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労働新聞 2022年6月25日号 トピックス

世界のできごと

(6月10日〜6月19日)

アジア安保会議、続く米への異論
 アジア安全保障会議が6月10日、シンガポールで開催された。米国のオースティン国防長官は中国の魏国務委員兼国防相と会談も、台湾海峡の緊張の責任を中国に押し付ける姿勢に終始、台湾への軍事支援継続の意を示した。中国側は「主権と安全を深刻に損なうもの」と批判、「台湾独立」に反対しあくまで祖国統一をめざす立場を強調した。またシンガポールのウン国防相は東南アジア友好協力条約(TAC)を紛争防止の「核心的手段」にすることを呼びかけるとともに、米国が叫ぶ「民主主義対専制主義」の図式を否定、あくまで多国間主義を重視する姿勢を鮮明にした。インドネシアやベトナム、フィリピンも同様の表明を行った。東南アジア諸国連合(ASEAN)から米国への異論が続いている。

ウクライナ支援叫ぶが「疲れ」も
 北大西洋条約機構(NATO)は15日、ブリュッセルで国防相理事会を開いた。会合で米はウクライナに追加する形で地対艦ミサイルシステムなど10億ドル(約1300億円)相当の武器供与を表明、ストルテンベルグNATO事務総長も「コストが高くてもウクライナ支援を弱めるな」と叫び、戦争の長期化につながる対応を各国に求めた。また16日にはフランスのマクロン大統領とドイツのシュルツ首相、イタリアのドラギ首相はそろってウクライナのキエフを訪問、同国のゼレンスキー大統領は首脳らに最新のロケット弾や対ミサイル防衛システムの提供を要求した。だが欧米諸国では物価高騰に国民の不満は高まる一方で、米国やウクライナの執拗な要求への「疲れ」も見え始めている。

制裁突き、ロで経済フォーラム
 ロシアのサンクトペテルブルクで15日、国際経済フォーラムが開かれ、127カ国が参加した。欧米諸国は参加しなかったものの、在モスクワの欧米諸国経済団体は出席、中国、インド、エジプト、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、アフガニスタン、セネガルや中央アフリカなどからも政府や企業関係者が出席した。演説したプーチン大統領は欧米の制裁について「経済電撃戦は失敗」と切り捨てるとともに、世界的な物価や燃料価格の急騰について「制御不能な紙幣発行や、無保証の負債を蓄積した先進7カ国(G7)による無責任な政策が原因」と指摘した。米欧日による制裁が自国の首を絞める力を日に日に強めていることを印象付ける場となった。

仏下院選で左派躍進、物価高騰が背景
 フランスの国民議会(下院、定数577)の決戦投票が19日に行われ、「不服従のフランス」のメランション党首率いる左派連合が野党第一党に躍進、マクロン大統領の与党連合を過半数割れに追い込んだ。与党連合は245議席、左派連合が131議席。また極右・国民連合も89議席まで伸ばした。マクロン大統領は4月に再選されたばかりだが、物価高騰が国民生活に打撃となり政権批判が爆発した格好。左派連合は生活苦と将来不安を抱える若年層の支持を吸収した。米国でも11月の中間選挙に向けてバイデン政権支持が低下するなど、物価高騰への国民の怒りは各国政権を直撃している。

コロンビアで左派政権誕生、米に打撃
 コロンビアで19日、大統領選の決戦投票が行われ、左派のペトロ元ボコダ市長が実業家出身の候補を破り当選を果たした。同国では長年米国の干渉の下で親米右派政権が続いてきたが、外国資本による収奪で貧困は深刻化、国民の不満が高まっていた。6月に開催した米州首脳会議での中南米8カ国のボイコットに続き、米バイデン政権にとって大きな痛手となった。

人民のたたかい

(6月10日〜6月19日)

 米国ワシントンで6月11日、銃規制の強化を求めるデモが行われ、数千人が参加した。テキサス州やニューヨーク州などで銃乱射事件が発生、本格的な銃規制を求める声が広がっていた。参加者は「学校が戦場になってはいけない」と声を上げた。
 ウルグアイの首都モンテビデオで15日、数千人の教育労働者が大統領府や国会に向けてデモを行った。これは同日、ラカジェポー政権による教育予算の削減に抗議して行われた全国24時間ストライキの一環として行われた。
 チュニジアの首都チュニスで16日、数千人の労働者が政府に賃上げを求めるとともに補助金削減に抗議する集会を開いた。同国では100万人の組合員を擁するチュニジア労働総同盟(UGTT)がストを実施、国営企業を中心に闘いが広がっている。


日本のできごと

(6月10日〜6月19日)

通常国会が終始与党ペースで閉幕
 通常国会が6月15日に閉幕した。政府が新規に提出した全61本の法案が26年ぶりに全て成立した。参院選を前に岸田政権が入管法や感染症法、マイナンバー法などの「対決法案」を避けたことに加え、「批判政党」との印象を薄めたい野党の政権追及も及び腰で、終始与党ペースに。焦った立憲民主党は会期末に内閣不信任決議案を提出し存在感を示そうとしたが、これも空振りに終わった。そもそも経済安全保障推進法など国の進路を左右する基本政策で与野党に差がない状況では岸田政権との対決など期待できない。

日銀が緩和継続、国民の痛みは限界
 日銀は16〜17日に開いた金融政策決定会合で大規模緩和を継続する方針を決めた。長期金利を0%程度、短期金利をマイナス0・1%に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)をこれまで通り継続、年12兆円を上限に必要に応じて上場投資信託(ETF)を買い入れる措置も維持する。決定を受けて円安圧力が強まり、黒田総裁は「急激な円安は経済にマイナス」と市場をけん制したが、効果はなかった。異次元金融緩和の継続と円安の放置は国民大多数の生活や中小企業の経営に耐え難い負担を押し付け続けるもので、国民の痛みは限界だ。

貿易赤字10カ月連続、震災級の大きさ
 財務省は16日、5月の貿易統計速報を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆3846億円の赤字で、比較可能な1979年以降で2番目に大きく、赤字は 10カ月連続に。赤字が過去最大だったのは2014年1月の2兆7951億円で、東日本大震災後の原発停止による液化天然ガス(LNG)などの輸入が膨らんだ影響。まさに震災時並みの非常事態だが、岸田政権は事実上のアベノミクス継続でこれを是認している。

海自が過去最大級の長期部隊派遣
 海上自衛隊は13日、インド太平洋地域を巡る長期の部隊派遣を始めた。同日から10月28日の138日間かけ12カ国・地域を訪問、米欧やインド、東南アジア諸国と複数の多国間演習に参加の予定。派遣人数は1000人ほどで、「空母」に改修する護衛艦「いずも」や潜水艦、哨戒機や救難機など航空部隊も投入する。期間や訪問国、参加人数ともに過去最大規模となる。長期部隊派遣の背景には、太平洋・島しょ国との関係を強める中国の影響力の高まりと米国の影響力低下がある。

令和臨調発足、政治立ち遅れに危機感
 令和国民会議(令和臨調)は19日、発足大会を開いた。共同代表に茂木キッコーマン名誉会長らが就任、統治構造と財政・社会保障、国土構想の3つの部会を設け、統治構造について年内に改革提言をまとめるとした。また与野党代表者が臨調側との政策対話を行った。令和臨調は日本生産性本部が2月末に立ち上げを公表、1990年代に産学有識者が政治改革などを提言し促した民間政治臨調や 世紀臨調の流れをくむ。茂木氏は積年の構造改革課題に取り組むと強調、激動する内外情勢への対応に立ち遅れる政府与党に対する財界の危機感をにじませた。

侮辱罪厳罰化、政権批判弾圧の恐れも
 インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策として侮辱罪を厳罰化する改定刑法が13日、参院本会議で可決・成立した。侮辱罪は公然と人をおとしめる行為が対象で、現行の法定刑は拘留(30日未満)か科料(1万円未満)だが、これに「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」が加わり、公訴時効は1年から3年に延長される。しかし「侮辱」の定義があいまいで、国家権力による恣意(しい)的適用も可能。国民の政権与党への批判を萎縮させる悪影響も予想される。新たな弾圧の道具とされぬよう警戒が必要だ。

こども家庭庁設置へ、実効性に疑問も
 こども家庭庁設置法が15日、参院本会議で可決・成立した。少子化や貧困対策など子ども関連施策を一元化して担う組織が来年4月に発足する。「こどもまんなか社会の実現」を掲げる岸田政権の目玉政策の一つだが、政府から独立した子どもの権利擁護機関「子どもコミッショナー」は制度化されなかった。一方で自公与党は新組織の名称に「家庭」を入れることに固執、子育てを家庭の「自己責任」として政治責任を放棄する姿勢も既に見え始めており、国民には厳しい目で今後を注視することが求められる。

最高裁で原発事故の国責任認めぬ判決
 東京電力福島第1原発の事故で避難した住民らが国に損害賠償を求めた4訴訟で、最高裁は17日、原発事故を巡る国の賠償責任を認めない判決を言い渡した。原発事故による避難者が各地で起こした約30件の集団訴訟で、最高裁が国の賠償責任について判断したのは初めて。判決は地震予測の長期評価に基づく津波対策を国が東電に命じても原発事故を防げなかった可能性が高いとしたが、審理にあたった裁判官4人のうち1人は反対意見を付けるなど判断が割れた。判決は原発再稼働推進に向けた布石でもあり、許しがたい。


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