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労働新聞 2022年3月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月1日〜3月9日)

ロシアのウクライナ侵攻拡大
 ウクライナへのロシアの軍事侵攻が拡大する中、三月二日、国連緊急特別総会でロシア非難決議が賛成多数で採択された。だが決議は賛成を増やすため「遺憾」とトーンダウン。中国やインド、ベトナムなど三十五カ国が棄権、十二カ国が不投票、五カ国が反対した。米欧各国は和平に逆行するウクライナへの武器供与や軍事支援を拡大し、事態を悪化させている。国外への避難民もすでに二百万人を超えている。世界は和平の実現にむけて全力をあげるべきだ。

米、一般教書演説でロシア非難前面に
 バイデン大統領は一日、今年の施政方針を報告する一般教書演説を行い、ロシアに対する批判を前面に出した。内政では米経済の強化、地球温暖化対策、コロナ対策などを強調したが、過去一年の成果は少なく、目玉政策の子育て支援などの予算は宙に浮いたままで成立のメドも立たっていない。外交政策では中国への言及が減り、アフガン問題には触れなかった。ロシア批判で世論をまとめる狙いもあったが、米国内では「ウクライナに関わるな」という世論が多く、難しいかじ取りを余儀なくされている。

対ロ追加制裁が世界経済リスクを拡大
 米欧はロシア中銀とのドル取引禁止や資産凍結などロシア制裁を打ち出した。EUは二日、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの七銀行の締め出しを決めるなど、追加制裁も相次いで表明されている。また米欧日などの進出企業もロシア事業からの撤退、停止などが続いている。海運や航空などの輸送も相次いで停止し、国際経済の分断が進んでいる。一連の制裁措置で、国際商品市場では、ガス、原油、小麦などが急騰している。ロシアからの資金流出、通貨ルーブルの下落も止まらず、国債の債務不履行(デフォルト)の危機も増大している。制裁の拡大はロシアだけでなく米欧日、新興諸国にも「返り血」となって大きな打撃となる。

中国全人代、5・5%成長を目標に  中国の全国人民代表大会(全人代)が五日開幕。李首相は演説で、今年の経済成長目標を、昨年の「六%以上」を下回る五・五%前後とした。経済では安定成長を最優先し、格差の縮小をめざす「共同富裕」を重視する。また米中対立やウクライナ情勢などを念頭に、内外リスクが増えていると述べ、米国の圧力が強まる中、国防費は昨年を上回る七・一%増とした。緊張が続く台湾問題では「台湾独立の分裂行為や外部勢力の干渉に断固として反対する」と強調した。

韓国新大統領に尹錫悦氏当選
 韓国大統領選挙が九日投開票され、保守系の最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソギョル)前検事総長が僅差で当選した。住宅価格の高騰や就職難など文在寅政権に対する不満や批判が現れた。五年ぶりの保守系への政権交代で、南北朝鮮関係や日韓関係、中韓関係には変化が予想される。

人民のたたかい

(3月1日〜3月9日)

 世界女性デーの三月八日、世界各地で集会やデモが行なわれた。インドネシア・ジャカルタでは、性的暴力から女性を守る「性暴力根絶」法案の即時可決を求めて、女性団体が共同で集会を開いた。
 フランスドイツなど世界各国で六日、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する反戦デモが行なわれ、多数の市民が参加した。ロシア国内でも行なわれた。
 ドイツの統一サービス産業労組ヴェルディは七日、米通販大手アマゾンのドイツの六拠点で従業員による二日間のストライキを実施した。両者の間ではここ数年、労働条件の改善を巡る交渉が続いており、これまでにも同様のストライキが行われてきた。
 フィンランドの紙パルプ労組と電気事業者労組が欧州紙パルプ最大手のUPMキュンメネ社に対し賃上げを要求して今年一月一日から続いているストライキが長期化し、一日で二カ月を超えた。UPMのパルプ、バイオ燃料などの事業が影響を受け、世界的なパルプ高の一因となっている。


日本のできごと

(3月1日〜3月9日)

軍事物資供与で武器輸出拡大に道
 岸田政権は三月八日、ウクライナに防衛装備品である防弾チョッキを提供するため、輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定、輸出可能な案件に「国際法違反の侵略を受けているウクライナ」を加えた。同原則の運用には閣議決定や国会承認は必要なく、一部の閣僚だけによる国家安全保障会議でルールを変えた。ウクライナ危機を悪用して運用範囲を拡大、今後のなし崩し的な武器輸出の拡大へと道を開いた。また軍事物資である防弾チョッキを供与することは日本が紛争当事者の一角に加わることでもあり、危険な動きで許しがたい。

維新・国民も核共有の検討を主張
 日本維新の会は三日、米国の核兵器を日本に配備して共同運用する核共有の議論を開始することなどを求める緊急提言を国に提出した。提言では、ウクライナ情勢が東アジアの秩序にも影響しかねないとして、「核についてもタブーなく検討する」ことを主張、防衛費の増額や日米英豪印などの枠組みを基礎にした経済安全保障の強化なども訴えた。核共有と非核三原則見直しについては自民党内や国民民主党の玉木代表などからも検討を求める声が相次いでおり、ウクライナ情勢に便乗し与党やその補完勢力が軍拡促進姿勢を競い合う危険な状況となっている。

相次ぐ対ロ制裁への報復、打撃大
 ロシア政府は七日、対ロ制裁に踏み切った国・地域を対象にした「非友好国リスト」に米欧各国などとともに日本も指定した。これによりロシア政府や企業は債務を一定程度までロシア通貨ルーブルでの返済が可能となる。制裁でルーブルは暴落しており、債権者の日本企業などにとっては実質的な踏み倒しなど大損失となり得る。また九日には北方領土を含むクリル諸島に進出する企業を対象に各種税を原則二十年間免除する法案が成立・発効した。北方領土の実効支配強化であり、これまで日本政府は同法案は北方領土での共同経済活動をめざすとした日ロ合意に反するとして抗議してきたが、制裁に踏み込んだ日本に報復で応えた格好だ。独立・自主・平和のない岸田政権の外交により国益が損なわれている。

輸入小麦3期連続値上げ、食料高騰に
 農水省は九日、国が輸入した小麦を二〇二二年四〜九月に製粉会社に売り渡す価格について、主要五銘柄の平均で一トン当たり七万二千五百三十円にすると発表した。前期比一七・三%の引き上げで、現行の算定方法では〇八年十月期に次ぐ過去二番目の高値。三期連続の引き上げにより平均価格は二〇年十月期(十月〜二一年三月)の約一・五倍に。北米の不作とウクライナ情勢が国際相場を押し上げる一方、円安基調で推移している為替も影響した格好。燃料価格高騰と相まって今後の幅広い食料価格の値上げは避けがたく、特に低所得者や中小零細企業には大打撃となる。政府には今から緊急対策を講じるとともに、食料安全保障の抜本的な見直しが求められている。

コロナ影響大学中退、前年比1・4倍
 文科省は一日、新型コロナウイルスの影響による全国の大学などの中退・休学者数を発表した。二〇二一年十二月末時点で、中退者は前年同期約一・四倍の千九百三十七人に。コロナの影響による中退理由の内訳は、キャンパスに行きづらいなどの「学生生活不適応・修学意欲低下」が三〇・三%で最多、「経済的困窮」は一九・九%。コロナ禍の長期化でキャンパスに通う機会が減り人との交流が少なくなっていることの影響で、経済的困窮対策と併せて国には対策が求められている。

原発避難、東電の賠償責任が初確定
 東京電力福島第一原発事故で避難した住民らが国と東電に賠償を求めた福島、群馬、千葉の三訴訟で、最高裁は二日、東電の上告を退け、二審判決のうち約三千六百人に総額約十四億円の支払いを命じた部分を確定した。同様の集団訴訟は全国で約三十件あるが、東電の賠償責任が確定するのは初。東電は国が定めた「中間指針」に基づく賠償額で十分と主張していたが、最高裁は避難継続による精神的損害や生活基盤の喪失・変容に伴う慰謝料を認め、指針を上回る額の賠償を命じた。中間指針が被害の重大性に見合っていないことが判決で確認された以上、東電には賠償責任を誠実に果たすことが、国には中間指針を見直し被害者への救済を手厚くすることが責務だ。


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