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労働新聞 2021年9月25日号 トピックス

世界のできごと

(9月10日〜9月19日)

「9・11」から20年
 米同時テロから二十年を迎えた九月十一日、ニューヨークで追悼式典が開かれた。バイデン大統領は「団結こそ米国の最大の力」などと国内の結束を呼びかけるとともに、同盟国との関係強化を叫んだ。だが、「9・11」への報復として行ったアフガニスタンへの侵略戦争で無残な敗走を強いられた。また、米軍がカブールで八月に行った無人攻撃機による攻撃が誤爆であったことが暴露されるなど、「再び世界の先頭に」と強がるバイデン大統領に冷や水が浴びせられた。

地域に亀裂もたらす「AUKUS」
 米英豪の三国は十五日、インド太平洋地域における新たな安保の枠組み「AUKUS(オーカス)」の創設を発表した。米国は日米豪印四カ国の協力枠組み「クアッド」と併せて、中国への対抗戦略の柱にすえる方針だ。これに伴い、米英は豪州への原子力潜水艦の導入支援、人工知能(AI)やサイバー、量子技術などの分野でも協力する方針。豪州がフランスとの次期潜水艦の共同開発計画を破棄したことで、フランスが「背中から刺された」(ルドリアン外相)と猛反発。駐米、駐豪両大使を召還した。ニュージーランドのアーダーン首相は「豪州が導入する原潜について領海に入ることを許さない」と述べた。マレーシアのイスマイルサブリ首相もアジア太平洋地域における核軍拡競争をあおると批判、インドネシアも同様の姿勢を示した。

EU初のインド太平洋戦略
 欧州連合(EU)は十六日、初めてとなる「インド太平洋戦略」を発表した。デジタル経済の推進、気候変動対策、災害対応などで友好国と協力するほか、共同演習などを通じて海洋安全保障を確保する。そして、中国の海洋進出をけん制、台湾との関係強化も打ち出した。EUは四月の外相会議で同戦略の策定方針で合意し、具体化に向けた協議を進めてきた。同地域に海外領土を持つフランスが議論を主導し、ドイツも八月にインド太平洋地域に軍艦を派遣するなど、この地域への関与を強める姿勢を示している。「航行の自由」などで米国と一歩調を合わせた格好だが、EU内には、対中関係を重視する声もあるなど、加盟国間の温度差も大きい。また、豪州の原潜導入をめぐって、フランスが米英に猛反発しており、EUも戦略的自立を強めている。米バイデン政権が狙う対中包囲網の形成は壁にぶち当たっている。

中央アジアで影響力強める中ロ
 中国、ロシア、インドなどが加盟する上海協力機構(SCO)は十七日、タジキスタンで首脳会談を開き、アフガン情勢を中心に協議を行った。合意文書ではアフガンにおけるすべての民族・宗派などが参加する政権樹立の必要性や、「テロ対策」を口実とした内政干渉を容認しないことなどが盛り込まれた。同時にSCOと「集団安全保障条約機構」(CSTO)の合同会議も開くなど安保面での連携も進んだ。またイランのライシ大統領も参加、正式加盟への手続きが開始された。アフガン敗走に見られる米国の支配に大きな風穴が開く中、中央アジアにおける中ロの影響力が高まりを見せている。

人民のたたかい

(9月10日〜9月19日)

 ドイツのベルリンで十一日、家賃の高騰に抗議するデモが行われた。ベルリンでは昨年、社民党などの連立市政が「家賃上限法」を施行したが、連邦裁判所が「無効」を宣言していた。ドイツでは二十六日に連邦議会選挙が行われることを踏まえて、デモ参加者は連邦レベルでの家賃規制の必要性を訴えた。
 アルゼンチンで十六日、かつての軍政の下で高校生が拉致・弾圧された「鉛筆の夜」事件から四十五年を記念して真相究明を求めるデモが各地で行われた。参加した数百人の人びとは「弾圧を繰り返すな」などと書かれたプラカードを掲げ、デモ行進した。
 韓国のソウルで十五日、コロナ禍における激務と人材不足に抗議するデモが行われた。民主労総に結集する医療労働者は「本当に厳しい地域は看護師一人が患者六十人を看護しなければならず、最低賃金を受け取る劣悪な処遇を受けている看護師もいる」と声を上げた。


日本のできごと

(9月10日〜9月19日)

自民総裁選告示、安倍・菅政権継承か
 菅首相の後任を選ぶ自民党総裁選が九月十七日、告示された。投開票は二十九日。立候補した河野規制改革担当相と岸田前政調会長、高市前総務相、野田幹事長代行の四氏は同日党本部で開かれた所見発表演説会などで、安全保障問題や新型コロナウイルス感染症対策などについて訴えたが、安倍・菅政権時代の外交・政治への批判や反省はなく、事実上引き継ぐ姿勢示した。内外情勢の危機がますます深まるなか、安倍・菅路線継承では四氏の誰が政権を担っても危機を打開できない。

陸上自衛隊、30年ぶり大規模演
 陸上自衛隊は十五日、全国の部隊から約十万人、車両約二万両、航空機約百二十機が参加する陸上自衛隊演習を全国の駐屯地などで開始した。十一月下旬まで約二カ月半の日程で、全部隊を対象とした大規模な演習は一九九三年以来約三十年ぶり。戦闘をするための準備をスムーズにすることが目的で、部隊の移動や装備品、物資の輸送などの手順を確認する。南西諸島防衛を念頭に、全国の三つの部隊から約一万二千人の隊員と約四千台の車両を九州の演習場に移動させる過去最大規模の訓練も実施、「中国の脅威」を演出する効果も狙っている。

日越が防衛装備協定、中国念頭に
 日本とベトナムは十一日、両国間の防衛装備品・技術移転協定に署名した。岸防衛相の訪問に合わせて署名され、会談した両国の外相は「協力関係が新たな段階に入った」との認識で一致した。同協定は相手国の適正管理を条件に日本の防衛装備品や安全保障技術の輸出を可能とするもので、艦艇の輸出などが協議されている。米英豪やフィリピンなど十カ国と結んでおり、今回で十一カ国目。菅政権は今年三月にはインドネシアとも締結するなど、中国を念頭に南シナ海周辺国との軍事的関係を強め、米国と歩調を合わせて包囲網形成にまい進している。

米軍汚染水処理、日本政府が肩代わり
 防衛省は十七日、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)内で問題となっている有機フッ素化合物(PFOS・PFASなど)を含む廃水について、日本側が肩代わりして処理することで米側と一致したと発表した。米軍は八月下旬、処理にコストがかかるとして汚染水を県や日本政府との合意もなく普天間基地から一方的に下水に放出した。日本政府は形式的には米側に抗議したものの、「地域住民の懸念」「緊急的な暫定措置」(岸防衛相)を名目に、結局は国民の血税で米国の横暴の尻ぬぐいをすることに。独立国としてあるまじき弱腰で、これでは沖縄県民をはじめ国民の安全・安心は守ることはできない。

RCEP発効へ初の目処
 日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済担当相は十三日、オンライン会合後の共同声明で、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の二〇二二年一月までの発効をめざす方針を盛り込んだ。発効の目処を示したのは初めて。同目標は中国が今年三月に表明していたもので、RCEPを足がかりにASEANとの結びつきをさらに強めアジア太平洋地域での貿易秩序形成を主導する狙いだ。中国は米国が国内の階級矛盾激化から離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟も正式に申請するなど経済圏づくりに意欲的で、中国との経済的な分断を推し進める米国に付き従う菅外交は矛盾を深めている。

米概算金大幅下げ、国の緊急対策急務
 JA全農県本部や経済連がJAに提示する二〇二一年産米の概算金・買い取り価格が十日、主要産地で出そろった。概算金・買い取り価格は全国で大幅に低下、前年産から二〜三割(一等六十キロ当たりの下げ幅で二千〜三千円)下げが中心で、業務用に多く使われる銘柄は特に下落幅が大きい傾向に。二〇年産在庫が多く余剰感が強いことや、今後の販売環境が見通しづらいことを踏まえ、慎重に設定する産地が相次いだ。二一年産は産地が過去最大規模の転作拡大に取り組んだが、人口減などによる消費の減少に加えコロナ禍による業務需要の低迷で国の見通しを超えて需要が減った。政府は米政策を抜本的に見直すとともに、稲作経営者への資金繰り支援や過剰在庫の買い入れによる市場隔離などの緊急対策を行うべきだ。


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