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労働新聞 2022年4月5日号 トピックス

世界のできごと

(3月20日〜3月29日)

ウクライナ侵攻、米欧介入で泥沼
 北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)は3月24、25日に相次いで首脳会議を開いた。NATO首脳会議では、ウクライナへの武器支援強化、東欧諸国の防衛強化のためルーマニアなど東欧4カ国に新たに1000人規模の常設部隊を配置することなどを決めた。EU首脳会議ではロシアへのエネルギー依存脱却が打ち出された。侵攻から1カ月が経過したが、戦況は膠着(こうちゃく)、約400万人が国外避難民となるなど、NATOや米欧日による武器・資金援助は事態を泥沼化させている。

米が国家防衛戦略発表、中国最優先
 米国防総省は28日、バイデン政権で初の国家防衛戦略(NDS)を議会に提出した。発表された概要では中国への対処を最優先事項に位置付けた。また新たな核政策の指針である「核体制の見直し(NPR)」と「ミサイル防衛見直し(MDR)」も反映させた。同盟国や有志国の力を借りる「統合抑止力」も重視するとした。同日発表された2023会計年度(22年10月〜23年9月)の予算教書では中国やロシアへの抑止強化のため国防費を 年度比4%増の8133億ドル(約100兆円)にするよう議会に求めたが、共和党との深刻な対立だけでなく民主党内の亀裂もあり、バイデン政権の政権運営はきわめて不安定だ。

中国外相が訪印、米にらみ関係改善
 中国の王毅外相は25日、訪印しジャイシャンカル外相と会談した。中印両国が20年に係争地の紛争で死傷者を出して以降では初の政府高官の訪印。会談で両外相は中印国境をめぐる緊張緩和と対話の継続を確認した。インドは中国と共に先の国連のロシア非難決議を棄権、ロシアへの制裁にも加わっていない。日米豪印(クアッド)の一員だが岸田首相の訪印時の共同声明でも「ロシア」の文言は入らなかった。また中国はウクライナ危機を口実にした日米欧による対中包囲網に対抗して習近平主席や王毅外相などが新興国・途上国との多国間会合や二国間会談など積極外交を展開している。

サウジ、米欧の石油増産要求を拒否
 米欧からの増産要求が高まる中、サウジアラビアは21日、世界市場に供給不足が生じても「サウジはいかなる責任も負わない」と発表した。ウクライナに侵攻したロシアへの制裁発動の中、石油輸出国機構(OPEC)プラスは追加的な増産はしないとしている。米欧日などによるロシア制裁はエネルギー価格の高騰となって先進国や新興国経済に重くのしかかっている。欧州諸国はロシアに対する追加制裁を検討しており、ロシア原油の輸入禁止となれば、世界の石油市場、特に欧州経済が大打撃を受ける。

国連で米欧主導の決議に反発も
 ウクライナ情勢に関する国連緊急特別総会は24日、ロシアによる侵攻で悪化した人道状況の改善を求める欧米主導の決議を140カ国の賛成多数で採択した。反対は5カ国。棄権は中国やインド、南アフリカなどアジア、アフリカ諸国を中心に38カ国だった。2日のロシア非難決議から賛成が1カ国減り、棄権が3カ国増えた。今回の総会には欧米日やウクライナなど90カ国が共同提案国となった決議案と、ロシアを非難せずに人道状況の改善を求める南アフリカ作成の決議案の2本が提出された。ロシアの孤立化を図る欧米に対して南アの決議案は包囲網を切り崩すものだった。米欧は南アに決議案取り下げを含めて一本化をめざしたが、南アは折れなかった。国連では米欧への反発も目立ってきている。。

人民のたたかい

(3月20日〜3月29日)

 カナダ第2の鉄道・カナダ太平洋鉄道の労働組合は20日、賃金や年金について労使交渉で合意を得られず、ストライキを実施した。車掌とエンジニア3000人以上が業務を放棄したため、全土の運行に大きな影響が出た。
 ドイツ統一サービス産業労働組合(ベルディ)は22日、全土の空港で大規模な警告ストライキの実施した。ベルディは少なくとも時給1ユーロの賃上げと、職種や地域ごとに異なる給与を同一労働同一賃金の原則に基づき支払うことを要求している。
 カリブ海のジャマイカ首都キングストンで22日、英国のウィリアム王子とキャサリン妃の公式訪問に抗議し過去の奴隷貿易への賠償や謝罪を求めるデモが行われ、英王室が関与した奴隷貿易への賠償と謝罪を要求した。ジャマイカには何十万人ものアフリカ人が奴隷として連れて来られ、非人道的な環境で酷使された。デモ参加者は「王族が何の配慮もなくここに来るのは祖先への侮辱」と非難した。ジャマイカでは、バルバドスに続き、エリザベス女王を元首とする立憲君主制を共和制に移行することを求める声も高まっている。


日本のできごと

(3月20日〜3月29日)

22年度予算成立、10年連続過去最大
 2022年度予算が3月22日、参院本会議で与党や国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。一般会計総額は107兆5964億円で10年連続で過去最大を更新、防衛費も5兆3687億円と過去最高に。一方、社会保障費も過去最大の36兆2735億円だが、概算要求時から2200億円圧縮、診療報酬改定で薬価を引き下げたほか、後期高齢者医療の窓口負担を年収200万円以上の人を対象に現行の1割から2割に増やす改悪などで削減した。過去最大の予算だが国民生活を守る内容とは程遠い。

まん防全面解除、感染再拡大も
 新型コロナウイルス感染対策のまん延防止等重点措置が22日、東京や大阪など18都道府県で解除された。約2カ月半ぶりに対象地域がなくなった。岸田首相は「出口ははっきり見えてきた」などと見通したが、その後オミクロン株派生型で感染力がさらに強いとされる系統への置き換わりが進み、減少していた感染者数が増加し始めた。「第6波」が終らぬまま「第7波」へと突入する危険性も高く。依然として医療機関は深刻な医療崩壊と隣り合わせの状況に置かれている。

米欧にならいゼレンスキー国会演説
 ウクライナのゼレンスキー大統領による国会演説が23日に行われた。外国首脳がオンラインで国会演説を行うのは憲政史上初。同大統領は「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのは日本だ」などと謝意を述べて制裁継続を要請、また国連安保理が常任理事国であるロシアの拒否権により機能不全に陥っていることを念頭に「改革が必要だ。日本のリーダーシップが大きな役割を果たせる」などと国連改革と安保理が常任理事国入りを熱望する日本政府におもねった。北大西洋条約機構(NATO)加盟国以外で同大統領演説の場を設けたのはイスラエルに次いで2国目。米欧追従とロシア圧殺は国益を損ねるだけだ。

日ロ領土交渉が制裁で中断の愚政
 ロシア外務省は21日、北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を中断すると発表した。北方領土4島をめぐるビザなし交流や元島民らの自由訪問が廃止される。また25日にはロシア軍は北方4島と千島列島周辺で軍事演習を開始した。いずれもウクライナ侵攻を口実とした対ロ制裁の対抗措置であることは明白で、またも米欧主導の制裁に参加したツケを払った形だ。日本政府は、第2次安倍政権時代には日ロの経済協力を進めて領土問題を解決するという方針を取ったが、ロシア側に北方領土に米軍を展開させないことを約束できず、国民の血税を注ぎ込んだ経済協力は水泡に帰した。独立・自主のない外交では国益は守れない。

高校教科書検定、歴史わい曲続く
 文部科学省は29日、2023年4月から主に高校2年生が使う教科書の検定結果を公表した。新しい学習指導要領で導入された「日本史探究」「論理国語」などの選択科目が初めて検定を受け、「(朝鮮からの)強制連行」という用語を修正させる検定意見が付けられた。昨年4月に閣議決定した「強制連行」「強制労働」の表現は不適切との政府答弁書に基づく対応で、多くの出版社は「動員」「徴用」などの言葉に修正を迫られた。また「日本軍慰安婦」という用語を使った教科書にも昨年の閣議決定が反映されて「日本軍と慰安婦の関係について誤解するおそれがある」との検定意見が付けられた。菅前政権時代の閣議決定が歴史わい曲に存分に悪用されている。

諫早干拓、不当な開門禁止の見解統一
 国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐって、潮受け堤防排水門の開門を命じた確定判決の無効化を国が求めた訴訟の差し戻し審判決が25日、福岡高裁で出され、開門を命じた確定判決を事実上無効とする新たな判決を言い渡した。今回国側の主張を裁判所が認めたことで、開門命令と開門禁止という相反する確定判決が排水門を開けないことで司法判断が統一された。判決では漁獲量が増加傾向だとしたが、訴訟弁護団は「事実誤認」「やってない調査は開門調査しかない。しないのはおかしい」などと批判した。国の主張を丸のみする不当判決だ。

維新党大会、党勢拡大の限界にじむ
 日本維新の会は27日、大阪市で党大会を開催した。新活動方針では「政権交代をめざす」と明記、夏の参議院選挙では改選議席の倍にあたる12議席以上の獲得に加え、比例代表で立憲民主党を上回る野党最多得票を目標とした。また次期総選挙での野党第一党獲得も掲げた。昨年の総選挙では唯一「改革」を掲げて自公政治からの「変化」を求める有権者の票をかすめ取り公明党を抜いて第三党となった維新だが、大会同日に投開票された兵庫県西宮市長選挙では大阪府外で初の公認首長をめざすも完敗した。大阪以外の地域組織の弱さを露呈させたうえ、改憲や核共有を掲げる「右派ポピュリズム」的手法では自民党右派や国民民主党などとも競合、党勢拡大の限界が見え始めている。


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