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労働新聞 2022年2月25日号 トピックス

世界のできごと

(2月10日〜2月19日)

バイデン、ロシアの侵攻を「確信」
 バイデン米大統領は二月十八日、「ロシアが侵攻を決断したと確信している」と記者会見し「一週間から数日の間にウクライナを攻撃すると信じる理由がある。首都キエフも標的になる」と明言した。バイデン氏は昨年から、ロシアのウクライナ侵攻の可能性を連日わめき立てているが、欧州への武器売却や液化天然ガス(LNG)輸出拡大などで秋の中間選挙での挽回をめざす狙いが透けて見える。

米「インド太平洋戦略」発表
 米政府は十一日、安保・経済政策の指針となるインド太平洋戦略を発表した。中国抑止を最重要と位置づけ、軍事・経済両面で対抗する方針を打ち出した。同盟国などとの「統合抑止力」が基礎になるとして日米同盟の深化を迫っている。

綱渡りの米つなぎ予算可決
 米上院は十七日、今会計年度のつなぎ予算を来月十一日まで延長する法案を可決した。本予算をめぐって与野党の交渉が続く間の資金をまかなうための予算で、十八日が期限となっていた政府機関の閉鎖はかろうじて回避された。綱渡りを強いられるバイデン政権に他国に口を出す余裕などない。

仏軍部隊などがマリから撤収
 仏・マクロン大統領は十七日、西アフリカ・マリにテロ対策などのために駐留してきた仏軍を主力とする部隊の撤収を発表した。マリ暫定政権がロシア民間軍事会社と契約を結び、関係が悪化してきた。撤収は治安悪化につながる可能性もあるが、西アフリカでのロシアの影響力が強まる。

足並み揃わぬ「ミュンヘン安保会議」
 欧米など各国首脳らが参加する「ミュンヘン安全保障会議」が十八日から三日間開かれた。ウクライナのゼレンスキー大統領は会議で「これ以上、ロシアが侵攻してくるとあおらないでくれ」と訴えた。独・ベアーボック外相も、バイデン氏の「(ロシアの)侵攻を確信している」という発言に対して「ロシアの決定を推測または仮定しようとしないよう」と牽制するなど足並みは揃わなかった。

協調策見出せぬG20
 インドネシアで開かれた主要二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が十八日閉幕。エネルギー価格高騰、インフレ急進、利上げなど金融引き締めが世界経済に与える影響、コロナ禍の拡大や途上国へのワクチン普及、財政難の低所得国対策などについて議論した。共同声明では、インフレ圧力が「世界経済に潜在的なリスクをもたらしている」とし「すべての利用可能な政策手段を用いる」としたが、実効性のある協調策は打ち出せなかった。

人民のたたかい

(2月10日〜2月19日)

 ベトナム・ゲアン省の外資系履物工場でテト(旧正月)明けの二月七日から十四日まで、労働者約五千人が大規模なストライキを行なった。会社側は、労働者が要求した「昇給」や「年功序列手当の導入」などを受け入れた。これが引き金になって十五日から、同省などにある履物や電子メーカーの三工場で約千人の労働者が相次いで昇給を求めるストライキを行なった。
 トルコの大手スーパーでわずか時給四トルコリラ(三十四円)の賃上げを要求した労働者約二百五十人が解雇され、撤回を求める労働者らが十四日、「トルコ産業・企業家協会」本部前で抗議行動を行った。労働者らは、「私たちは極端な額ではなく、パンとミルクを買わせてほしい」と訴えた。
 韓国・ソウル中心部で十五日、韓国外食業中央会など小規模事業者ら約二百人が集会を開き、営業時間制限の撤廃や損害を被った自営業者への実質的な補償を政府に要求した。集会は自営業者の怒りの声であふれ「一〇〇%の補償を受けるまで闘う」と表明した。
 オーストラリア・シドニーで十五日、看護師千人が大規模なストライキを行った。慢性的な人員不足やコロナウイルス拡大による負担増に抗議、「看護師はもう限界だ」などと書いたプラカードを持ってデモも行なった。


日本のできごと

(2月10日〜2月19日)

コロナ「ピーク越え」も死者数増加
 岸田首相は二月十七日、新型コロナウイルス対策の新たな方針を発表した。まん延防止等重点措置は十七道府県で延長する一方、沖縄など五県では二十日で解除する。また「水際対策」緩和も打ち出し、三月から新規入国の原則停止を解除、一日の入国者数の上限を現在の三千五百人から五千人に引き上げる。水際対策強化はオミクロン株の感染拡大を遅らせるためにとった措置だが、既に国内で拡大している状況となり、対策見直しが遅れていた。十六日の厚労省の専門家会合の分析では「第六波のピークを越えた」としつつも、高齢者を中心に重症者・死亡者が増加していることへの警告が出されるなど、感染収束の見通しが立たっていない。安倍・菅政権時代から続く場当り的なコロナ対応により、依然として多くの地域で保健・医療体制が危機的な状況に陥っている。

米主導で相次ぐ外相会談、日本は追従
 日米韓三カ国は十三日、米ハワイで外相会談を行い、五年ぶりに共同声明を発表した。朝鮮民主主義人民共和国の核・ミサイルだけでなく、日米韓の声明としては初めて台湾やウクライナに言及した。中国やロシアを抑え込むために同盟国にいっそう負担を求める米国の思惑が反映したものだが、同じく米国が主導し十一日に豪メルボルンで開かれた日米豪印四カ国(クアッド)外相会合では、インドの配慮で共同声明ではウクライナへの言及はなかった。あらゆる枠組みで米国の意に沿った役割を果たす岸田政権の外交では国の進路を誤る。

岸防衛相、他国の空爆「排除しない」
 岸防衛相は十六日、国会答弁で「敵基地攻撃」の具体化として、他国の領空で空爆することも「自衛」の範囲として「排除しない」と明言した。また岸田首相は十八日、「敵基地攻撃」の名称変更について「検討」を表明、「ミサイル技術が急速なスピードで変化する現状において、あらゆる選択肢を排除せず検討する」と攻撃対象を「敵基地」に限定しない姿勢を示した。「自衛」を名目になし崩し的に侵攻への道筋を付けるもので、危険きわまりない。

GDP回復せず、国民経済の苦境反映
 内閣府は十五日、二〇二一年十〜十二月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表した。物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比一・三%増、年率換算で五・四%増と2四半期ぶりのプラスとなった。コロナ感染「第五波」でマイナスだった前期はかろうじて上回ったが、コロナ危機前の水準は下回った。次の二二年一〜三月期は「第六波」や物価高騰の影響から再びマイナスとなることは避けがたく、生活・経済への打撃の深刻さを示している。大幅な賃上げなどによる国民経済の底上げや格差解消政策などの抜本策が求められている。

国民負担率、統計上過去最大に
 財務省は十七日、国民や企業が所得の中から税金や社会保険料をどれだけ払っているかを示す二一年度の国民負担率が、前年度比〇・一ポイント増の四八・〇%となり、統計がある一九七〇年度以降で最大になるとの見通しを発表した。コロナ禍で分母にあたる国民所得が減少し負担率が高まった形。五十年余り前は二四・三%だったが税・社会保障の負担増などにより上昇傾向が続いている。財政赤字対国民所得比を含めた潜在的国民負担率も二年続けて六〇%を超えた。なし崩し的な国民負担増大は許されず、これを転換する国民大多数のための政権実現が必要だ。

円実力50年ぶり低水準、デメリット増
 国際決済銀行(BIS)は十七日、一月の実質実効レート(二〇一〇年=一〇〇)を発表、円は六七・五五で、一九七二年以来の低水準となった。長年の物価上昇の弱さを反映した長期的な実質レートの下落に加え、国内外の金融政策の違いなどを反映した最近の名目レートの円安が重なったため。同レートは対ドルの名目相場が初めて一ドル七十円台に突入した九五年のピークから五〇%余り低下した。円の総合的な実力が約五十年前に逆戻りした格好だ。当時は「安い円」を武器に輸出で稼いだが、現在は経済構造の変化で円安のメリットは薄れる一方、輸入による企業や家計のコスト負担は増している。「国力回復」には国民経済を潤すことが必須だ。


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