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労働新聞 2021年8月5日号 トピックス

世界のできごと

(7月20日〜7月29日)

米閣僚ら中国敵視のアジア歴訪
 米バイデン政権の主要閣僚として初めて東南アジアを歴訪しているオースティン国防長官は七月二十七日、シンガポールで演説、「アジアへ永続的に関与する」などと強調、南シナ海や台湾問題で中国を一方的に非難した。併せて「航行の自由」作戦などの軍事的挑発や台湾への軍事的支援を正当化した。翌日にはブリンケン国務長官がインドを訪問してジャイシャンカル外相と会談。新型コロナ対策として同国へ追加支援することを表明するとともに、米印日豪四カ国の「クアッド」の協力も確認した。またブリンケン氏はチベット「亡命政府代表」なる人物と会うなど、中国への最大限の挑発を行った。発足から約半年を迎えたバイデン政権のアジアへのパワーシフト、対中敵視の外交がより鮮明になっている。

米中高官対話、対話に背向ける米
 米国のシャーマン国務副長官は二十六日に中国を訪問、王毅国務委員兼外交部長らと会談した。米中高官による直接対話は三月以来。シャーマン氏は香港やウイグル、チベット問題などをあげつらい中国を責め立てた。また何一つ証拠を出さぬまま「中国によるサイバー攻撃」について言及、対話を望むとは思えぬ姿勢に終始した。一方、中国側は歴代政権とバイデン政権の対中敵視政策について、「この企ては現在、将来において実現不可能」と米側を諭した。十月にイタリアで開かれる主要二十カ国・地域(G20)首脳会談でバイデン大統領と習近平国家主席による初の対面会談に向けた協議に至らないまま会談は終わった。

合意険しい、米ロ「戦略対話」
 米ロ両政府は二十八日、スイス・ジュネーブで「戦略的安定対話」を行った。協議には米国のシャーマン国務副長官とロシアのリャプコフ外務次官が出席した。新戦略兵器削減条約(新START)が五年後に失効することを踏まえ、核兵器を含む軍備管理協力について協議、両国は九月末の再協議に向け、対話継続で一致した。力の衰え著しい米国は台頭続ける中国への対抗に集中するため、対ロ関係を安定させたい考え。しかし、ロシアは米国との核戦力の均衡維持を重視しており、米国も小型核弾頭の開発・配備などあくまで核兵器の「近代化」を進める構えで、継続協議で実質的な合意が得られるか疑問視されている。

南北、関係改善へ模索
 韓国と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は二十七日、南北両首脳が四月以降、親書を取り交わし、共に関係改善を図っていくと発表、朝鮮は韓国との直接通信を復旧させた。南北は一八年に三度の首脳会談を開催、対話が続いていたが一九年二月の米朝首脳会談の決裂を受け停滞、韓国の脱北者組織がデマビラを朝鮮に向けて飛ばすなどの行為を行い、朝鮮は共同連絡事務所を爆破、関係は悪化していた。南北関係は今後も曲折が予想されるが、米国は直ちに対朝鮮敵視を止め、南北関係の改善への妨害をやめるべきだ。

人民のたたかい

(7月20日〜7月29日)

 米国各地で七月二十四日、労働組合などが国民皆保険制度の実現をバイデン政権に求める集会やデモを行った。ワシントンやニューヨークなどの主要都市をはじめ、アラスカ州やハワイ州でも展開された。米国で二〇一四年に始まった医療保険改革法(オバマケア)は民間保険への加入を促す程度の制度で、無保険者は減少していない。
 コロンビアで二十日、学生団体や労組などがコロナ禍で苦しむ国民生活の保障、大学授業料の無償化などを求めるデモを行い、首都ボゴタなど各地で数万人が参加した。ドゥケ政権は弾圧を強めており、国民の怒りが高まっている。
 ドイツのブランデンブルクとベルリンで二十三日、統一サービス労組が賃上げと労働環境の改善などを求めるストライキを行った。労組は小売業で働く労働者に対して四・五%の賃上げと月給に特別手当をプラスするよう求めるとともに、最低賃金の引き上げも迫った。ベルリンの百貨店前では労働者が「尊厳ある生活を」と声を上げた。


日本のできごと

(7月20日〜7月29日)

東京五輪開催、初の延期・無観客
 第三十二回夏季五輪東京大会が七月二十三日に開幕した。新型コロナウイルスの影響で近代五輪史上、初めて無観客で行われ、一年延期されての開催も初だが、二百超の国・地域から過去最大規模の約一万千百人の選手が参加する。感染防止のため選手や関係者は大会期間中に毎日検査を受け、行動範囲は宿泊先と競技会場・練習場に制限されるが、違反も多く、また選手・関係者の感染も続々と判明している。コロナ前からの懸案だった猛暑についても熱中症で倒れる者が続出、各国の報道機関から「五輪招致のために気候に関してウソをついた」との批判が高まっている。今後は東京都と国が抱える赤字は四兆円になるとの試算もあるが、そのツケを国民・都民に押し付けることなど許されない。

人権感覚欠如、組織委の不祥事相次ぐ
 東京五輪開幕前日の二十二日、開閉会式のショーディレクターを務めるコメディアンが過去につくったコントでユダヤ人虐殺をやゆしていたことが発覚して解任された。大会組織委員会織をめぐっては、二月に大会組織委員会会長だった森元首相が女性蔑視発言で辞任に追い込まれ、三月には開閉会式の統括責任者が女性タレントを侮辱して辞め、十九日には開会式音楽の作曲家が障害者への暴力を雑誌で自慢していたことを受けて辞任した。相次ぐ人権侵害の言動による五輪関係者の辞任は大会組織委員会や日本政府の人権感覚の欠如が露呈した格好で、菅政権の責任は重大だ。

感染者1万人超す、日医など暗に批判
 新たに報告された新型コロナウイルスの感染者が二十九日、初めて一万人を超えた。これを受けて菅首相は田村厚労相ら関係閣僚と協議、緊急事態宣言の発令・延長を諮問すると決めた。こうした状況に対し日本医師会や東京都医師会など九団体が同日、緊急声明を発表し、「今後の爆発的感染拡大を避けるための危機感の共有と対策が必須」と指摘、感染者が拡大している若年層に対し国が有効なメッセージを発していないことを暗に批判した。また東京都医師会の尾崎治夫会長は会見で「お祭り騒ぎをしているのに自粛してと言うのは難しい」と五輪開催の影響を指摘した。五輪開催のため事実上コロナ対策を犠牲にする菅政権は重罪だ。

茂木外相が中国けん制の中米歴訪
 茂木外相は二十一日、中米・カリブ海三カ国を歴訪し帰国した。グアテマラ、パナマ、ジャマイカを訪れ、各国の外相と会談したほか、中米統合機構(中米八カ国)やカリブ共同体(カリブ海十四カ国)とオンラインを交えて外相会合を開催、コロナ対策や気候変動問題での連携を確認した。茂木氏は「国際社会が直面する課題として、力による一方的な現状変更の試みに対する深刻な懸念を共有した」などと歴訪について語った。「米国の裏庭」と呼ばれるこの地域でも近年、インフラ投資やワクチン外交によって中国が影響力を増している。茂木外相の歴訪は中国外交をけん制したい米国への援護射撃にほかならない。

「黒い雨」訴訟で国が上告断念
 広島への原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」による健康被害をめぐる訴訟で国側敗訴の広島高裁判決が出たことについて、菅政権は二十六日、「被爆者援護法の理念に立ち返り、救済を図るべきだと考えた」として、上告を断念し原告八十四人に直ちに被爆者健康手帳を交付すると表明、また原告以外の被爆者についても「認定して救済できるよう対応する」とした。高裁判決は長年にわたり被害を矮小(わいしょう)化してする国の姿勢を断罪し被爆者を幅広く救済することを求めており、菅首相の判断は当然で、むしろ遅すぎた。国は一刻も早く被爆者の認定条件や対象範囲を検討し、高齢化するすべての被爆者救済に向け法整備を進めるべきだ。

軍艦島に「遺憾」も政府反省せず
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は二十二日、長崎県の端島炭坑(軍艦島)などの世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に関し、朝鮮半島などから徴用され強制労働させられた人びとに関する説明が不十分だとして「強い遺憾」を示した決議を全会一致で採択した。同遺産をめぐっては、韓国が朝鮮半島出身者が戦時中に強制労働させられていた施設を含んでいると登録に反対、日本政府は二〇一五年の登録の際に「歴史全体を理解できるようにする説明の取り組み」や「情報センターを設置するなど、犠牲者を記憶にとどめるための適切な対応」を約束して韓国側の登録了承を得ていた。今回の決議は、日本の約束が履行されていないと結論づけ、来年十二月までに今後の対応を説明するよう求めている。これに対し菅政権は「約束した措置を含め誠実に実行し履行してきた」(加藤官房長官)と反省の色がない。国際社会に向けて行った約束を守らぬのであれば世界遺産を返上するべきだ。


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