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労働新聞 2021年7月5日号 トピックス

世界のできごと

(6月20日〜6月29日)

米インフラ計画で合意も、大幅後退
 バイデン米大統領と議会上院の超党派グループは六月二十四日、今後八年で一兆二千九十億ドル(約百三十四兆円)に上るインフラ投資計画で合意した。当初五年の投資額は九千七百三十億ドルで、道路や橋の整備、電気自動車(EV)充電設備などに費やす。バイデン政権は総額四兆ドルの経済構想を打ち上げてきたが、合意はその四分の一の水準。また、低所得者向けの住宅整備や企業増税は見送られた。こうしたなか、トランプ前大統領は二十六日、退任後初の演説を行い、来年の中間選挙に向け「親トランプ」候補へのテコ入れを図った。「分断の克服」掲げるバイデン政権の道のりは険しい。

米・アフガン偽りの「パートナー」
 バイデン米大統領は二十五日、ホワイトハウスでアフガニスタンのガニ大統領と会談した。バイデン大統領は九月までの米軍全面撤退を表明していた。両国は「永続的パートナーシップ」で合意、反政府勢力タリバンの攻勢にさらされるガニ政権に米国が支援する。だが、共同会見も開かれないなど、ガニ政権の不満は強い。アフガンではタリバンが勢力を拡大しているが、米国は中国を念頭にアジアにシフト、「円満撤退」を図っている。

中東に緊張もたらす米の空爆
 米軍は二十七日、シリアとイラクにある三カ所の施設を空爆した。米側は同施設を親イラン武装勢力の拠点と決め付け、空爆を合理化した。またイランのテヘラン近くの原子力関連施設に対する無人機(ドローン)攻撃が当局によって阻止された。「核合意」再スタートに向けた交渉が続いていたが、査察受け入れの暫定合意は二十四日に失効。米国はトランプ前政権時に一方的に離脱したにも関わらず、「深刻な懸念」(ブリンケン国務長官)と身勝手な姿勢。イラクのカディミ首相は米国を「主権侵害」と批判、米国やイスラエルに強い不快感を示している。

仏地方選、政権与党と極右が敗北
 フランスで二十七日、統一地方選決選投票が行われ、マクロン政権与党の「共和国前進」と極右・国民連合が大敗、中道右派の共和党と社会党など中道左派系が健闘した。投票率は三四%という歴史的低水準。二〇二二年の大統領選ではマクロン大統領とルペン国民連合党首の一騎打ちが予想されたが、両者に打撃。一方、黄色いベスト運動は健在、階級矛盾の激化は選挙制度の枠内に押しとどめられない。

全世界で進む富の偏在
 スイス金融大手クレディ・スイスは二十二日、世界の家計資産が二〇年に二八・七兆ドル(約三千百八十兆円)増えたとの報告を発表した。純資産百万ドル超の富裕層は五千六百八万人で前年から五百二十一万人増えた。人口比で成人の一%だが金額ベースで四六%で、一九年末の四三%から集中が進んだ。一方で全成人の五五%は純資産一万ドル未満でほぼ横ばい。金融緩和が株式などの価値を押し上げ、米欧を中心に富裕層の資産が膨らんだ。新型コロナウイルスの感染拡大で、「富の格差は世界全体とほとんどの国で二〇年に拡大した」と指摘している。

人民のたたかい

(6月20日〜6月29日)

 英国ロンドンで二十六日、政権のコロナ対策などに抗議するデモが行われた。市民団体や労組が共同して主催したもので、医療分野の民営化や医療労働者、公務員の賃金抑制に抗議した。
 米国ワシントンに二十五日、黒人などへの投票権抑圧に抗議するバスツアーが到着、連邦議会前で打ち上げ集会が開かれた。ツアーは南部ミシピッピ州を出発、八つの州を回り、投票権をはく奪するような動きに反対を訴えてきた。ワシントンの集会には黒人女性下院議員や市長も参加、「投票権の抑圧を許せば、白人至上主義の暴力が永遠に続く」と訴えた。
 ブラジルのブラジリアで二十二日、アマゾンの先住民たちが居住地の境界線変更につながる法案に反対するデモを行った。境界が変われば、その外で暮らす先住民は住居を失う。ボルソナロ政権はアマゾン川流域における無秩序な開発を奨励、違法伐採業者や金の違法採掘業者が先住民居住地に侵入、生活を脅かすケースも起きている。


日本のできごと

(6月20日〜6月29日)

ワクチンめぐり地方の怒り高まる
 新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐる地域差が顕著となっていることが、六月二十八日までに分かった。現役世代の約六割が二回の摂取を終えるのは、山口・佐賀では九月下旬が見込まれる一方、北海道・栃木では来年一月になる見通しと大きな差がある。「高齢者全員に七月末まで」の政府公約はすでに吹き飛んでいる。自治体では、兵庫県丹波市や明石市で接種受け付けの中止に追い込まれた。両市とも、到着予定のワクチンが当初予定を大きく下回ることが理由。「ワクチンはある」と繰り返し言明してきた菅政権の責任は重大で、国民の命と健康を軽視する正体があらわになった格好。

五輪、「1万人以内」と決定
 政府、国際オリンピック委員会(IOC)、東京五輪組織委員会などは二十一日、競技会場の観客数上限を「定員の五〇%以内・最大一万人」とすることを決めた。ただし、緊急事態宣言や「まん延防止等重点措置」が解除されていることが条件。とはいえ、競技団体役員やスポンサー関係者、動員される子どもたちは「別枠」扱いで、「規制」はザルそのもの。何が何でも開催を強行したい政府などの姿勢は国民世論を顧みない無責任なものだ。

日米韓協議、朝鮮制裁継続
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核をめぐる日米韓高官協議が二十一日、ソウルで行われた。キム米朝鮮担当特使は「(朝鮮側と)前提条件なしにいつでもどこでも会う」と述べたが、協議では朝鮮への制裁を継続することで合意した。バイデン大統領は四月、二〇一八年の「シンガポール共同声明」にある「朝鮮半島の完全非核化」を目標とすると述べているが、対話は一向に進んでいない。菅政権は主体性のない態度に終止している。米日が敵視政策をやめ、制裁を解除することこそ必要だ。

「赤木ファイル」、指示明らか
 政府は二十二日、森友学園問題で公文書改ざん作業を強制され、自殺した近畿財務局職員による文書(赤木ファイル)を開示した。大阪地裁の決定に基づくもの。文書は、安倍前首相が一七年、「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した直後から改ざんが始まったことが示されている。「国会答弁を踏まえた修正を行うよう指示」と、佐川元局長の指示も明記。検察や会計監査による調査を見越した記述もあった。政府は遺族の提訴から一年以上、文書の存否さえ答えなかった。安倍・菅政権下、政治の腐敗・堕落がきわまっている。

40年超原発が初の再稼働
 関西電力は二十三日、美浜原子力発電所(福井県美浜町)三号機を十年ぶりに再稼働させた。政府は東京電力福島第一原発の事故後、「運転期間原則四十年、最長二十年延長」とするルールを定めたが、運転開始から四十年以上経た再稼働は初。しかも、政府が定めた「特定重大事故等対処施設」の基準を満たさぬままの再稼働。相次ぐ原発再稼働は「温暖化対策」を口実としたものだが、老朽施設の再稼働は国民を危険にさらすだけだ。

飲食店閉店が約2倍に
 二〇年度の飲食店閉店数が五千二百三十店、前年度の一・九倍に達したことが二十三日までに分かった。「日経新聞」の調査で、リーマン・ショック時の〇八年と比べても約一・三倍。内訳は、レストラン千二百四十九店、パブ・居酒屋九百十九店の順。ただ、調査は外食産業の主要企業約三百社の回答によるもので、中小零細店舗を加えれば「氷山の一角」。政府による休業要請や「酒類販売自粛」などの措置が深刻な影響を与えている。

半導体不足で自動車稼働停止
 世界的な半導体不足とルネサスエレクトロニクスでの火災により、自動車各社が稼働停止に追い込まれている。マツダは二十三日、防府工場(山口県)の一部ラインを七月に計十日間止めることを発表。日産も三工場を三日間、SUBARUは群馬県内で一日、ダイハツは一部工場で二日間、スズキも静岡県内二工場の稼働を停止する。トヨタもすでに宮城県の工場を約一週間停止し、三菱は二工場の稼働率を落とす。半導体不足は当面続くと見られ、労働者や下請企業への影響が拡大しつつある。


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