ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2021年10月25日号 トピックス

世界のできごと

(10月10日〜10月19日)

G20アフガン会議、支援妨害する米国
 イタリアのドラギ首相の主催で、アフガニスタン情勢に関する主要二十カ国・地域(G20)の特別首脳会議が十月十二日、オンライン形式で行われた。会議では米軍敗走後のアフガン支援策について議論が交わされ、欧州連合(EU)が十億ユーロ(約千三百億円)を拠出することなどを表明した。しかし、米国などはタリバン政権を敵視、あくまで国際機関を通じた「支援」に固執した。一方、中国は「一方的な制裁は解除すべき」とタリバン政権の資産の凍結を続ける米国の姿勢を批判した。米国のかたくなな姿勢は人道支援に向けた国際協力を妨害するものだ。

IMF、世界経済見通し下方修正
 国際通貨基金(IMF)は十二日、秋季の「世界経済見通し」を発表した。それによれば、二〇二一年の成長率予測を前回七月時点の予測より〇・一ポイント低い五・九%へと下方修正した。特に米国の成長率は、先進七カ国(G7)の中で最も大きく一・〇ポイント引き下げ、六・〇%とした。「新型コロナウイルスの危機によって世界はいちだんと分断され、この分断はこれまでの予想以上に深い」と指摘している。

米、ひとまずデフォルト回避
 米政府の借入金の限度額を定めた「債務上限」を十二月上旬まで引き上げる法案が十四日、成立した。債務上限が復活した八月以降、米政府は借金を増やせなくなり、今月十八日には資金繰りが行き詰まり、米国債がデフォルトに陥る可能性が高まったため、対立していた与野党が問題を先送りすることで合意した。「隕石のように米経済を直撃」(バイデン大統領)との悲鳴が上がっていたが、辛うじて回避した格好。民主党多数の下院では、債務上限の適用を二二年末まで除外する法案を可決していたが、上院では共和党の勢力が強く、民主党内でも内部対立が発生している。議会は二カ月後までに債務上限問題に改めて対応する必要があるが、与野党の溝は深く、年末に危機が再燃するおそれがある。

サイバー攻撃めぐり中ロに押しつけ
 米バイデン政権は十三日、「ランサムウェア」(身代金ウイルス)と呼ばれるサイバー攻撃対策をめぐって日本や欧州など約三十カ国とEUの担当大臣らが参加するオンライン会合を開催した。今回の会合はホワイトハウスの国家安全保障会議が主導し、「身代金」に使われる仮想通貨の悪用防止、犯罪者集団の妨害や訴追、外交的対策など六セッションで構成し、対策強化を議論した。米国などは、ランサムウェア攻撃がロシアや中国などを拠点としていると決め付けているが、今年四月に起きたイランの核関連施設へのサイバー攻撃はイスラエルの関与が当然視されており、あらゆる責任を中ロに押し付ける米国のダブルスタンダードは許されない。

人民のたたかい

(10月10日〜10月19日)

 米国のイリノイ州などで十月十四日、トラクター大手のディアの労働者約一万人が賃上げを求めてストライキを行った。労働者は全米自動車労組(UAW)に参加、十四カ所の工場でストが行われた。
 オーストラリアのシドニーで十五日、学生などが抜本的な気候変動対策を政府に求める「気候ストライキ」を決行した。今月下旬に英国で開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けて、政府に二酸化炭素の排出について「三十年までに実質ゼロ」の実現を求めた。
 米国ハリウッドなどで映画・テレビ産業の裏方として働く労働者約六万人が映画会社や動画配信大手などに対して待遇改善を求めストを準備していたが、十六日に制作者側が労働者の要求を受け入れ、ストは回避された。労働者は米国やカナダのカメラクルーやスタジオセット、メイクの担当者らが加盟する「IATSE」の組合員。
 米国のホワイトハウス前で十一日、先住民団体のメンバーが同日をコロンブスが米大陸を「発見」した記念日とされていることに抗議、デモを行った。参加者は先住民に対する暴力と収奪の歴史を振り返り、先住民を称える日に認定し直すことを迫った。


日本のできごと

(10月10日〜10月19日)

総選挙公示、外交・安保で対立なし
 第四十九回衆議院議員選挙が十月十九日、公示された。投開票は三十一日。野党五党は全国二百八十九の小選挙区のうち七割以上の二百十三選挙区で候補を一本化、共産党は立憲民主党に政権が交代しても閣外協力にとどまる合意を交わすなどの譲歩を重ねて「野党共闘」を進めた。だが立民は「健全な日米同盟を基軸とした現実的な外交・安全保障」を掲げ、外交・安保で与党と対立しないことを明言、政権交代が達成されても国の進路をめぐる安倍・菅政権時代の政治の抜本的転換は期待できない。

自民公約、岸田「公約」は完全に霧散
 自民党は十二日、総選挙の政権公約を発表した。経済安全保障を大きな一つの柱として掲げるなど中国対抗色を強める米戦略への迎合を強める一方、岸田首相が自民党総裁選で訴えた子育て世帯への教育費・住居費の支援強化、党改革などは盛り込まれなかった。岸田氏は金融所得課税の強化については「当面見送り」を明言、また「令和版所得倍増計画」については「所得倍増は二倍になる意味ではない」(山際経済財政・再生相)との珍説明も。岸田氏の総裁選での訴えは事実上国民に対する「公約」だが、総選挙前に早くも跡形もなく霧散した。

新資本主義会議発足も「分配」は後退
 岸田政権は十五日、首相が掲げる「成長と分配の好循環」の具体策を議論する「新しい資本主義実現会議」を設置した。菅前政権が設けた成長戦略会議を廃止して新設、会議のメンバーとなる有識者十五人のうち七人に女性を選出するなど、前政権からの「変化」を強調した。だが「まずは成長戦略、順番を間違えてはいけない。分配できる原資である成長がなければいけない」(山際経済財政・再生相)などと早くも「分配」は後回しに。安倍・菅政権時代と基本姿勢で変化がないことをここでも露呈させた。

新たな米価下落対策、効果には疑問符
 農水省は十二日、二年連続の米価の大幅下落を受けた政府の新たなコメの需給対策を発表した。二〇二〇年産の在庫のうち十五万トンについてコメの出荷を繰り延べる特別枠を設置、長期保管と販売を支援する。しかし価格下落への歯止め効果は未知数なうえ、来年には古古米として安く市場に出回り新米の需要を奪う。買い上げによる市場からの隔離など実効ある対策とコメ政策の抜本見直しが必要だ。

児童生徒の自殺・不登校が過去最多
 文科省は十三日、児童生徒の問題行動・不登校についての調査結果を発表した。全国の小中学校で二〇年度に自殺者は初めて四百人を超えて四百十五人に、不登校者は十九万六千百二十七人で過去最多となった。いじめは過去最多となった前年度より減少したが、パソコンや携帯電話などを使ったいじめは増加した。文科省は「新型コロナウイルスの感染拡大が子供の生活に変化を与えた」と分析するが、安倍・菅政権の失政のしわ寄せであることは間違いなく、対応が急がれる。

コロナ禍で飲食1割閉店、個人店多く
 コロナ感染拡大以降、全国の飲食店の閉店が全体の一割に当たる四万五千店に上ることが十七日、日本経済新聞社などの調査で分かった。感染拡大が始まった二〇年一月末には約四十五万八千店が登録されていたが、二一年八月末で四十一万三千店に減った。また同社が今年四〜六月に主要外食企業五百五十七社に実施した調査では、二〇年度の閉店数は五千二百三十店で、今回の調査の閉店数の多くが大手ではなく個人店であることがうかがえる。国や自治体の支援策の不十分さを示すもので、無策・失政の結果だ。

巨額血税投入でTSMC日本工場建設
 半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は十四日、日本に新工場を建設すると発表した。ソニーグループとの合弁事業で熊本県菊陽町の工場隣接地が候補。「経済安全保障」を理由にした日本政府からの要請に応えるもので、生産された半導体の日本国内への優先供給などを条件に工場建設費の半分程度が補助される。五千億円規模の血税が投じられる見込みだが、最先端でもない工場誘致で国内産業の競争力強化に資するはずもなく、中国対抗の意識ばかりが反映した愚策となる公算が高い。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2021