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労働新聞 2022年6月5日号 トピックス

世界のできごと

(5月20日〜5月29日)

中国への恐怖心あおる米政策
 ブリンケン米国務長官は5月26日、中国に対する包括的政策を発表した。中国を「国際秩序をつくり替える意図と力をもつ唯一の国」と危機感をあらわにし、「世界の指導的な国家になる野望を公言している」と決め付けた。そして「投資、協調、競争」をキーワードに挙げ、米英豪による「AUKUS」など同盟国と協調しながら、経済分野に至るまで対中包囲網を広げる姿勢を鮮明にした。衰退する米国は台頭する中国への恐怖心をあおりながら求心力を高めたい思惑。だが世界に分断を持ち込む米国の姿勢に対する各国の警戒感は根強い。

米の朝鮮制裁策動が初否決で空振りに
 国連安全保障理事会は26日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)による相次ぐミサイル発射実験を受けて、米国が主導した新たな制裁強化の決議を否決した。朝鮮への原油輸出量の上限削減などの内容で、理事国15カ国のうち米欧など13カ国は賛成したが、常任理事国の中国とロシアは拒否権を行使、決議案を葬った。朝鮮のミサイル発射をめぐる決議案が否決されたのは初。米国は「失望の日」と泣き言混じりで中ロを非難した。だが中国は「追加制裁は問題解決に役立たず、さらなる悪影響と対立の激化につながる」と冷静に対応した。米国が対中包囲網の形成に血道を上げ、またロシア対抗を強めるなかでの決議案否決で、国連を利用した米国の策動は難路に差し掛かった。

ダボス会議、リセッションへ危機感
 世界経済フォーラム(WEF)の年次総会が22日、スイス東部ダボスで開催された。コロナ禍で2年ぶりの開催。テーマは「歴史的転換点における政策とビジネス戦略の行方」で、ウクライナ情勢に議論が集中した。米国のキッシンジャー元国務長官は「台湾を米中対立の中心にすべきでない」と述べ、またウクライナにロシアへの領土割譲を提言する旨の発言を行い、話題となった。また「4つの危機(物価高、エネルギー危機、食の貧困化、気候危機)を抱え、どの問題も片付かない場合、世界的な景気後退(リセッション)に陥り、国際社会の安定に甚大な悪影響を及ぼす」(ハベック独経済相)など国際情勢への強い危機感を示す発言が相次いだが、具体的な解決に向けた道筋は打ち出せなかった。

豪総選挙、保守政権沈む
 オーストラリアの総選挙が21日投開票され、下院(151議席)で野党・労働党がモリソン首相率いる保守連合を下した。アルバニージ労働党党首が23日、新首相に就任した。獲得議席数は労働党72、保守連合55。コロナ禍に加え、大規模な森林火災が多発、3割の無党派層が気候変動への対策強化を訴える無所属候補に流れた。また物価上昇も相まってモリソン政権への批判が高まっていた。同政権は米国の対中包囲網の形成に積極的に呼応、アルバニージ次期政権もこの政策を踏襲する方針だが、物価上昇で経済が痛む中、今後は鉱物資源の主要な輸出先であった中国との関係改善に乗り出さざるを得ない場面も予想される。

世界の格差、絶望的に拡大
 国際NGOオックスフォムは23日、コロナ以前に既にあった極端な不平等が新たなレベルに達したとする報告書を明らかにした。ダボス会議に合わせて発表されたもので、保有資産 億ドル(約1280億円)超の「億万長者」は2年前に比べ573人増の2668人。保有資産の合計は約 兆7000億ドル(約1625兆6000億円)。上位10人の大富豪だけで世界下位40%にあたる31億人より多くの資産を保有している。一方、2022年だけで新たに2億6300万人が極度の貧困に陥ると警鐘を鳴らした。また国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は同日、避難民の総数が全世界で初めて1億人を突破したと発表した。

人民のたたかい

(5月20日〜5月29日)

 英国で24日、鉄道海運運輸労組(RMT)がストライキ実施の承認を求める組合員投票を行い、圧倒的な支持で承認を得た。約4万人の組合員のうち71%が投票に参加、スト賛成は89%にまで達した。英国ではインフレ率が7%を超え、大幅な賃上げを求めるストがさまざまな産業で予定されている。  米国テキサス州で27日、同地で開かれる全米ライフル協会の総会に数千人が詰め掛け、抗議の声を上げた。同地では21日、小学校で児童ら21人が射殺された銃乱射事件が起こるなど銃撃事件が相次いでいる。


日本のできごと

(5月20日〜5月29日)

日米首脳会談、全面的日米同盟強化へ
 岸田首相と米国のバイデン大統領は5月23日、東京で会談した。同大統領の来日は2021年1月の大統領就任後初で、両首脳による初の本格的な会談となった。両首脳は共同声明「自由で開かれた国際秩序の強化」を発表、米国の「主敵」である中国への敵意を随所に押し出し、沖縄県名護市辺野古の新基地建設や鹿児島県の馬毛島における空母艦載機着陸訓練基地整備、閣僚級の日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)の今年7月の開催、エネルギー安保関連の共同の取り組みなど、軍事・経済の一体化を含む全面的な日米同盟強化を掲げた。翌24日には日米豪印によるクアッド首脳会議を東京で開催、米国の中国対抗外交をしゃかりきに支えた。 

IPEF発足に尽力も各国は様子見
 インド太平洋経済枠組み(IPEF)の立ち上げとなる首脳級会合が23日に行われた。日米印の首脳は東京から参加、他の参加表明10カ国の首脳らはオンラインで参加するハイブリッド形式の会合となった。主催は米国だが、日本は発足会合をお膳立てし、事実上の共催国となった。日本は21日からタイ・バンコクで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合でも、萩生田経産相がシンガポール、インドネシア、タイなどの閣僚と個別に会談、IPEFへの対応を協議する奮闘ぶり。しかし各国は参加を表明したものの、経済安保の側面が強く関税引き下げを伴わないIPEFの実利を疑問視し、また「米国か中国か」の二者択一を迫る米国の姿勢に冷淡で、様子見の状態だ。日本は米国が主導した環太平洋経済連携協定(TPP)発足でも結局は米国に裏切られており、今回も「米国のポチ」ぶりをさらすだけの結果になりかねない。

消費者物価2%超、「値上げの夏」も
 総務省は20日、4月の消費者物価指
z数を発表した。変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101・4となり、前年同月比2・1%上昇、消費増税の影響があった15年3月(2・2%)以来、7年1カ月ぶりに2%を超えた。品目別ではエネルギー関連が19・1%、電気代は21・0%、ガソリンは15・7%上昇した。生鮮食品以外の食料は2・6%で、食用油は36・5%、小麦粉は15・2%上がった。4月は輸入物価指数が44・6%、国内企業物価指数は10・0%上昇しており、今後は産業の川上から川下へ値上げが波及、消費者物価のさらなる高騰で「今年の夏は『値上げの夏』」(帝国データバンク)となるのは避けがたい。資源高と円安が要因で、異次元金融緩和継続などの失政を改めない岸田政権の下では国民は生きていけない。

金融所得課税引き上げ、事実上撤回
 岸田首相は27日、国会で金融所得課税の見直しについて「終わったわけではない」と答弁した。岸田氏は昨年の自民党総裁選の際に格差是正策として金融所得課税の引き上げを打ち出していたが、首相就任後はトーンダウン、先月英国金融街シティで講演した際には「資産所得倍増計画」を掲げ、政権発足時の「令和版所得倍増計画」を衣替えしていた。金融所得課税をめぐっては、木原官房副長官が22日にテレビ討論で「金融所得課税の引き上げは政策課題として優先しない。今やるべきことは『貯蓄から投資』」という旨の発言をしている。政権として同税引き上げを撤回したも同然で、貯蓄・投資の余裕のない労働者は蚊帳の外だ。岸田政権が「新しい資本主義」として掲げた格差是正策はもはや跡形もない。

国民が重点政策、与党補完さらに
 国民民主党は20日、参議院選挙に向けた重点政策を発表した。「給料を上げる。国を守る。」を大看板に5本柱を掲げるが、各論「給料が上がる経済」では積極財政や民間投資加速など大企業側の代理人である与党とさして変わらぬ内容が主で、賃上げは最後に一言添えるだけの扱い。また安全保障では「自衛のための攻撃力(反撃力)」などと、自民党が「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と称し始めたことに歩調を合わせる表現で防衛費増額を唱え、エネルギー安保としては原発再稼働や次世代炉への置き換えを掲げた。予算案賛成や憲法審査会審議など国会で与党へのすり寄りを強めているが、行動だけでなく公約としても政権補完勢力としての役割を鮮明にした。

規制改革推進会議が答申、岸田政権初
 首相の諮問機関である規制改革推進会議は27日、最終答申を提出した。規制改革の答申は岸田政権発足後では初。コロナ禍で浮き彫りになったぜい弱な医療・介護分野など5つを重点に据え、医療ではコロナ禍で解禁されたオンラインでの初診の解禁検討を提言した。介護では、介護付き有料老人ホームではセンサーなどの活用を条件にした人員配置基準緩和、サービス付き高齢者向け住宅でも医療・介護の有資格者の常駐要件見直しを求めた。裁量労働制の対象業務見直しや普通免許状を保持しない外部人材の教員としての活用拡大なども提言した。労働条件悪化や医療・介護・教育の水準低下につながる規制緩和には警戒が必要だ。


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