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労働新聞 2022年1月1日号 トピックス

世界のできごと

(12月10日〜12月19日)

米、中国への対抗姿勢強化
 米議会上院は十二月十六日、「ウイグル強制労働防止法案」を全会一致で可決した。大統領の署名・成立後、百八十日後に発効する。法案では、新疆ウイグル自治区で生産された製品は「強制労働で作られた」とみなし、米国への輸入を止める。完成品だけでなく、部材が同自治区の生産であれば対象になる。さらに米政府は同日、ドローンやスパコンなど中国の四十二社・団体への投資や輸出を禁じると発表した。また十五日には、上院で二〇二二会計年度の国防予算の大枠を決める国防権限法案を賛成多数で可決した。その中で、インド太平洋地域における米軍の抑止力を強化するための基金「太平洋抑止構想」(PDI)に七十一億ドルを充て、中国への対抗姿勢のいっそうの強化を鮮明にした。

中ロへの対抗強めるG7外相会合
 主要七カ国(G7)外相会合が十一、十二日英国で開かれた。会合では、ウクライナ情勢に関する共同声明を採択し、北大西洋条約機構(NATO)拡大を画策する米欧に反発するロシアに対して「厳しい代償を払うことになる」と強くけん制した。また「人権弾圧」台湾問題などを口実にして中国を抑え込むため「同盟国」や「友好国」と連携を拡大することを確認したが、具体策は出せなかった。また東南アジア諸国連合(ASEAN)各国を初めて招待した。

世界の債務残高が過去最多に膨張
 国際通貨基金(IMF)は十五日、二〇二〇年の世界の債務残高が過去最高の二百二十六兆ドル(約二京五千七百兆円、京は兆の一万倍)に達したと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大による急激な景気悪化で、各国が実施した財政支援など緩和マネーで債務が膨張した。国内総生産(GDP)の合計と比べると、前年から二八ポイント増の二五六%に上り、第二次大戦後の年間の伸び率で最大となった。増加の半分以上は政府部門が占め、一九六〇年代半ば以降で最も高い水準に達した。特に先進国での財政悪化が目立った。高水準の債務は、世界経済の足かせとなり、リスクを高める。世界的な金融危機の火種は膨張する一方だ。

FRB量的緩和終了の前倒しへ
 米連邦準備制度理事会(FRB)は十五日、金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、加速するインフレの抑制のため「量的緩和」策終了の前倒しを決定した。政策金利見通しでは、二〇二二年に三回の利上げを行なう想定が示された。FRBは十一月の会合で市場から買い入れる米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の購入額を毎月減額し、来年六月に量的緩和を終了するとしていた。今回の決定で減額幅を倍増させ、来年三月に量的緩和が終了する見込みとなった。長期の金融緩和で、世界には過大債務が横たわり、わずかな利上げでも利払い負担が急増し、景気が冷え込む恐れがある。利上げでドル高が進めば、新興国は通貨安となり経済は苦境に陥る。

人民のたたかい

(12月10日〜12月19日)

 イタリア最大労組のイタリア労働総同盟(CGIL)と労働連合(UIL)が十二月十六日、八時間のゼネストを行なった。政府が発表した二〇二二年度予算案に対して年金制度の改善、低所得者減税など要求した抗議活動。ローマでは数千人が集まって抗議の声を挙げ、他の都市でもデモが行われた。ドラギ首相が就任した二月以降で初の大規模ストとなった。
 フランス国鉄(SNCF)で十七日から労働条件の改善、スタッフ増員、賃上げなどを要求して三日間のストライキが行なわれた。
 ギリシャ船員組合は十日から四十八時間、全土で、団体賃金協約、賃上げなどの要求を求めてストライキを行なった。
 オーストラリアの鉄道・トラム・バス労働組合(RTBU)は十四日、シドニーで二十四時間のストライキを行なった。賃上げや職場の安全問題などの要求で先週もストを実施しており、シドニー市内で三分の二の電車の運行が止まった。


日本のできごと

(12月10日〜12月19日)

与党税制大綱、大企業優遇変わらず
 自公両党は十二月十日、二〇二二年度の与党税制改正大綱を決定した。賃上げを促すため企業が賃金総額を増やした場合に法人税から差し引く控除率を引き上げることなどが柱。だが一時金も賃上げの増加分として計算できる内容のため基本給のベースアップにつながる見込みはなく、また中小企業の六割を占める赤字企業に法人税減税は無関係だ。安倍政権時代からの賃上げ減税や研究開発減税の恩恵で大企業は過去最高の内部留保をため込む一方、労働者の賃金は上がっていない。「分配」を掲げる岸田首相だが、総裁選時に主張していた金融所得課税の見直しも「検討する必要がある」として先送りするなど、大企業や富裕層優遇の不公平税制では安倍・菅政権時代と何ら変わりはない。

国交省の統計書き換え・二重計上発覚
 国交省は十五日、建設業の毎月の受注動向を示す「建設工事受注動態統計」で調査票を書き換えて二重に計上、八年前の一三年から過大に推計されていたと公表した。調査票を建設業者から集める都道府県に対し、期限に間に合わない業者の受注実績を実質的に書き換えるよう指示していた。二重計上によって国内総生産(GDP)が水増しされたことになり、この国交省による統計書き換え・二重計上は第二次安倍政権の時期に始まっており、「アベノミクス粉飾」のための政権からの圧力が遠因である疑いもある。徹底的な真相究明が求められる。

森友訴訟、国が真相隠の幕引き
 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省決裁文書の改ざん問題で、自殺した元財務省近畿財務局職員の妻が国などに損害賠償を求めた訴訟で、国は十五日、争う姿勢から一転し賠償責任を認める書面を大阪地裁に提出、国に対する訴訟は終結した。国が被告の訴訟ではきわめて異例の対応で、裁判で詳細な事実が明らかになることを避けるための幕引き。原告である妻は「裁判は夫がなぜ死んだのかを知るための裁判だが、国は真相を隠すために認諾した。夫はまた国に殺されてしまった」などと抗議した。卑劣な幕引きによる真相隠しは許されない。

家父長的家族観で「こども家庭庁」に
 自民党は十五日、子ども政策の司令塔となる新組織の名称を「こども家庭庁」とする政府案を了承した。政府の基本方針案は当初「こども庁」だったが、党内から「子どもは家庭を基盤として成長する存在」といった意見が出され、総選挙で「こども家庭庁」を掲げた公明党にも配慮し修正された。しかし親や家庭に恵まれない子どもや児童養護施設で暮らす子も多い。家父長的家族観に固執する党内保守派に配慮した転換で、総選挙で掲げた「持続可能で誰一人取り残すことがない育成環境」とも相容れない。子育てに政治が責任を持つ姿勢とはかけ離れている。

共産党が「外交ボイコット」要求
 日本共産党の志位委員長は十三日、「中国に人権抑圧の是正と五輪憲章の順守を求めよ――五輪開会・閉会式への政府代表の不参加は当然」と題する声明を発表、岸田政権に対し二二年二月に行われる北京冬季五輪に「外交ボイコット」を迫った。共産党の声明は「人権」を口実にした米国の中国攻撃に加担することを岸田政権に迫るもので、その犯罪的な役割は安倍元首相らと何ら変わらない。しかも中国の「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」にこの反動的声明を発表する蛮行で、まったくもって許しがたい。

米軍基地でクラスター、「水際」ザル
 在沖縄米海兵隊は十七日、十二月初旬にキャンプ・ハンセン(同県金武町など)に到着した兵士に新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したと発表した。また同日には同基地の日本人従業員一人が新変異株「オミクロン株」に感染していることも判明した。県内で同株が確認されたのは初めて。岸田政権はオミクロン株の感染拡大を受た水際対策として外国人の入国を原則禁止するが、在日米軍は日米地位協定に基づいて日本の出入国管理を免除されており、今回到着した米兵も嘉手納基地(同県嘉手納町など)から入国し日本当局による検疫を受けていない。これに対し岸田政権は「感染拡大を防止しつつも、在日米軍の即応性を維持することはきわめて重要」(松野官房長官)などと積極的な米軍への働きかけには慎重姿勢だ。


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