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労働新聞 2021年11月5日号 トピックス

世界のできごと

(10月20日〜10月29日)

米大型歳出法案半減
 バイデン米大統領は十月二十八日、看板政策として掲げた子育て・教育支援や気候変動対策などの大型歳出法案を、当初の三・五兆ドルから一・七五兆ドル(約二百兆円)に半減する案を発表した。財政悪化や法人税増税に批判的な民主党内中道派に妥協し、連邦法人税率の大幅引き上げも断念した。財源は、大企業へ最低一五%の法人税を課すほか、富裕層への課税強化も想定している。歳出法案をめぐっては、民主党内の対立が激しく、調整が長引いている。当初案からの大幅後退に「左」派からの批判も強く、法案通過は容易でない。

G7、中国排除強化狙う
 主要七カ国(G7)は二十二日に開いた貿易相会合で、国際的な供給網から強制労働を排除する仕組みづくりで合意した。共同声明では、強制労働を防ぐため輸出入の制限措置などが「重要な手段」になるとした。米国は中国・新疆ウイグル自治区での強制労働の関与が「疑われる」衣料品などの輸入を禁止している。「強制労働排除」はお題目で、G7が一致して、証拠もなく検証もしないままウイグルでの「強制労働」を口実にして中国を排除しようというのが真の狙いである。

対立望まぬASEAN
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は二十六日から三日間、首脳会議を開き、米中日などと個別のオンライン会議を連続して開いた。二十七日には、東アジア首脳会議(EAS)が開かれた。バイデン氏は中国と対抗してASEANへの関与強化を鮮明にし、五年ぶりに会議に出席した。ASEAN各国は米国の復帰を歓迎する一方、米中の対立激化を懸念している。AUKUSについて、マレーシアのイスマイサブリ首相が「軍拡競争を招きかねない」と批判するなど核拡散、軍拡競争に対する根強い警戒が示された。またバイデン氏は台湾問題に「極めて強固に」関与すると強調したが、シンガポールのリー・シェンロン首相は「ASEAN各国は米中どちらか一方につくことは望んでいない」と述べて米国をけん制した。

中国、固定資産税を導入
 中国全人代常務委員会は二十三日、政府が固定資産税にあたる不動産税を一部都市で導入することを認めた。中国にはこれまで土地を対象に含めた固定資産税はなかったが、高騰する不動産をめぐる格差是正を促すことが目的。課税対象は住宅とオフィスビルなど非居住用不動産で、農村の宅地は含まない。中国の土地は国有のため、土地使用権と建物が課税対象になる。国務院が今後、具体的な実施都市を決める。試験期間は五年で試験導入の結果を見極めて、法制化する方針。「共同富裕」の実現に、格差是正の機能がある新税が必要との判断がある。

人民のたたかい

(10月20日〜10月29日)

 韓国・民主労総が二十日、ソウルなど全国十四地域でゼネラルストライキと集会を開催した。民主労総は、五人未満の事業所での差別・非正規職の撤廃とすべての労働者の組合活動権の獲得、産業転換期の雇用国家責任制度の導入などを求めている。
 ドイツスウェーデンなど各地で二十二日、「未来のための金曜日(FFF)」の呼びかけで若者たちの気候デモが行われた。ベルリンでは一万人以上がデモ、集会に参加し、連立政権樹立交渉中の社民党、緑の党、自民党の本部前で気候変動対策に取り組むよう要求した。また、二十九日にはCOP266を前に英国ロンドンの金融街でもデモが行われた。
 コロンビアの労働者中央連合(CUT)や教員組合などが二十日、医療部門の労働条件改善や教員の給与引き上げ、平和・民主主義、汚職反対などを要求して、各地でデモを行なった。
 エクアドルで二十六日、労働者と低所得者層向けの経済政策、燃料価格の凍結などを要求して、労働者統一戦線(FUT)、人民戦線(PP)などがラッソ大統領への抗議デモを呼びかけ、学生連合や農民全国連盟、黒人、先住民組織などが参加し、首都キトなど各地でデモを行なった。先住民組織は道路封鎖を行い燃料高騰に抗議した。



日本のできごと

(10月20日〜10月29日)

新政権発足後初の国政選挙で敗北
 岸田政権発足後初の国政選挙となる参議院議員補欠選挙(山口県選挙区・静岡県選挙区)が十月二十四日に投開票された。いずれも自民党の参議院議員の辞職による選挙だが、静岡県選挙区では立憲民主党と国民民主党が推薦する無所属の新人候補が当選、与党が一敗を喫した。菅前政権が各種大型選挙で敗北を続けるなど有権者が自公政治への不満を強めていたことを受け、自民党は看板を取り換え目先を変えて新政権で挑んだ国政選挙だったが、新型コロナウイルス感染拡大への対応などの悪政・失政への根深い国民の怒りと不満が示された結果となった。

物価高と景気後退、「正常化」遠く
 総務省は二十二日、九月の消費者物価指数を発表した。変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が九九・八と前年同月に比べて〇・一ポイント上がり、一年六カ月ぶりにプラスとなった。品目別ではエネルギーが全体で七・四上昇、灯油は二〇・二、ガソリンは一六・五上がった。コロナ禍終息後の景気回復期待からの世界的な需要急拡大に加え、先進国の金融の異次元緩和が背景。また財務省は二十七日、十月の経済情勢報告で全体の景気判断を一年半ぶりに引き下げた。コロナ禍でのサプライチェーンの混乱に伴う自動車生産の減少などが影響した。二十五日には東京や大阪など五都府県の飲食店に対する営業時間短縮の要請が解除されるなど、国内のコロナ感染は鎮静化傾向だが、世界的な経済「正常化」は遠く、国民生活を守る国の責任は重い。

生活困窮相談、コロナで3倍強に
 厚労省は二十五日、自治体や社会福祉協議会などの自立相談支援機関に寄せられた新規の相談受付件数が、二〇二〇年度は前年度比三・二倍の七十八万六千百九十五件(速報値)だったと検討会で公表した。月別に見ると最初に緊急事態宣言が発令された四月が最多だった。生活困窮者の家賃を補助する住居確保給付金の支給額は前年度比五二・八倍の三百六億円に伸び、百倍以上となった自治体もあった。同機関は全国に千三百カ所あるが、検討会では「給付金の申請など殺到する案件の対応に追われ個別伴走的な支援ができない」などの課題も示され、抜本的な支援体制強化の必要性が示された。

過労死白書、半数が直前に精神疾患
 岸田政権は二十六日、二一年版の過労死等防止対策白書を閣議決定した。過労死や長時間労働が懸念される業種のうち「自動車運転従事者」「外食産業」の二分野を実態調査、コロナの影響で「業務に関するストレスや悩みが増えた」と答えた人が運送業労働者で二九%、外食産業で三六%に及んだ。また一二〜一七年度にうつ病など精神疾患を発症し労災認定された自殺者四百九十七人を分析、発症から死亡までの日数は「六日以下」が二百三十五人(四七%)と最多だった。コロナ禍の影響の大きさと危険性、特にうつ病発症の早期発見の重要性があらためて示されたもので、国の対策が急がれる。

エネ計画決定、原発・石炭依存継続
 岸田政権は二十二日、国のエネルギー政策の方向性を定める第六次エネルギー基本計画を閣議決定した。計画改定は一八年に安倍政権が決めた五次計画以来。計画では「原発の依存度を低減」したものの「重要なベースロード電源」と位置付け、三〇年度の総発電量に占める原子力発電の比率を二〇〜二二%とするなど前計画を踏襲、一九年度の原発比率約六%からの原発依存の大幅拡大を盛り込んだ。また大量のCO2を大量排出する石炭火力発電については一九%程度を見込むなど、現在国内で九件の大規模な石炭火力の建設を進め、インドネシアなど海外への石炭火力輸出も推進している現状を追認した。原発・石炭に固執する姿勢に国内外から批判が集中している。

河井元法相の実刑確定も事件解明遠く
 一九年七月の参議院議員選挙広島選挙区で計百人に計約二千八百七十一万円を配ったとして公職選挙法違反(加重買収など)の罪で実刑判決を受けた元法相の河井克行被告が二十一日、控訴を取り下げ、懲役三年追徴金百三十万円の有罪判決が確定した。しかし買収資金の出所などの真相は未解明のままだ。自民党広島県連会長を務める岸田首相は再調査について「必要であれば説明する」などと消極姿勢に始終しているが、幕引きは許されない。


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