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労働新聞 2022年2月15日号 トピックス

世界のできごと

(1月30日〜2月9日)

ウクライナ情勢、緊張あおる米国
 ウクライナ情勢をめぐり、フランスのマクロン大統領は二月八日、モスクワでプーチン大統領と会談を行った。プーチン大統領はマクロン大統領に対し、北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大、ロシアとの国境付近にミサイルシステムを設置しないことなどの提案が無視された状況に懸念を示した。またドイツのシュルツ首相はマクロン大統領などとベルリンで協議、二〇一五年にウクライナ東部での戦闘停止などを盛り込んだ「ミンスク合意」をベースに打開を図ろうと外交を活発化させている。一方、バイデン米大統領はドイツに対し、ロシアがウクライナに侵攻した場合はロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」計画を「終わらせる」と述べ、どう喝した。また米国は三千人規模の部隊を東欧とドイツに追加派遣すると発表、緊張を高めている。

中ロ、「内政干渉反対」で結束
 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は四日、北京で会談した。共同声明では「民主主義と人権保護を口実とした内政干渉に反対」と歩調を合わせ、米国などによるウクライナや台湾などをめぐる包囲網に断固反対する姿勢を示した。その上で、「ロシアが『一つの中国』原則を支持し、台湾の独立に反対」と記するとともに、ウクライナ情勢でNATO拡大に反対するとともに、中国は「欧州の安保に関するロシアの提案を支持」と表明した。そして、米英豪による「オーカス」についても「深刻な懸念」を示し、「アジア太平洋地域における閉鎖的な枠組みの構築に反対」と盛り込んだ。

米貿易赤字が2年連続で過去最高
 米商務省が八日発表した二一年の貿易統計によると、米の貿易赤字額は、前年比一八・三%増の一兆九百七億ドル(約百二十五兆円)と二年連続で過去最高となり、初めて一兆ドルを超えた。相手国別では、中国、メキシコ、ベトナム、ドイツの順。米中はトランプ前政権下の二〇年二月に発効した「第一段階」合意で、米国から中国への輸出額を二〇〜二一年に大幅に拡大する目標を掲げた。二一年の対中輸出額は千五百十一億ドルと前年から二一%増えたが、対象品目の輸出額は目標の五七%にとどまった。米国は「中国は約束を守る姿勢を示せ」(サキ報道官)と中国へ圧力を加えている。

コロナ感染者が4億人突破
 米ジョンズ・ホプキンス大学は九日、世界全体の新型コロナの感染者の累計が四億人を突破したと発表した。先月、三億人を上回ってからわずか一カ月余りで、一億人が感染した計算になる。死者数は累計で約五百七十六万人に達した。累計感染者数を国別でみると、世界最多は米国の約七千七百万人と全体の二割を占めている。

人民のたたかい

(1月30日〜2月9日)

 米国ワシントンで二月五日、ウクライナ情勢について、バイデン政権が情勢の緊迫化させる行動を控えるよう求める集会が開かれた。この行動は反戦組織が呼びかけたもので、ホワイトハウス前に集まった人びとは「ロシアとの戦争ノー」「戦争ではなく、医療や生活のお金を使え」との声を上げた。同様に行動は全米各地で行われた。
 ギリシャ中部のラリサで四日、農民が数百台のトラクターで、燃料高騰に対する支援策が不十分だと抗議するデモを行った。農民の代表は燃料高騰で生産費用が五〇%も増加したと指摘、政府の支援策が基本的経営さえ維持できぬ低水準であることに抗議した。
 米国中西部のミネアポリスで五日、警察が家宅捜査中に黒人青年を射殺したことに抗議するデモが行われ、数百人が参加した。事件は二日に起こり、警察は無断に家宅捜査を行っていた。参加者は無断家宅捜査の全面禁止、射殺に関与した警官の処分などを求めた。
 トルコのイスタンブールで三日、国内最大手の食品配達企業に勤める労働者が配達スクーターを走らせ賃上げを求める抗議行動を行った。同国では年間インフレ率が約五〇%に達するなど、労働者の生活状況が悪化している。


日本のできごと

(1月30日〜2月9日)

北京五輪前に中国敵視の「人権決議」
 衆議院本会議は二月一日、「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」を与野党のほぼ全会一致で可決した。ウイグル自治区や香港などの「深刻な人権状況への懸念」に「説明責任」を求め、日本政府に「包括的施策」を求める内容。北京冬季五輪を前に敵視をあおるもので、中国を名指しせず非難の文言も盛り込まれていないといえ、日中関係を悪化させるだけのものだ。また共産党は中国を名指しで非難するよう求めるなど与党以上の対中強硬論を主張、またも犯罪的な役割を担った。

欧州へのガス融通、対米追随の愚策
 萩生田経済産業相は九日、欧州に液化天然ガス(LNG)の一部を融通する方針を表明した。政府の要請に応じた日本企業がLNGを積んだ船を三月に欧州に着くように数隻向かわせる。数十万トン規模になる見込み。ウクライナ情勢に関連し、制裁を構えてロシアをけん制する米国の要請に応えた格好だが、ガス価格は過去最高水準と燃料価格が暴騰するなか、ガス融通で日本経済や国民生活が圧迫されることは避けがたい。ウクライナ情勢で日本政府に求められているのは米国と距離を置いた独立・平和外交であり、今回の決定は対米追随で国民犠牲の愚策だ。

佐渡金山の世界遺産推薦、韓国は反対
 岸田政権は一日、世界文化遺産の登録に向け「佐渡島の金山」(新潟県)の国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦を決めた。これに韓国は朝鮮半島出身者が戦時中に強制労働させられた現場だとしての登録に反対しているが、岸田首相は同日「正しい歴史認識」の形成や「いわれなき中傷」への対応を掲げ外務省や文科省から成る作業部会を立ち上げ、「歴史戦チームを立ち上げ日本の誇りと名誉を守り抜いてほしい」(安倍元首相)などの党内右派の声に応えた。日本政府は二〇一五年に長崎県の軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録された際、朝鮮人強制労働を含め「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」とユネスコに表明したが、その後実行を怠っている「前科」がある。政権浮揚策としての推薦決定は言語道断だ。

那覇軍港で県民不安軽視の米軍訓練
 在沖縄米海兵隊は八日、那覇軍港(沖縄県那覇市)で大規模訓練を開始した。「大使館警護や非戦闘員退避の訓練」などとして隊員約二百五十人やオスプレイなどが投入された。また敷地内でデモ隊にふんした者に銃を携帯した隊員が向き合う様子も目撃された。訓練に対し玉城知事は「同軍港は多くの県民の生活圏内で県民に大きな不安を与える」「主目的とは異なる使用を許せば基地負担が増大する」と厳重に抗議した。また米海兵隊は同日、沖縄本島から台湾付近のルソン海峡などを含む「第一列島線」一帯でも大規模訓練も実施した。北京五輪開会中にあえて中国を軍事的に挑発する米軍の蛮行を許す日本政府も同罪だ。

若年層で格差拡大、子育て断念も
 内閣府は七日、日本経済の現状分析や見通しなどをまとめた「ミニ白書」を公表した。二一年九月にまとめた経済財政白書の後の情勢を分析、二十五〜三十四歳の年齢層のジニ係数が上昇し格差の拡大が確認され、その背景を「男性の非正規雇用比率の高まり」と説明した。また同年齢層の所得五百万円未満では子どもを育てる夫婦の割合が大幅低下、若年層は結婚して子どもを持つという選択が難しくなっているとの見解も示した。一方、預貯金の利子が低迷する中、家計資産が上位一〇%の世帯が得る利子・配当金収入は上昇、有価証券を保有する高資産世帯は富を増やしていることも示された。

初の教員不足調査、抜本対策必要
 文科省は一月三十一日、教師不足に関する初めての実態調査の結果を公表した。二一年四月の年度当初に配置された公立校の千八百九十七校(全体の五・八%)で各教育委員会の予定に比べ二千五百五十八人教員数が足りず必要な配置ができていなかった。同省はその要因を「産休・育休・病休者数の増加、特別支援学級数の増加により、必要な臨時的任用教員が見込みより増加したこと」としているが、そもそも正規教員が不足している現状があり、それを非正規教員で穴埋めしようとの姿勢では「若者の教員離れ」は改善されない。過重労働などの厳しい労働条件の改善を含む抜本的対策が必要だ。


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