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労働新聞 2021年12月5日号 トピックス

世界のできごと

(11月20日〜11月29日)

コロナ新変異種、世界を混乱に
 世界保健機関(WHO)は十一月二十六日、南アフリカなどで確認された新型コロナウイルスの変異種について、最も警戒レベルが高い「懸念される変異株」(VOC)に指定、「オミクロン株」と命名した。欧州各国や米国などで感染が確認された。これを受け世界の株式相場は軒並み大幅下落、また世界貿易機関(WTO)の閣僚会議が中止となるなど、政治面でも影響が出ている。欧州では再びコロナの感染拡大が広がり、一週間当たり新規感染者数が二百万人を突破するさなかであった。コロナ禍で打撃を受けた世界経済は先行き不透明感が増している。

ASEANと中国が関係格上げ宣言
 東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国との対話関係の樹立三十周年を記念する特別首脳会議が二十二日、オンライン形式で行われた。中国の習近平国家主席は「包括的戦略パートナーシップを構築した」と述べ、関係格上げを正式に宣言した。シンガポールのリー・シェンロン首相も、「相互に有益になると確信」と歓迎する意向を示した。領海紛争を抱えるフィリピンやベトナムもあくまで平和的な解決をめざすべきと強調。習主席も「南シナ海を平和・友好・協力の海にしよう」と応えた。また二十六日にはアジア欧州会議(ASEM)の首脳会議が開催され、中国とASEAN諸国との関係が深化するなか、欧州各国も関係強化へ動くなど、世界の重心がアジアに移っている。

米、中国標的に兵力態勢見直しへ
 米国防総省は二十九日、米軍の世界的な展開についての見直しが完了したと発表した。概要では中国の海洋進出を口実にインド太平洋地域を「最優先」と位置づけ、豪州などの同盟国との協力強化を謳い、具体的には戦闘機や爆撃機のローテーション配備などを行うとしている。年明けには新たな国家防衛戦略を策定するとしており、その基礎となるもの。

米主導の石油備蓄放出
 バイデン米政権は二十三日、今後数カ月かけて戦略石油備蓄を五千万バレル放出すると発表した。日本や中国、インド、韓国、英国と協調して戦略備蓄原油の放出を実施する。この決定はバイデン政権がこの間、エネルギーの主要消費国に要請してきた。原油相場は十月に二〇一四年以来七年ぶりの高値をつけてきた。だが放出決定にも関わらず、相場は高止りしたままで、放出の効果は限定的。バイデン大統領は国内でのガソリン価格の高騰への批判とそれが来年の中間選挙に影響することを恐れ、産油国に増産を働きかけてきた。だが、石油輸出開発機構(OPEC)やロシアは依然として続くコロナ禍を理由に増産を受け入れないなど、消費国と産油国との亀裂が広がったままだ。

人民のたたかい

(11月20日〜11月29日)

 インドのモディ首相が農産物取引の自由化に関わる新法の撤廃を表明したことを受け、ニューデリーで十一月二十六日、数万人の農民が新法撤廃を歓迎するとともに、闘いの継続を訴える集会やデモを行った。同法は昨年九月に施行されたが、農民は取引自由化で従来の流通経路が崩れ、民間業者に農産物を安く買いたたかれるとの声が上がっていた。集会では農産物の最低価格保障の実現まで闘いを継続する姿勢が示された。
 ドイツ各地で二十六日、通信販売最大手のアマゾンに対して巨額の利益を労働者への賃上げに回すことなどを求めるストライキが展開された。このストは同社が「ブラックフライデー」に際し、大規模なセールを実施することに合わせたもの。物流センター前で抗議行動やストが行われ、労働者への賃上げや非正規雇用の撤廃が叫ばれた。フランスでも労働総同盟(CGT)が呼びかけ、正社員を含む二万六千人がストに参加した。
 国連が定めた「国際女性デー」に当たる二十五日、欧州や中南米などで、ジェンダー平等の実現や女性に対する暴力の根絶などを求める行動が行われた。スペインでは全国五十カ所以上で数万人がデモ行進を行い、「マチスモ(男性優位主義)から脱却を」との声を上げた。



日本のできごと

(11月20日〜11月29日)

過去最大の補正予算、軍事費も最大
 岸田政権は十一月二十六日、二〇二一年度補正予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は三十五兆九千八百九十五億円で補正予算としては過去最大で、財源として二十二兆五百八十億円の国債を新たに発行する。これにより二一年度末の国債残高は一千兆円の大台を突破する見通し。十八兆円を超えるコロナ感染防止対策が柱で、新たな給付金も盛り込まれたが、子育て世帯や住民税非課税世帯でなければ受け取れないなど、困窮した国民に行き渡らない。抜本・継続的対策には程遠いきわめて不十分な内容。また軍事費は補正として過去最大となる七千七百三十八億円を計上、当初予算の五兆三千四百二十二億円との合計は六兆一千億円と初めて六兆円を突破した。哨戒機や輸送機、地上配備型迎撃ミサイルなど兵器前倒し調達や沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設費用も盛り込んだ。巨額の借金で調達された予算が日米軍事一体化と軍拡に惜しみなく使われる一方、貧窮した国民が放置されるなど、到底許されない。

米協調の石油備蓄放出、効果には疑問
 岸田首相は二十四日、米国の要請を受けてインドや韓国、中国など六カ国と協調し石油の国家備蓄の一部を放出することを正式に発表した。石油暴騰に国際協調で対応する姿勢を示した形だが、放出量は国内消費量の数日分に過ぎず、「焼け石に水」となった。岸田政権は既に石油価格を抑えるための対策として元売りへの補助も決めているが、これも効果が疑問視されている。国には、当面して国民の生活と営業を守る直接的な対策と、脱炭素社会に向けて移行期を乗り切る国家戦略が求められている。

ベトナム首相来日、軍備品輸出で合意
 岸田首相は二十四日、ベトナムのファム・ミン・チン首相と首相官邸で会談した。岸田政権発足後、海外首脳の来日は初めて、国際会議の場を除けば対面での会談も今回が初。両首脳は安全保障協力を深め艦艇など防衛装備品を日本から輸出する方針を確認した。米国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国が来年「中国寄り」とされるカンボジアに交代することを見据えてASEAN取り込みに躍起となっているが、岸田政権も米国と歩調を合わせ中国対抗外交に血道を挙げている。

維新党大会、改憲などに改めて意欲
 日本維新の会は二十七日、大阪市で臨時党大会を開き、松井代表(大阪市長)を再任、馬場幹事長・衆議院議員を共同代表に指名した。あいさつで松井氏は「永田町の常識は国民の非常識、政治家の優遇・厚遇の是正は維新改革のひとつ」と強調、また馬場氏は改憲などを盛り込んだ「維新八策」などの実行を力説した。先の総選挙で「身を切る改革」を強調し議席を伸ばした維新だが、「改革」で国民の目線をそらしながら安倍・菅政権と自公与党を支え続ける政権補完勢力としての役割を果たし続けている。

共産党、「野党共闘」継続方針確認
 共産党は二十七日から第四回中央委員会総会を開き、先の総選挙で立憲民主党などと展開した「野党共闘」について、「最初のチャレンジとして歴史的意義」「政権協力の合意は国民に対する公約、参院選でもこの立場で臨みたい」(志位委員長)として、参議院選でも継続する方針を確認した。しかし自民党政治への明確な対抗軸を示さない野党共闘では勝利できないことは先の総選挙で示されており今後も「政権後代」の幻想をあおりあらゆる運動を野党共闘に流し込もうともくろむ共産党の罪は重い。

沖縄知事、辺野古の設計変更を不承認
 沖縄県の玉城デニー知事は二十五日、名護市辺野古の米軍新基地建設計画に関し、防衛省が申請した設計変更を認めないと防衛省沖縄防衛局に通知した。埋め立て予定地の「マヨネーズ並み」の軟弱地盤の調査や環境保全対策が十分でないと判断、「地盤の安定性にかかる設計で最も重要な地点で必要な調査が実施されておらず、環境保全に十分配慮した対策が取られていない。公有水面埋立法に基づき適正に判断した」と工事の中止を求めた。これに対し岸田政権は対抗手段を取る構えだが、建設計画があまりにずさんであることは明白で、完成の当てのない工事はただちに中止すべきだ。


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