており、これは大きな成果だと思っている。
 またこれまで春闘では、会社は合理化を抱き合わせて提案してきたが、今回は一切の合理化提案も出させなかった。
会社は年間臨時給はおかしい。あくまでも賞与だ。実績に基づくものだから、年間協定はおかしい、夏だけ協議したいと主張してきた。だが、われわれは臨時給はあくまで賃金の後払いだ。組合員の住宅ローンなど臨時給をあてにしている。業績による一時金については、撤回させた。

経営参加は見直しを
 今後の活動だが、年間賃金が若干だが下がったわけで、何としても回復したい。また、スト権投票が下がった。これは経営側の労務政策の結果だと思う。また世間にはスト迷惑論があり、それが組合員にまで浸透してきたのかと考えている。労働組合として、足元を見られない運動をきちんとしていきたい。
 労組として経営参加するということで、経営協議会に参加してきた。経営実態を把握することは大事だが、経営参加によって労組本来の役割を見失っていないだろうか。企業側の土俵に引きずり上げられて議論していれば、どうしても経営効率などについて議論することになり、合理化などに協力しなくてはならなくなる。
 今春闘で経営側のスタンスが犠牲は労働者に押しつけるのが見えたわけだから、今後経営参加については見直していきたい。
 私鉄総連の産業別労働運動が限界に来ているのではないか。大手の集団交渉がなくなり、バラバラに分断されている。そのために私鉄内での格差が広がった。バスでも集団交渉が存在した。そうした交渉はやはり力を発揮した。個別交渉はどうしても限界がある。やはり大手がストも打てない状況では、産別の力が発揮できていないのではないか。ストライキを背景にした集団交渉が力を発揮する。
 私鉄労働者は、二十四時間職場で危険な作業も多い。そうしたリスクがありながら、定期昇給さえない。今春闘の要求さえ、本当にささやかなものでしかない。
 今回のストライキでは、すべてのバス停千二百本に労組の電話番号も入れてアピールを張り出した。スト中に五百二十一本の問い合わせの電話があった。
 大部分がいつまで続くのかなどという問い合わせだった。そこでわれわれは「会社側は賃上げゼロだ。一時金も下げるといっている」と、ていねいに説明した。そうした中で「それは厳しいですね。がんばってください」という激励も多かった。こうした地道な運動が大事だと思う。やはり、世論を引きつける運動を重視したい。


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