20000305


国鉄闘争 学者・文化人などがシンポジウム

ILO勧告を日本の常識に


 「ILO条約を日本の常識に 千四十七人の復職を求める集会」が二月二十六日、東京で行われた。主催者は隅谷三喜男氏(東大名誉教授)、赤川次郎氏(作家)、鎌田彗氏(ルポライター)など十三氏が呼びかけた「政府・JRはILO勧告に従え千四十七人の復職を求めるアピール運動」。
 新藤宗幸氏(立教大教授)が主催者を代表して「私たちはILO(国際労働機関)勧告以前から、『日本は法治国家なのか』とアピールしてきた。ILOはわれわれの訴えを正しく理解してくれた。私たちは、国鉄問題は国家による不当労働行為であることを明確にさせていく」と語った。
 「世界は団結権侵害を許さなかった」と題してパネルディスカッションが行われた。パネラーには中山和久氏(早稲田大学名誉教授)、海渡雄一氏(弁護士)、奈木野照代氏(国労筑豊闘争団)の三氏で、コーディネーターは呼びかけ人の一人で弁護士の中野麻美氏が行った。
 同アピール運動では、今後世論喚起のためにさらに各地で運動を進めながら、ILO総会、サミットの時期に合わせて、大規模な集会などを取り組んでいくとしている。
 また、国際運輸労連のコックロフト書記長の呼びかけ(別掲)の紹介、池村良一・中央労働委員からの訴えなどが行われた。
 以下、中山和久氏の講演の要旨を紹介する。

中山和久 ILOは第一次大戦後、世界平和のために労働者の人権、社会正義を確立することが必要だとしてできた。
 社会正義とは労働者が尊重される権利であり、団結権は人権である。だからILOは団結権こそ重要な権利で、その権利を侵している国は世界平和に逆行する国であるとしている。それは、ファシズムが労組を侵略の手先にした歴史があるからだ。
 日本国憲法二一条、二八条は、正しく団結権をうたっている。しかし、日本政府は団結権の侵害を続けている。それが国労の採用差別事件で如実に表れている。
 今回のILO勧告は、裁判所に対して直接ものを言ったことが重大である。ILOはこれまで司法権を侵すような発言はしてこなかった。だが、今回は裁判所に対しても言わなくては、人権が守れないとしている。
 日本政府はILO条約を批准しているのだから、国際法としての勧告に従い、国家として人権=団結権を守らなくてはならない。


「国鉄組合員JR不採用問題」に関するILO勧告についてのITF(国際運輸労連)の呼びかけ(要旨)

 この勧告においてILOは、日本政府が解決のための「交渉を積極的に奨励する」ことを求めている。
 ILO、特に結社の自由委員会の機構と活動は、労働組合がこの分野でかちとってきた大きな成果である。ILO結社の自由委員会勧告は、日本政府を含むすべての民主的政府が尊重すべきものである。
 このILO勧告は、雇用の権利にかかわる問題を迅速に扱う上での日本の裁判制度の有効性にも疑問を投げかけている。
 当該労働者のみならず、家族が味わっている辛苦を人道的立場から扱い、交渉を通じて現在の状況の公平で現実的な解決を遅延なく実現させるためのものである。
 また、訴えている多数が北海道と九州に集中していることは、それら地域社会にとって看過できない問題である。
 私たちは、日本政府がILO勧告の重要性を認識し、受け入れ可能な解決に必要な財政措置を含めて、この争議の早期解決のためにあらゆる努力を払うべきと考える。

デビット・コックロフト・ITF書記長


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