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労働新聞 2022年2月5日号 トピックス

世界のできごと

(1月20日〜1月29日)

米が書面回答、ウクライナ危機あおる
 ウクライナの緊張が続く中、ロシアのラブロフ外相は一月二十一日の米国務長官との会談で、自国の「安全の保証」について書面での回答を求めた。米国防総省は二十四日、北大西洋条約機構(NATO)が多国籍の即応部隊の派遣を決めれば、米国から八千五百人が参加すると発表した。二十八日、プーチン露大統領がマクロン仏大統領との電話協議で、米国とNATOが示した書面回答について、NATO東方拡大停止などロシアの要求が無視されたと不満を示した。独仏はロシアとの協議を優先し衝突回避を働きかけているが、米政権はウクライナ危機をあおりたて国内での支持回復を狙う。

米FRB利上げに、世界の波乱要因に
 インフレが急速に進行する中、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は二十六日、連邦公開市場委員会(FOMC)後、「ゼロ金利政策を終了し政策金利を引き上げる」と表明した。利上げは三月にも始まり年三回程度見込まれて、資産縮小も開始される。インフレ鎮圧の利上げは四十年ぶりで、米経済回復の下振れリスクとなるだけでなく、世界経済に大きな影響を及ぼす波乱要因となっている

IMFが成長減速予測、途上国に顕著
 国際通貨基金(IMF)は二十五日世界経済見通しの改訂を発表。今年の実質成長率を四・四%と、昨年十月の予測から〇・五ポイント引き下げた。米国のインフレ長期化と、新型コロナ対策を優先する中国経済の下振れ、さらにウクライナや台湾などの地政学リスクにも言及した。成長率の〇・五ポイントの下振れのうち米中で八割を占める。米国、中国、ユーロ圏ともに成長率が下振れすると改定した。米国など金融緩和縮小によって、多額のドル建て債務を抱える新興・途上国が金利上昇や通貨安で債務負担の増大も懸念されている。

欧州議会巨大IT規制法案可決
 欧州議会が二十日、「デジタルサービス法案」を可決した。大手IT(情報技術)企業が対象だが、事実上GAFAなど米企業に対象を絞った内容となっている。違法コンテンツの排除や差し止めを義務付け、広告表示のルールも厳格化する。利用者の個人情報の利用規制なども盛り込んだ。違反した場合、最大で世界売上高の六%の罰金が科される。EUは他国に先駆けて厳しいルールを導入することで、グローバルモデルを先行する狙いがある。

人民のたたかい

(1月20日〜1月29日)

 イスラエルが占領する東エルサレムで一月二十一日、学校建設を口実にしたパレスチナ人の住宅破壊に抗議するデモがあり、左派系イスラエル人やパレスチナ人たち数百人が参加した。
 韓国・宅配トップのCJ大韓通運で、民主労総傘下の全国宅配労組の運転手らの無期限ストライキが昨年十二月二十八日以降、三週間以上続いている。労組は昨年締結された「宅配労働者への過労死防止のための社会的合意」に基づいて引き上げられた宅配料金が宅配運転手に公正に配分されていないと訴えている。
 インドのビハール州など各地で二十四日から二十六日にかけて、公営鉄道会社の就職試験のやり方が不公平だと怒る若者たちの抗議デモが拡大した。インドの失業率は新型コロナ拡大で経済が打撃を受ける以前から、一九七〇年代以来最低の水準で、今回の就職試験には、三万五千人の募集に対し一千万人以上が応募していた。
 マレーシア・セランゴール州のゴム手袋工場で二十三日、警備員の従業員への暴力に対する会社の無策に抗議して労働者がストライキを行った。同工場では新たな警備会社から派遣された警備員から従業員が殴られる事件が発生、労働者側は、元の警備会社との契約に戻すよう要求した。


日本のできごと

(1月20日〜1月29日)

日米会談、軍事・経済で中国包囲強化
 岸田首相は一月二十一日、米国のバイデン大統領と初めてオンラインでの首脳会談を行った。中国について「かなりの時間をかけてやり取り」(首相)し、両首脳は中国への対抗を念頭に日米同盟をさらに強めることで一致、首相は新たな国家安全保障戦略などを策定し、「敵基地攻撃能力」の保有検討を含め日本の軍事力の強化を表明した。また経済版の閣僚協議「2プラス2」の新設でも合意した。北京冬季五輪開催を前に軍事・経済両面の対中包囲網強化を内外に誇示した格好で、中国政府の顔に泥を塗り日中関係を損ねる愚行のきわみだ。

失政で感染爆発、まん防全国の7割超
 岸田政権は二十一日、コロナ感染の拡大を受け、特別措置法に基づくまん延防止等重点措置を、適用中の沖縄、山口、広島の三県に加え、東京都や愛知など十三都県に新たに適用した。さらに二十七日には北海道、大阪、福岡などの各道府県も追加、合わせて全国の七割超にあたる三十四都道府県に拡大された。感染者数は二月に入り過去最大の九万人を超えるなど感染爆発が続いているが、これは感染が下火になっていた昨年十〜十二月に国が医療・検査体制の拡充を怠っていたことが主因。失政によって「第六派」を招いた政権の責任は重い。

自殺者なおコロナ前超、女性にひずみ
 厚労省は二十一日、二〇二一年の自殺者数が二万八百三十人となったと発表した。警察庁の自殺統計(速報値)に基づくもので、二年ぶりの減少だが、コロナ禍前の一九年と比べ増加した。男性が十二年連続で減少したものの、女性は前年比微減で一九年比で高止まりしている。暫定値として原因・動機も分析、健康問題が減る一方、経済・生活問題は増加した。女性では家庭問題が増加、項目別では「家族の将来悲観」や「介護・看病疲れ」の増加が目立った。コロナ禍の犠牲がより女性にしわ寄せされている実態が改善されておらず、政治の責任は重大だ。

ガソリン価格抑制策、初発動も期待薄
 経産省は二十七日、ガソリンや灯油などの燃料価格を抑制する対策を初めて発動した。昨年十二月に新設した制度に基づくもので、レギュラーガソリン価格が百七十円を超えると発動され、石油元売りに一リットルあたり三・四円の補助金を支給する。しかし小売価格は給油所の独自判断で決められるため、燃料価格の引き下げが保証されるわけではない。石油元売り大企業は補助金で潤う一方、物価全体の高騰に苦しむ国民の生活状況改善は期待できない。中小企業や国民を直接支援する施策が求められている。

生活実態無視の2年連続年金減決定
 厚生労働省は二十一日、二二年度の公的年金の支給額を二一年度に比べて〇・四%引き下げると発表した。二年連続の減額で、厚生年金を受け取る夫婦二人のモデル世帯で九百三円減少する。四、五月分をまとめて支給する六月の受け取り分から適用される。年金額は物価や賃金の変動に応じて毎年改定され、今回は物価の変動率(二一年平均)が〇・四%減、賃金の変動率(一八〜二〇年度)が〇・四%減で、減少幅の大きい賃金の変動率を年金改定率とするルールが適用された。しかしコロナ禍を含む時期の賃金を基準にしたり、直近の原油高や円安による物価高騰を考慮しないなど、国民の生活実態を踏まえた決定とは程遠い。年金削減の中止と年金制度の抜本改革が求められている

春闘開始、連合は従来以上の協調姿勢
 連合の芳野会長と経団連の十倉会長が二十六日、二〇二二年度の春季労使交渉をめぐる懇談会を開催、春闘が事実上始まった。連合はベアと定期昇給で四%程度の賃上げを求める闘争方針を決めており、芳野会長は「大手も中小企業もしっかり賃上げを要求して交渉していくことが大事」と強調したが、「労使でめざす方向は一致してる。今年は『未来づくり春闘』。率直な話し合いができる建設的な労使関係が必要」とまとめた。経団連の求めるジョブ型雇用に対しても雇用の流動化自体には反対の意を示さず、要求実現へストを構えるなど断固とした姿勢は示さなかった。芳野会長は岸田政権の「新しい資本主義実現会議」にも積極的に参加、これまで以上に協調路線を進めている。


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