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労働新聞 2022年1月25日号 トピックス

世界のできごと

(12月20日〜1月19日)

ウクライナ情勢、緊張高める米
 米国のシャーマン国務副長官とロシアのリャプコフ外務次官は一月十日、スイス・ジュネーブでウクライナ情勢について協議した。ロ側はウクライナを北大西洋条約機構(NATO)に加盟させる動きに反発、緊張した状況をつくり出した欧米に冷静な対応を求めた。しかし米側はあくまでNATO拡大についてのロシアの要求を拒否、ウクライナ国境付近に展開するロシア軍の撤退を求めた。この問題についてロシアのプーチン大統領は、米国が一九九〇年代にNATOの東方不拡大を約束したと指摘しているが、米側はこれにまともに答えず、この間ルーマニアやポーランドにミサイル防衛システムを配備するなど緊張を高めている。

核5大国、NPT体制維持へ打算
 米英仏中ロの五つの核保有国は三日、「核兵器国間の戦争回避と戦略的リスクの軽減が最も重要な責務」と確認する共同声明を発表した。声明では「核兵器の正式な認可なしの使用や意図しない使用を防ぐ国内政策を維持」「軍事衝突の回避に向けた二国間や多国間の外交アプローチを継続」など訴えている。今回の声明は予定されている核拡散防止条約(NPT)の再検討会議に合わせて用意されたもので、米国は「核兵器について自制する責任がある」などと殊勝な姿勢を演出するが、一方で今後三十年で何兆ドルも費やし、核戦力を増強する計画を打ち出すとともに、英国、豪州とともに対中対抗の「AUKUS」を形成、豪への原子力潜水艦の配備を計画するなど、核不拡散と逆行する動きを強めている。声明は核保有国の「特権」を守るNPT体制維持への打算でしかない。

対中直接投資、過去最高に
 中国商務省は一月十三日、二〇二一年の世界の対中直接投資が前年比一四・九%増の一兆千四百九十四億元(約二十兆七千億円)となり、過去最高を更新したと発表した。中国への投資はコロナ禍に見舞われた二〇年も六・二%増とプラスを維持、二一年も前年を上回る増加率となった。また対米貿易総額も前年比二九%増の七千五百五十六億ドル(約八十六兆円)で、三年ぶりに最大を更新した。米バイデン政権は対中封じ込めに向けサプライチェーン(供給網)からの中国除外を進めているが、「米国が仕掛けた貿易戦争は失敗」(中国人民大学)で、足元では逆に中国依存が強まっている。

世銀、危機の深まりに警鐘
 世界銀行は一月十一日、二〇二二年の世界全体の経済成長率が前年の五・五%から鈍化、四・一%になるとの予測を発表した。新型コロナウイルスのオミクロン株の急速な感染拡大が短期的に各国の経済活動を混乱させると指摘、米国や中国など主要国の景気が減速し、新興国の経済を支える輸出が伸び悩むと予測している。また米国など先進国における高インフレについても「新たな脅威」と警鐘を鳴らしている。世銀は併せて、コロナ禍が貧しい国に「途方もない負担」を負わせているとし、「これは経済開発に恒久的な影響を及ぼすだろう」と指摘した。

人民のたたかい

(12月20日〜1月19日)

 アルゼンチンのブエノスアイレスで十二月二十八日、看護師など医療労働者が右派市政の医療予算削減に抗議する集会を開いた。右派市政はコロナ禍でも公的医療の予算を削減、看護師の専門職としての地位さえ認めていない。参加した看護師は「私たちは最前線に立って報いられることなく、逆に痛めつけられている」と訴えた。
 米国西部コロラド州で一月十二日、大手スーパー傘下の「キングスーパーズ」の従業員が賃上げや待遇改善を求めるストライキを行った。このストには全米食品商業労組(UPCW)の組合員八千人以上が参加した。従業員は時給を六ドル(約六百九十円)以上引き上げるよう求めていたが、経営側は四・五ドルしか引き上げないと回答していた。
 韓国のソウルで五日、日本による従軍慰安婦問題の解決を求める「水曜集会」が三十周年を迎えた。行動は一九九二年一月八日に始まり、毎週水曜日に開かれてきた。記念集会には「日本政府はウソを言わず正直に話すべき」などの被害者の言葉が紹介された。


日本のできごと

(12月20日〜1月19日)

通常国会開会、苦境にじむ演説
 第二百八回通常国会が一月十七日に召集され、岸田首相が施政方針演説を行った。新型コロナウイルスの感染状況が急激に悪化するなかで初めての通常国会に岸田政権は、安倍・菅政権がコロナ対応でつまずき退陣を余儀なくされたことを教訓に、コロナ対応での「先手と柔軟」を力説、また自身が掲げる「新しい資本主義」実現へ「デジタル」「気候変動」「賃上げ」なども強調した。首相は過去最大の百七兆円余りの二〇二二年度予算を無難に成立させ、夏に控える参議院選挙で勝利し政権基盤を安定させる思惑だが、政権の前途には難問が山積していることを自己暴露する演説となった。

3県にまん防適用も「米軍由来」否定
 岸田政権は七日のコロナ対策本部で沖縄、山口、広島の三県にまん延防止等重点措置を適用すると決めた。措置は九日から。米軍基地を中心に感染が拡大したが、「感染症は目に見えないものが相手。どこ由来か限定は非常に難しい」(山際経済再生担当相)と「米軍由来」との見方を否定、米軍関係者の水際対策強化についても「要望は米側には伝えている」と丸投げししている。米国に何も言えない岸田政権の下、国民の安全が脅かされている。

臨時国会閉会、過去最大の補正成立
 第二百七臨時国会が十二月二十一日、閉会した。「新しい資本主義」を掲げた岸田政権発足後初の国会だが、成立した三十六兆円弱の過去最大の補正予算に盛り込まれた肝入りの新給付金は困窮した国民に行き渡らず、給付方法をめぐっても二転三転を繰り返すなどし、岸田政権の基盤の弱さを露呈させた。一方で補正として過去最大となる軍事費を取り付け、また維新など野党も巻き込み憲法審査会で改憲議論を行うなど、日米同盟強化・軍事一体化を推し進め、安倍・菅政権の継承であることを示した。

日米2+2、「思いやり予算」増額も
 日米両政府は一月七日、岸田政権発足後初となる外交・軍事担当閣僚会合(日米2プラス2)を開催した。まとめられた共同文書では、中国に対抗する同盟強化・一体化を掲げて「敵基地攻撃能力」などを含めたあらゆる選択肢を検討するとした。また「思いやり予算」にかかわる新たな特別協定でも基本合意し、今後五年間の日本側負担総額は一六〜二二年度より約千八十六億円増の一兆五百五十一億円となる見込み。日本は米国の意に沿い中国対抗の先兵としての役割を強めている。

日豪円滑化協定署名、「準同盟」強化
 日本とオーストラリアの両首脳は六日、自衛隊と豪軍が共同訓練を行う際などの対応をあらかじめ取り決めておく日豪円滑化協定に署名した。日米間の地位協定に相当し、米国以外の国と同様の協定を持つのは初。豪州とより大規模で複雑な訓練を円滑に進めるため、協定は互いの国を訪れる際の手続きや相手国内に入った部隊の法的な立場を規定、滞在中に事件や事故を起こした場合の対応も盛り込んでいる。「準同盟国」としての位置付けを固めているが、狙いは米国を中心とした対中包囲網強化で、危険な動きだ。

関係損ねる五輪「外交ボイコット」
 岸田首相は十二月二十四日、北京冬季五輪に政府代表団の派遣を見送ることを正式表明した。「総合的に勘案、自ら判断」といいながら、米国などの「外交ボイコット」と歩調を合わせた。岸田氏は「政府として出席の在り方について特定の名称を用いない」と一定の「配慮」はしたものの事実上の「外交ボイコット」であることに違いなく、前年の東京五輪開催に全面協力した中国政府の顔に泥を塗る決定で、両国間の信頼関係を損ねるものだ。

「桜」捜査終結、安倍氏再び不起訴に
 安倍元首相の後援会が「桜を見る会」前夜祭の費用を補填(ほてん)していた問題で、東京地検特捜部は二十八日、安倍氏を再び不起訴(嫌疑不十分)にし、東京第一検察審査会による同年七月の「不起訴不当」の議決を受けた再捜査が終結した。この疑惑に関しては、特捜部は二〇年十二月に安倍元首相の元公設第一秘書を政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴したが、安倍元首相は不起訴とした。特捜部は再び不起訴にした結果の詳細は説明しないままで、数多くの疑惑が未解明のままでの幕引きは許されない。


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