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労働新聞 2021年10月15日号 トピックス

世界のできごと

(9月30日〜10月9日)

米中高官対話継続を確認
 米国のサリバン国家安全保障担当大統領補佐官と中国の楊潔チ共産党政治局員が十月六日、スイスで六時間にわたって会談した。米国は人権問題や台湾、南シナ海などで中国に懸念を表明したが、楊氏は「内政干渉をやめるよう要求する」と譲歩しない姿勢を示した。議論は平行線をたどったが、対話を継続する方針では一致し、年内にオンライン形式で米中首脳会談を行うことでも原則合意した。またバイデン政権は四日、対中通商戦略を発表。八日にはタイ米通商代表と中国の劉鶴副首相が電話会談し、バイデン政権発足後初の本格的な貿易協議を行なった。米中ともに国内対策から緊張の激化は当面抑制しようという思惑がある。

米軍が台湾軍訓練を否定せず
 米国防省は七日、米軍が台湾で一年間にわたり台湾軍を訓練しているとの米紙の報道を認めた。米紙によると米海兵隊や特殊作戦部隊が台湾で活動、ローテーション方式で台湾の陸上と海上部隊の訓練を行っていると報道された。元米軍高官は「米軍は長年にわたって台湾軍の訓練を秘密裏に行ってきた」と明かした。国防総省が台湾での訓練を否定しない方針に転じたのは、米軍の台湾駐留に道を開くもので、米国の台湾防衛への関与を示して中国をさらにけん制しようというものだ。

米核弾頭保有数公表
 米国務省は五日、トランプ前政権が非公開としていた保有核弾頭数を四年ぶりに公表した。米軍が二〇年九月時点で保有する核弾頭数は、作戦配備・作戦外貯蔵のものを含めて三千七百五十発で、最多だった東西冷戦期と比較すると大幅に削減されたが、依然として大量の核弾頭を保有していることが明らかにされた。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の統計によると、退役のものを含めた保有核弾頭数は米国が五千五百五十発、ロシアが六千二百五十五発保有し、世界を威圧している。


世界で水不足深刻化予測

 世界気象機関(WMO)は五日、二〇五〇年に世界で五十億人以上の水資源の確保が困難になる恐れがあるとの予測を発表し、国連気候変動枠組条約第二十六回締約国会議(COP26)で対策を講じるよう各国首脳に求めた。WMOによると、一八年にはすでに三十六億人が水を十分に確保できない状態にあった。地球上の水のうち使用可能な淡水はわずか〇・五%で「気温の上昇が世界的な降水量を変化させ、食糧安全保障や人間の暮らしや健康に大きな影響を与える」と警告した。水資源をめぐる国家や地域間の対立・紛争が一〇年以降増加している。

人民のたたかい

(9月30日〜10月9日)

 米国食品製造大手のケロッグ社の労働者千四百人が五日、全米各地の工場でストライキを実施した。労組は医療保険、退職手当、有給休暇などの拡充を求めているが、会社側はメキシコへの工場移転などをほのめかして労働者の要求に応じていない。
 人工妊娠中絶の権利を訴えるデモが二日、米国の六百カ所以上で行なわれた。デモは女性人権団体が九十以上の団体と提携して開催された。米テキサス州では先月、ほぼ例外なく中絶を禁止する法律が施行された。トランプ前大統領が保守派の裁判官を送り込んだ連邦最高裁が施行差し止めを求める訴えを退けため、各州で中絶をめぐる対立に拍車がかかっている。
 ブラジル各地で二日、ボルソナロ大統領の弾劾(だんがい)を求めるデモが展開された。首都ブラジリアでも、デモ隊が物価上昇に抗議するプラカードを掲げて国会議事堂前へ向かった。ブラジルでは食品やガソリンの価格が高騰し、失業者が千四百万人を超えた。新型コロナによる死者は米国に続いて世界で二番目に多い。
 インド・ウッタルプラデシュ州で三日、新農業関連法に対する農民の抗議デモで衝突が発生、少なくとも八人が死亡した。インドでは先週、新農業関連法が成立して一年を迎えたが、農民の反対運動は粘り強く続けられている。インドの総人口十三億人のうち三分の二が農業に従事している。


日本のできごと

(9月30日〜10月9日)

新政権発足、米追随と中国敵視さらに
 自民党の岸田文雄総裁が十月四日、衆参両院の首相指名選挙で第百代の内閣総理大臣に選出され、岸田政権が発足した。新閣僚は「論功行賞」で主要派閥の細田派や麻生派を多用、安倍・菅政権と実質的に大きな変化はないことを示した。しかし、経済安保担当相や人権問題担当補佐官を新たに設置、これについて「普遍的な価値を共有する国と連携」と説明し、また敵基地攻撃論や国家安保戦略改定にも言及するなど、米アジア戦略に沿った中国敵視の軍事・外交政策を前政権以上に進める思惑があからさまな危険な陣営となった。しかし野党第一党の立憲民主党は、外交・安保政策では政権を競い合う主要政党間の中心的な対立軸にするべきでないとの立場。これでは岸田政権の危険な国のかじ取りをとめることはできない。

初所信表明演説、「変化」演出に必死
 岸田首相は八日、国会で就任後初の所信表明演説を行った。安倍・菅政権時代に繰り返し使われた「改革」を一度も使わず「分配」を十二回も連呼、「新しい資本主義」を掲げて変化を印象付けようと腐心した。しかし「大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進に努める」などと、安倍政権時代の「三本の矢」そのままの経済政策を掲げ基本政策は継承、変化を掲げつつもコロナ失政などの検証や反省も見られなかった。菅政権時代に大型選挙で敗北が続き、総選挙を前に自公与党への国民の怒りや不満におびえ「変化」演出に必死だが、悪政失政はごまかしようがない。

公明公約、「デジタル」など加憲
 公明党は七日、次期衆院選の公約を発表した。政権与党としてのコロナ失政にはシラをきり、〇〜十八歳の国民への一律十万円給付や困窮者の住宅の確保や家賃の支払いを補助する住宅手当の新設を掲げた。またデジタル人権保障や国の環境保全責務規定の加憲を検討するとし、マイナンバーカード普及へ一人数万円の新マイナポイント制度創設も訴えた。改憲や国民管理・監視の強化などの支配層の願望実現へ、「デジタル」「環境」などのソフトな粉飾で率先して加担する、この党らしい卑劣な姿勢が全面に出た公約だ。

日英円滑化協定初交渉、準同盟めざす
 日英両政府は七日、自衛隊と英国軍の共同訓練などに関する円滑化協定(RAA)の締結に向けた初交渉を実施した。円滑化協定は日米安全保障条約に基づく在日米軍の地位協定に相当するもので、日本にとっては常時駐留しない部隊訪問に関する協定は初。日本政府は豪州との間でも同協定締結で大筋合意しており、両国との間で締結されれば米英豪の三国間の軍事同盟(AUKUS)に「準加盟」となる。AUKUSは実質的には中国に対抗する軍事的枠組みであり、これに参加するなど論外の愚行だ。

日米英が空母参加の訓練で中国挑発
 海上自衛隊は二、三日、米海軍の原子力空母二隻や英海軍空母一隻も参加する六カ国の大規模な共同軍事訓練を沖縄南西の海域で実施した。オランダ、カナダ、ニュージーランドも参加、日本のヘリコプター護衛艦一隻も加えた空母四隻が展開する異例の訓練となった。四日には沖縄沖から南シナ海に移動し台湾を取り囲むようにして訓練が行われるなど、強く中国をけん制した。米英日などは「中国機が台湾の防空識別圏に侵入」などの難クセを付けているが、中国近海で軍事的圧力を強めているのは米英日の側であり、危険な挑発は許されない。

沖縄への機動隊派遣、高裁で「違法
 沖縄県東村高江周辺の米軍ヘリパッド建設に愛知県警が機動隊を派遣したのは違法として、隊員の給与など約一億三千万円を当時の県警本部長に賠償させるよう愛知県に求めた住民訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は七日、派遣手続きの違法性を認め、約百十万円の賠償を命じた。判決では、派遣決定が県警本部長の専決で処理された点を問題視、違法だと判断した。また警察官による検問や抗議活動の撮影、機動隊員による市民の排除、車両やテントの撤去などについても法的根拠に裏付けられた措置であったかどうか疑問を呈した。安倍政権時代から始まった基地建設工事強行と反対運動封じ込めが司法も見逃せないほど異常で違法な蛮行であることが示された。


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