20000101


敵の攻撃を迎え撃つ春闘に

勝利した豪州労組に学ぶ

全日本港湾労働組合・伊藤 彰信書記長


 私は、昨年十一月にオーストラリア海事労組(MUA)の大会に参加してきた。全港湾はオーストラリア港湾労働組合とは四十年のつきあいがある。九三年にオーストラリアの港湾労組と海員組合が合同してMUAができた。
 MUAは一昨年、大手港湾荷役会社パトリック社による二千人解雇攻撃を受けたが、闘いによって撤回させた。だが、大会は勝利に酔うのではなく、「政府の組合つぶし攻撃は続いている」との認識で、勝利を踏まえた上で闘いを強化すると決めたことが強く印象に残った。
 また、雇用問題や退職年金問題などが議論の中心にあり、これは日本と同じだった。
 MUAでは、正規雇用の労働者が約四割、非正規の常用労働者が二割、そして日雇い労働者が四割となっている。しかし、クローズドショップによって全員が組合員であり、組合員でなければ港湾では働けない。MUAの闘いがこのクローズドショップを守ったことは非常に重要な成果だ。
 登録していない労働者を使わせないのは、制度だけでなく労組の強さにある。労資交渉で、昇進昇格について組合が任命権をもっている。
 つまり、労資協議でクレーンのオペレーターなどの技能を有するものが何人必要かが決まると、誰を訓練させてオペレーターにするのかを組合が決める。すると非正規常用労働者から人を選び職業訓練をすると、正規雇用になる。そうなれば、時給は同じだが、ボーナスなどで労働条件が上がる。選ばれた人は、会社ではなく組合に感謝する。こうした制度が組織を強化している。
 こうした組織化の経験は大いに学ばなければと思った。
    ◇   ◇
 さて、二〇〇〇年春闘だが、長期の不況、リストラと規制緩和という二つの攻撃の中での闘いになる。今は、これまでの右肩上がりの経済状況ではない。春闘の根本的な見直しが求められていると思う。しかし、それはもの分かりのよい組合になることではない。雇用、労働条件を守るには闘い以外にはない。雇用を守れないでは、組合の存在理由がなくなってしまうだろう。二〇〇〇年春闘は、敵の攻撃を迎え撃つ闘いにしていく。
 規制緩和によって、企業の新規参入、料金が自由化された。そのため、過当競争、ダンピングが横行し、労働条件の悪化につながってくる。そこで、登録された労働者しか働けない仕組み、クローズドショップの実現をめざしたい。
 ダンピングから賃下げを防止するために、産別最低賃金制度が重要である。現在は労資協議で、産別としての制度がある。だが、それは不安定であり、産別最賃制度の法制化を求めていく。それらを実現するために、現場での闘いをいっそう強化することが大事であり、そうした闘いに力を入れていく。
 また、産別闘争が重要になるので、全国港湾の仲間だけでなく、未加盟労組、未組織の仲間も含めた団結が重要になる。未組織労働者への呼びかけも強め、組織拡大を進めていく。
さらに、新ガイドラインにともなう周辺事態法、そして有事法制問題がある。港湾を戦争に使わせない闘い、有事法制に反対する闘いが重要になる。陸海空の労働組合などとの連携も強めていく。


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