20000101


闘いを発展させ労働運動の前進を(1)

闘えば解雇撤回もできる

全国一般労働組合・田島恵一書記長


 昨年、日産はじめ大企業はリストラによって労働者、下請けに多大な犠牲を押しつけた。本年もこの攻撃は強まるだろう。小渕政権も、産業再生法などによってこれらのリストラを支援している。しかし、過去最悪レベルの失業率など犠牲を強いられている労働者は、中小を中心に反撃を開始しており、労働運動はマツダなど大企業労組でも明確な変化が起こっている。財界の攻撃に抗する闘いを激励し、その中で強固な日本労働運動の再構築をめざさなければならない。


 新年に当たり、抱負などを話したい。
 企業の生き残りや経営危機のために労働者や下請けに矛盾が集中している。全国一般における合理化、リストラをみると、本当に経営が成り立たず、倒産や閉鎖という問題が出ている。そこでは、労働者の権利は守られず、汗水たらして働いた賃金や退職金さえも、保証されないまま放り出されようとしている。そういう中では、割増し賃金や退職金を獲得するにも闘わなければかち取れない。
 全国一般でいうと、特に大手の下請け再編・整理によって閉鎖提案が多く出されている。その場合には経営者にきちんと言うだけではなく、親企業の下請け支配が問題の根幹なので、親企業に対して交渉を求め、閉鎖撤回を求める闘いが各地で行われている。
 例えば、北陸の石油販売会社では、日石、三菱などと交渉する中で、閉鎖提案を撤回させ、雇用も守らせた。長崎の生コン会社の菱光では、親企業の責任追及の闘いで、企業を再開させ雇用を守らせた例がある。
 このように、企業の都合で労働者がいいように使い捨てられる現状に黙っていてはいけない。その場合、職場の労働者がきちんと意思一致して団結を強めること。その闘いを企業に閉じ込めるのではなく、地域に広げ、同じように悩む労働者へ運動を広げること。全国の仲間との連携を強めることが重要だ。
一個別企業の闘いといっても、広く連携しなくては勝利できないだろう。闘わなくてはいけない時代になっているのが特徴だ。
 日産など大手の合理化に便乗して、この際、存在感のある労働組合をつぶしてしまおう、活動家を職場から追い出してしまおう、という動きがある。活動家を狙い撃ちした指名解雇が出ている。
 その端的な例が広島の大成生コンの指名解雇だ。これに対して、地位保全を地裁に提訴しながら闘っているが、地裁は指名解雇の四要件をクリアしていないのに「日産なども合理化するなど経営が苦しいので、指名解雇やむなし」と判断している。組合としては、これを不満として本訴訟で闘う決意を固めており、闘いの準備を始めている。地域の仲間の支援を得てデモなどの行動を繰り返しながら、不当な解雇は認められない、とアピールしている。


仲間を守るのが労働運動

 こんにち、失業者が町にあふれている。失業者の問題は、職場の働き方にも大きな影響を与えている。未組織労働者の労働相談では、労働法制を無視したもの、経営が苦しいので残業代が払われなくなった。有給休暇を取ったら即退職しろと言われたなどがある。
 これらの経営者の姿勢は、労働者の代わりはいくらでもいる、というものだ。正規従業員が百万人減っている中で、パートや派遣など不安定雇用が五十万、六十万人と増えている。
 労働法制は最低の規制であるが、その最低のセーフティーネットが壊れてきている。そうした中で、網を張るのは労働組合の役割だろう。その時に、自分の企業だけが生き残れば、と考えてはならない。
 最近、山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」のモデルになった小倉さんの講演があった。小倉さんは「バッファローはライオンなどに襲われたら、集団で防衛する。だが、ヌーという動物は一匹が食われれば、おれは食われなかった、と安心する。今の労働運動はヌーのようになっているのではないか」と指摘していた。
 誰かが切られたから、おれは安心だと思うなら、労働組合運動の原点から外れていく。やはりバッファローのように団結して仲間を守る運動こそが求められている。


大成生コン闘争とは

 大成生コン(広島県因島市)、大成向島生コン(同向島)の八津川社長は一昨年、「七人の希望退職、残る者に対しては三〇%の賃金切下げ」などを提案し、「組合との合意なしに一方的な強行はしない」と約束した。ところが交渉継続中の九九年六月に、突然組合員七人に対して指名解雇を強行した。
 大成生コン分会は、ストライキや抗議集会、宣伝活動を開始し、地裁尾道支部に地位保全の仮処分申請を行った。
 ところが地裁は、整理解雇四要件を満たしていないにもかかわらず「今の時代に人員整理はやむを得ない」と、「不当労働行為もなかった。解雇はやむなし」との不当決定を出した。
 指名解雇以後、会社は出荷量、売上高は伸び、アルバイトを入れただけでなく、時間外労働が増加するなど、解雇の理由はなく、組合つぶしの攻撃であることがはっきりした。
 全国一般は尾道・因島両地区労とともに支援共闘会議を結成し、分会とともに社長宅前座り込みや決起集会などを闘っている。
 「会社が苦しいと言えば何をしてもよいのか、こんなに簡単に解雇した会社に対して、強い怒りのほかに何もありません。団体交渉もせず、会社を私物化している社長や取締役に怒りが増すばかりです。私たちはいくら生活が苦しくとも、このような身勝手な社長や取締役を絶対に許せません」(重松繁則分会長)と、全面勝利解決のために全員が本訴で闘うことを決意している。
 また、「今年は改めて弁護団を組んで、本訴で争う。また、支援共闘をさらに強化し、全国一般生コン部会として、一月から社長宅前で座り込みを行う」(全国一般広島地本・梶川勝利副委員長)と支援体制を強化している。


Copyright(C) The Workers' Press 1996-2000