ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2021年11月15日号 トピックス

世界のできごと

(10月30日〜11月9日)

COP26が開幕
 第二十六回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が十一月一日から英国で開幕した。会議では気温上昇を産業革命前より一・五度以内に抑える努力目標を定めた「パリ協定」の達成へ二〇三〇年目標を実現できる合意が得られるかが焦点。会議では百カ国超が温室効果ガスの一種の「メタン」排出量を三〇年までに二〇年比で三〇%削減する合意などがあった。一方、バイデン米大統領は中国の習近平国家主席の欠席について「大きな過ち」と非難し中国への対抗姿勢を示した。あらゆる分野で対中対抗を強めているバイデン政権だが、温暖化対策一つとってみても中国の関与なしには進まない。

RCEP、発効へ
 日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など十五カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が来年一月に発効することが三日、発表された。RCEPは世界全体の国内総生産(GDP)や貿易額で約三割を占める。RCEPは一二年にASEANの提唱で交渉が始まった。途上国が連携し米国や欧州連合(EU)に対抗する構想だった。なかでも中国の貿易総額は世界貿易機関(WTO)加盟以降、二十年で九倍に達し、世界貿易に占めるシェアは米国を上回る。中国も含めた巨大な自由貿易圏がアジアに誕生することになる。

危機はらむ米の量的緩和縮小
 米連邦準備理事会(FRB)は三日、コロナ禍を受けて二〇年三月から実施してきた量的緩和の縮小開始を決めた。物価上昇と景気回復の鈍化を受けた措置。物価上昇率は目標としていた前年比二%を超える一方、雇用者はコロナ以前より五百万人少ないなど、経済の先行きが不透明ななか、利上げに動けるか予断を許さない。欧州中央銀行(ECB)やカナダ中銀などが量的緩和の終了に動くなど、金融政策の見直しが世界的に広がるが、新興国からの資金流出などのリスクも指摘されている。国際通貨基金(IMF)が二一年の世界の実質成長見通しを引き下げるなど、世界経済をめぐる不透明感が増す中での緩和縮小は危機を加速化させるおそれがある。

バイデン政権、主要知事選で敗北
 米南部バージニア州の知事選で三日、野党・共和党の候補が勝利した。今回の知事選は来年十一月の中間選挙と位置づけられていた。同州は過去四回連続で民主党が勝利する「ブルーステーツ」の一つ。バイデン政権はインフラ投資法案などの議会承認に苦しみ、足元では物価上昇などで国民の不満が高まっていた。米議会上院では民主、共和両党の議席数は拮抗しているばかりか、民主党内での対立も解消されておらず、中間選挙でねじれが生じれば、バイデン政権はレームダック化する。

人民のたたかい

(10月30日〜11月9日)

 メキシコ・メキシコシティーで三日、フェミサイド(女性を標的にした殺人)による犠牲者の遺族たちが加害者への厳重な処罰と、女性を暴力から守る施策を求めるデモ行進を行った。統計によると同国では今年一月から九月末までに殺害された女性は七百六十二人で、前年同月比で五%増加している。
 英国・グラスゴーで六日、同地で開催されている第二十六回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に合わせて十万人が「パリ協定」の目標達成や温室効果ガスの削減などを求めてデモを行った。デモには気候変動の影響で土地を奪われた中南米の先住民やインドの農民、海面上昇で国土が水没する危険にさらされている南太平洋などの島しょ国の人びとが参加した。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんはCOP26は豊かな国々の政府の声しか聞いていないとして「明白な失敗だ。派手な目標を発表するPRイベントと化してしまった」と痛烈に批判した。
 オーストラリアでも同日、シドニーなど各地で気候変動対策を求める行動が行われ、メタンガスや石炭の削減に否定的なモリソン政権に抗議した。
 韓国・ソウルでも、市民団体が集会を開催、政府に気候変動対策を求めた。



日本のできごと

(10月30日〜11月9日)

総選挙、自民は議席減、立民・共産も
 第四十九回衆議院議員総選挙が十月三十一日、投開票された。自民党は議席を大きく減らしたが、かろうじて過半数は維持した。「野党共闘」で候補者一本化を進めた立憲民主党と共産党もともに議席を減らした。「改革」の旗を振り、独自性を打ち出した日本維新の会は大幅に議席を増やした。自民党政治への明確な対抗軸を示さない限り、野党は選挙でさえ勝利できないことが明白になった。

前政権継承の「新しい資本主義」提言
 岸田政権の新しい資本主義実現会議は十一月八日、政府が最優先で取り組む施策を整理した緊急提言をまとめた。安倍政権時代と同じ「成長と分配の好循環」を掲げ、科学技術立国の推進を前面に再生可能エネルギーの導入拡大などを進めるとし、経済安全保障についても言及した。「分配戦略」として賃上げ実施企業への支援策も盛り込んだ。主要にはわが国財界の要望するデジタル化と規制緩和策で占められており、安倍・菅政権の継承であることをあらためて示す内容となった。

中国にらみ独艦20年ぶり日本寄港
 ドイツ海軍のフリゲート「バイエルン」が五日、東京に寄港し海上自衛隊と関東南方の太平洋上で共同訓練を実施した。ドイツ艦艇の来日はおよそ二十年ぶりで、バイエルンと海上自衛隊の護衛艦との訓練は今年八月のアフリカ・ソマリア沖、九月のインド洋東方で行ったのに続き三回目。岸防衛相は「わが国への派遣は、地域の平和と安定に積極的に貢献するとのドイツの関与を示す上で重要」と強調した。米国の意も受け、岸田政権は欧州各国を中国包囲に関与させようと躍起になっており、今回の寄港と共同訓練もその一環だが、東アジアの軍事的緊張を高める危険な動きだ。

コロナ失政で巨額の血税が無駄に
 会計検査院は五日、国の二〇年度決算の検査報告を岸田首相に提出した。税金の無駄遣いなどを二百十件指摘、総額は約二千百八億円だった。コロナ対策で一九〜二〇年度に計上された国の予算計約六十五兆円のうち三割を超す約二十二兆円が未執行だった。また布製の「アベノマスク」は今年三月末時点で約八千二百七十二万枚(約百十五億一千万円相当)が倉庫で保管され、昨年八月〜今年三月の保管費は約六億円に上った。安倍・菅政権時代の悪政・失政のツケにより今なお国民の血税が日々ドブに捨てられていることが明らかになった格好だ。

自殺11年ぶり増、働く女性顕著
 岸田政権は二日、二〇二一年版自殺対策白書を閣議決定した。去年一年間に自殺した人は二万千八十一人と前年より九百十二人増えた。前年より増加したのはリーマン・ショック後の〇九年以来十一年ぶり。男性は十一年連続で減少した一方、女性は二年ぶりに増加した。特に職についている女性の自殺者は一九年までの五年間の平均と比べて三割近くも増加した。コロナ感染拡大で女性に多い非正規労働者の雇用環境悪化との関連は疑いようがなく、コロナ禍の被害・犠牲がより女性に押し付けられていることがあらためて示された形。政治の責任は重大だ。

国民、改憲で維新との連携強化へ
 国民民主党の玉木代表は四日、立民や共産との国会運営上の協力関係を解消すると発表した。国民・立民・共産三党の国会対策委員長はこれまで定期的に会談してきたが、今後は実施せず、国民は野党合同ヒアリングにも参加しない。一方で玉木代表は九日、日本維新の会との幹事長・国会対策委員長会談で憲法審査会開催など改憲論議活発化に向けた協力で一致した。国民は維新とともに政権補完勢力としての役割を果たす方向に進んでいる。とても労組が支持できる政党ではない。

またもリニア工事現場で事故
 JR東海は八日、リニア中央新幹線の長野県豊丘村のトンネル工区で土砂が崩れる事故があり作業員一人が負傷したと発表した。リニア工事では岐阜県中津川市で十月二十七日に作業員二人が死傷する崩落事故が発生したばかり。両現場はシールド工法による大深度地下トンネル工事で、二〇年十月に東京都調布市で起こった外環道トンネル工事の陥没事故と同じ。事前地盤調査と安全対策の不足している疑いが濃厚で、国の監督責任も問われる。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2021