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労働新聞 2021年10月5日号 トピックス

世界のできごと

(9月20日〜9月29日)

日米豪印(クアッド)初の対面会合
 米国と日本、豪州、インドによる「QUAD(クアッド)」の初の対面会合が九月二十四日、ホワイトハウスで開かれた。四カ国の首脳は会合後に「インド太平洋の安全と繁栄のため、自由で開かれた、ルールに基づく秩序を促進する」とする声明を発表し、特に同地域にある島しょ国への支援も打ち出した。また、首脳会合を毎年開催することも決めた。米バイデン政権は、経済面ではクアッドを中心として、軍事面では米英豪の「AUKUS(オーカス)」を中心として対中国包囲網の構築に狂奔している。

独総選挙で社民党第一党
 十六年間に亘って政権を担ったメルケル首相退任後の新たな政権を決めるドイツ連邦議会選挙(下院、基本定数五百九十八)が二十六日行なわれた。メルケル政権で連立を組む社会民主党(SPD)が、メルケル氏が所属するキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)をわずかに抑えて第一党となった。だが、どちらも単独で過半数を獲得できず、第三党となった緑の党や第四党の自由民主党(FDP)との連立が必要となるが、政策では隔たりがあり交渉は難航する。また、交渉次第では大連立の可能性もある。欧州の中心的存在であるドイツの新政権の行方は、EUの今後の進路を左右する。

中国が仮想通貨を全面禁止
 中国当局は二十四日、ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の決済や採掘(マイニング)、取引情報の提供など関連サービスを全面的に禁止すると発表した。中国人民銀行(中央銀行)や銀行、証券監督当局、国家外為管理局など十省庁が、「違法」な仮想通貨活動を一掃していくと表明、刑事責任も追及する。海外の取引所がインターネットを介して中国国内でサービスを提供することも違法とする。「デジタル人民元」の本格的な運用を前に、金融リスクを抑えるため取り締まりをいちだんと強化する方針である。デジタル人民元の本格運用は、ドルによる経済制裁など米国の世界支配に大きな風穴を開ける可能性がある。

アジア新興国で貧困層拡大
 世界銀行は二十八日、コロナ感染拡大で就業できない人が増えるため、中国を除く東アジア・太平洋地域の新興国の貧困層が今年二年連続で増加し、高止まりすると発表した。また、教育機会の減少で若い世代が生涯に得られる収入が三・八%減る恐れがあるとも警告した。世銀が発表した同地域の経済見通しの中で、二十三カ国約二十一億人のうち、一日当たりの所得が五・五ドル(約六百円)以下の貧困層が十九年の二億五千九百万人から、二十年の二億六千四百万人、二十一年も二億六千六百万人と二年連続で増加する。先進国と比較して多くの新興国でのワクチンの普及が遅れ、経済を悪化させている。コロナ前まで高成長を続け、貧困を年々減らしてきたアジアの新興国が「二十一世紀に入って初めて、低成長と不平等拡大に同時に直面している」とも指摘した。コロナの長期化は先進国と新興国の格差、矛盾を拡大している。

人民のたたかい

(9月20日〜9月29日)

 パナマで、船舶会社MEARSKが物流活動を特権的に独占していることに対して、労組が二十三日、ストライキに入り主要ルートを封鎖した。
 ブラジル・サンパウロで、二十三日、ホームレス労働者運動(MTST)が飢餓やインフレ、失業などに抗議するため証券取引所を占拠した。
 コロンビア全国ストライキ委員会は二十八日、デューケ大統領が進める税制改革への反対することや、貧困層への生活支援、公衆衛生の強化、公立大学無償化などを要求する街頭行動を全国で再開した。
 インドネシア・ジャカルタで二十七日、全インドネシア学生評議会(BEM・SI)が、汚職撲滅委員会(KPK)の権限を大幅に縮小する法改正に反対し、汚職撲滅委員会が入居するビル前で大規模デモを行なった。
 ウルグアイ国家燃料管理局労働組合(FANCAP)はセメント産業の公営企業の民営化に反対するストライキを実施した。


日本のできごと

(9月20日〜9月29日)

自民新総裁に岸田氏、基本政策は継承
 菅首相の退陣表明を受けた自民党の総裁選が九月二十九日に行われ、岸田前政調会長が、河野規制改革担当相や高市前総務相、野田幹事長代行を破り新総裁に選出された。岸田氏は臨時国会で新首相に指名される見込み。岸田氏は総裁選で「分配」を強調、「新自由主義からの転換」などとして数十兆円規模の経済対策など生活困窮者への支援策を強化すると掲げていたが、安倍前政権から菅政権までの約九年のうち八年近く重要閣僚や自民党幹部を務め、基本的な内外政策は安倍・菅政権の継承を事実上表明している。国民大多数のための政治は全く期待できない。

宣言解除、「首相任期内」ありきか
 菅政権は二十八日、二十七都道府県に出されていた新型コロナウイルス感染症対策の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を三十日の期限をもってすべて解除することを決定した。飲食店に出されていた酒類提供の一律停止(宣言地域)などの営業制限について政府は段階的に緩和する方針。会見で菅氏は「コロナとの戦いに明け暮れた」などと任期中を振り返ったが、東京五輪開催強行などで感染爆発や医療崩壊を招いた責任には触れなかった。今冬に感染が急増する「第六波」を警告する専門家は多く、無責任な政権が決めた「首相任期内ありきの宣言解除」で国民の生命に犠牲を強いる事態は許してはならない。

日米豪印首脳会議、菅氏「台湾」強調
 菅義偉首相は二十四日、日米豪印首脳会議に参加した。菅氏は「台湾海峡の平和と安定が重要」と強調、また在任中に初めてオンライン協議のあった日米豪印首脳の枠組みが毎年開催の定例会議となったことを「完全に定着した」と成果として誇った。四月の日米首脳会談の声明で「台湾」を明記し中国の内政に干渉するなど、「反中国同盟」強化に踏み込んだ菅外交の負の遺産を打ち壊すことが求められている。

中台がTPP加盟申請、日本政府当惑
 台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)に加盟申請したことに対し、菅政権は二十四日、「基本的価値を共有し、緊密な経済関係を有するきわめて重要なパートナー」(加藤官房長官)などと歓迎した。菅政権は中国の加盟申請に対しては慎重姿勢に始終、台湾と対応に差をつけている。そもそもTPPは台頭する中国を念頭に米国がアジアでの経済ルールづくりを主導する狙いから呼びかけた枠組みだが、米国は関税引き下げに対する国内の反発からトランプ前政権時代に離脱、「主」なき後は日本が先頭で立ち上げにこぎつけた。攻守が入れ替わった構図に日本政府は当惑するが、シンガポールやマレーシア、ニュージーランドなどは中国の参加を歓迎している。いまだに米国復帰を待ち望む対米追随姿勢では日本はアジアと共存共栄の進路を切り開くことはできない。

立民が公約「健全な日米同盟」掲げる
 立憲民主党は二十四日、総選挙で政権公約に掲げる外交・安全保障政策を発表した。「健全な日米同盟を基軸」とする方針を掲げた上で、中国公船の領海侵入が続く沖縄県・尖閣諸島を防衛するとして、領域警備と海上保安庁の体制強化に向けての法整備を進めることを盛り込んだ。対米・対中姿勢は自民党とほぼ変わりなく、アジアの平和と共存に背を向ける外交・安全保障政策は到底支持できるものではない。しかし共産党は立民との党首会談で総選挙で立民が政権を取った場合の「限定的な閣外からの協力」で一致、「市民と野党の共闘を大きく発展させる画期的な内容」(志位委員長)と自賛した。総選挙での野党協力は労働者・国民が期待できるものではない。

デジタル庁幹部接待も氷山の一角
 平井デジタル相は二十四日、デジタル庁事務方ナンバー2の赤石デジタル審議官を減給処分とする処分を発表した。内閣官房イノベーション総括官だった昨年九〜十二月に三回会食しNTTから計約十二万円の接待を受けたことが発覚したことへの対応。しかしうち二回の会食には平井デジタル相も同席するなど問題の根は深く、形式的な処分でお茶をにごしたとの批判は免れない。同庁は九月の新発足前から官民癒着や便宜供与の危険性が指摘されていたが、今回の発覚は氷山の一角との疑いは濃厚だ。


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