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労働新聞 2022年3月5日号 トピックス

世界のできごと

(2月20日〜2月28日)

ロシアのウクライナ侵攻で戦乱
 ロシアは二月二十四日、ウクライナへの軍事侵攻を開始した。二十二日にはプーチン大統領がウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の独立を承認、同地域への派兵を命じていた。プーチン大統領は北大西洋条約機構(NATO)が東方拡大とウクライナへの軍事支援を執拗に追求してきたことを厳しく批判するとともに、ウクライナ政府が東部二州の住民に攻撃を行ったことを指摘した。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は「非武装・中立化」を拒否、戦闘が続いている。二十八日には両国の代表団が初の停戦協議を開いたものの、実質的な合意に達しなかった。たとえロシアの主張に正当性があるにしろ、攻撃を直ちにやめ、軍隊を撤退すべきである。一方、この間、米国などはロシアの主張を一顧だにせず、NATOの東方拡大やウクライナへの武器供与などを続けており、その責任は重大である。

ロシア非難の国連決議、安保理否決
 国連安全保障理事会は二十五日、ウクライナ情勢を受けた会合を開催、米国などがロシア非難の決議案を提出した。だが、賛成は十一カ国にとどまり、ロシアが拒否権を行使、否決された。また、中国やインド、アラブ首長国連合(UAE)の三カ国は棄権した。米国はロシアを「国連憲章をじゅうりんした」と非難した。だが、かつてその米国がイラクやアフガニスタンなどで一方的な侵略を行ってきたことを棚に上げた姿勢は各国から見透かされ、支持は広がらなかった。一方、バイデン米大統領は二十四日、ドイツに米軍を増派する方針を示した。またブリンケン米国務長官もウクライナに隣接するポーランドなどに軍隊と装備品のさらなる配置を明言した。米国などの介入はさらなる事態の悪化を招くものにほかならない。こうしたなか、中国は「NATOがロシアと対話を再開し、平和・安定を実現することを支持する」(王外相)との姿勢を示し、危機をあおる米国をいさめた。

「諸刃の刃」の欧米による対ロ制裁
 米国やカナダ、欧州連合(EU)は二十六日、ロシアに対する新たな制裁を表明した。この間、プーチン大統領など政権幹部の資産凍結などを行ってきたが、今回ロシアの中央銀行に制裁、外貨準備を無力化して通貨ルーブルの防衛策を困難にさせる措置。また国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの大手銀行を排除、国際送金を事実上できなくした。だが、エネルギーの調達を頼る欧州はSWIFTからロシアの全銀行が排除されれば、打撃を受けるため、対象は大手銀行に絞られた。ロシアへの与信残高(千億ドル)の七割は欧州であり、ロシア向け融資が不良債権となれば、欧州はその「返り血」を浴びかねない。すでに原油を中心にエネルギーが高騰するなど、今回の制裁は「諸刃の刃」だ。

独が国防費大幅増へ、歴史的転換
 ドイツのショルツ首相は二十七日、国防費を国内総生産(GDP)比で二%以上大幅に引き上げる方針を示したドイツの国防費はGDP比一・五%程度であったが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて転換する。NATOは国防費支出を二〇二四年までにGDPの二%以上に引き上げる方針を示していたが、ドイツなど未達成の加盟国も多かった。「欧州における歴史の大きな転換点」(メルケル前独首相)との声が上がっている。

人民のたたかい

(2月20日〜2月28日)

 全世界でロシアのウクライナ侵攻に抗議する集会やデモが行われている。
 米国ワシントンでは二月二十七日、国内のウクライナ出身者を中心にロシアの撤退を求める集会が開かれた。
 ドイツ・ベルリンでも二十七日、労働組合などが「戦争やめろ」と声を上げた。十万人もの参加者はロシアを非難するとともに、米国やNATOの介入を厳しく批判した。
 韓国のソウルで二十一日、宅配関係の労働者が過労死を防止する社会的合意の履行を経営側に求める集会を開いた。集会は民主労総に加盟する全国宅配労組が呼びかけたもの。


日本のできごと

(2月20日〜2月28日)

岸田政権、米欧にならい対ロ制裁へ
 ロシア軍がウクライナへの侵攻を開始したことを受け、岸田首相は二月二十五日、「G7(主要七カ国)と緊密に連携」などとして、ロシア向けの個人・団体への資産凍結や半導体輸出停止などの制裁を行うと発表した。また二十七日には米国や欧州各国が合意したロシアの一部金融機関を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除する制裁に日本も参加すると表明した。米欧の厳しい制裁に即座に歩調を合わせた形だが、アジアで対ロ制裁に踏み切った主要国は日本だけで、米欧への追随ぶりは際立っている。米国を先頭をする北大西洋条約機構(NATO)のロシア圧迫を支持し続けた日本には今回の侵攻を招いた責任の一端があり、制裁によっていっそう事態を深刻・複雑化させることは許されない。

ウ事態便乗し「中国脅威」「核共有」
 自民党の安倍元首相は二十五日、ロシアのウクライナ侵攻について「台湾に対し中国がどのような対応を取っていくかを占う意味で日本にとっても深刻」と言及、ウクライナ事態とはまったく無関係な中国を名指しし脅威を煽った。また安倍氏は二十七日、NATO加盟国の一部が採用している「核共有」について日本でも議論をすべきだという考えをテレビ番組で示した。同席していた橋下元大阪市長も同調、今夏の参院選での争点化を訴えた。ウクライナ情勢に便乗して対中脅威論をあおり、軍事増強や核武装を訴える宣伝が政権与党などから頻出しており、警戒が必要だ。

国民が予算案賛成、与党にすり寄り
 二〇二二年度政府予算案が二十二日、衆議院で可決された。戦後二番目のスピード成立で、自公与党と国民民主党が賛成した。国民の玉木代表はガソリン税を軽減する「トリガー条項」の凍結解除に岸田首相が前向きな姿勢を示したことを理由に挙げた。野党が政権運営の柱である新年度予算案に賛成するのはきわめて異例で、今夏の参院選をにらみ「対決型からの転換」を演出した。玉木氏は二十一日には「学術会議は軍事的に転用される研究はしないという歴史があるが、乗り越えたらいい」と軍事研究解禁を主張するなど、政権与党すり寄りが目に余る。一方でスピード成立を許した立憲民主党など他の与党の政権追及も「コロナ禍」を名目に甘く、とても貧窮する国民の期待に応えるものではない。

「令和臨調」発足へ、財界に危機感
 日本生産性本部は二十八日、産学の有識者らが政治や経済での改革実現を目指す「令和国民会議(令和臨調)」の発足を発表した。共同代表に茂木キッコーマン名誉会長らが就任する。参院選前の六月中旬をめどに結成大会を開催して正式発足させ、政権交代可能な政党政治の実現をめざす「統治構造改革」、中長期的な財政運営を考える「財政・社会保障」、人口減少を見据えた地域構想を示す「国土構想」の三テーマを活動の軸に据え、政府や与野党に提言する。会見した茂木氏は「平成から先送りされてきた積年の構造改革課題に取り組む」と強調した。激動する内外情勢への対応に立ち遅れる政府与党に対する財界の危機感のあらわれだが、国民大多数にとっては警戒が必要な動きだ。

自然減初の60万、出生6年連続最少
 厚労省は二十五日、二一年の人口動態統計速報値を公表した。死亡数から出生数を引いた人口自然減は六十万九千三百九十二人で初めて六十万人を超えた。出生数は八十四万二千八百九十七人で六年連続の過去最少、十五年連続の人口の自然減が続いている。背景にある若年層の低収入や貧弱な子育て環境などの問題が依然として放置され続けていることの反映で、歴代政権、特に自民党の責任は重大だ。

高裁で初の強制不妊賠償命令
 旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして近畿地方に住む男女三人が国に損害賠償を求めた訴訟で、大阪高裁は二十二日、原告の訴えを退けた一審の大阪地裁判決を取り消し、旧法を違憲と判断、計二千七百五十万円の賠償を命じた。全国九地裁・支部で起こされた訴訟で初の賠償命令。被害者に向き合い救済に道を開いた画期的な司法判断で、国には上告せず、一時金支給法の改正など一人でも多くの被害者を救済するために責任を果たすことが求められている。


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