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労働新聞 2021年6月25日号 トピックス

世界のできごと

(6月10日〜6月19日)

対中包囲強めるバイデンの欧州歴訪
 バイデン米大統領は初の外遊で、六月十一日からの主要七カ国首脳会議(G7サミット)、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議、米・欧州連合(EU)首脳会議などに出席した。十五日のEUとの首脳会議では、前政権時の経済摩擦解消のため、報復関税の停止などで合意した。欧州との関係修復で中国に対抗するため。EU側も中国の名指しは避けつつ、歩調を合わせた。十六日にはスイスのジュネーブでロシアのプーチン大統領と会談、「戦略的安定対話」の開始などで合意した。「二正面作戦」を避け、対ロ関係を安定化させて「対中」に専念すること。だが、EUもロシアも深刻な国内対立を抱える米国の足元を見透かしており、米国の狙い通りにはいかない。

NATO、中国対抗の共同声明
 NATO首脳会議は十四日、ロシアの「脅威」と中国の「挑戦」に言及した共同声明を採択した。NATO内には軍事費負担をめぐる米欧間での対立も残るが、英仏独などが「インド太平洋」戦略へ乗り出すため、中国への対抗も加えた。首脳会議では二〇三〇年に向けた改革指針を承認、来年には新戦略概念を改定する計画。NATO加盟諸国内には直接的な軍事的脅威ではない対中国については温度差もある。

中国、米欧による制裁へ対抗
 米欧による制裁や締め付けの強化に対抗して、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は十日、「反外国制裁法」を成立させた。新華社は「外国の差別的な措置に反撃するための強力な法治による支援と保障が必要」と伝えた。新法では、対中制裁を発動した外国の組織や関係者らの入国禁止や国外退去、中国国内の財産凍結などの措置を取ることができる。中国は米国への対抗措置を整えつつある。

イスラエル、8党連立の新内閣
 イスラエルで極右政党のベネット氏を新首相とする連立政権が十三日発足、十二年ぶりに政権の交代となった。「反ネタニヤフ」だけで成立した八党連立政権は、左右両派や中道、アラブ系政党まで取り込んだ。一致点は限られ、政権基盤は極めてもろい。

イラン、対米強硬派の新大統領
 イランの大統領選挙でライシ師が当選した。米トランプ前政権が「核合意」から離脱、経済制裁強化で通貨リアルが暴落、国民の反米感情はいちだんと高まった。イラン新政権は制裁解除の最優先を主張すると見られ、対米交渉の行方は厳しいものとなろう。

コロナ禍が児童労働増加に拍車
 国際労働機関(ILO)と国連児童基金(UNICEF)は十日、児童労働に従事者が四年前より八百四十万人増えて推定一億六千万人に達したとの共同報告書を発表した。報告は、過去二十年間続いてきた児童労働減少の歩みが止まったことに警鐘を鳴らした。とくに五〜十一歳の幼い児童労働者が大幅に増え、全体の半分強を占める、危険有害労働に従事する子どもの数も二〇一六年から六百五十万人増えて七千九百万人に達している。悲惨な児童労働をなくすことは先進国の責任だ。

人民のたたかい

(6月10日〜6月19日)

 英国で開かれたG7サミットに参加した各国首脳に気候変動対策や生物多様性の保全を訴えて、開催地のカービスベイでは十二日、環境団体の活動家ら二千人が参加して大規模なデモ行進が行なわれた。
 コロナによる死者が五十万人を超えたブラジルで十九、日全国各地で感染対策を徹底しないボルソナロ大統領に抗議するデモが行われた。
 韓国の国民健康保険公団カスタマーセンター労働者は労働条件改善と直営化を要求して十日から無期限全面ストライキに突入した。現代起亜車部品メーカーの金属労組京畿支部ビテスコ支会の女性労働者も会社側に誠実交渉を要求して残業拒否など部分ストライキに突入した。
 スイス各地で十四日、男女間の賃金平等を求める女性たちがストライキを決行した。労働組合連盟(SGB)によると数十万人が参加。参加者はホイッスルを吹いたりしながら行進した。


日本のできごと

(6月10日〜6月19日)

通常国会閉会、悪法成立に立民協力
 第二百四通常国会が六月十六日、会期末を迎え閉幕した。政府提出法案六十三本のうち六十一本が成立、成立率九六・八%は七年ぶりの高水準となった。改悪新型インフル特措法、デジタル改革関連法、重要土地利用規制法、改悪少年法、医療制度改革関連法、改悪国民投票法などの悪法が成立、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)も承認された。野党は、新型コロナウイルス対応のために補正予算を組むことなどを求めて大幅会期延長を訴えたが拒否され、十五日に内閣不信任決議案を提出した。今秋までに行われる総選挙を前に対決姿勢を打ち出したが、最大野党の立民は、改悪特措法や改悪国民投票法をめぐり与党と手打ちし、法案成立に道を開いた。コロナ禍に苦しむ国民を裏切る行為だ。

改憲のための改悪国民投票法成立
 改憲手続きのための改定国民投票法が十一日、参議院本会議で可決、成立した。「共通投票所」設置などが新たに盛り込まれたが、最低投票率などの問題は放置された。立民は、テレビやネットなどの有料広告の規制強化について三年をめどに必要な法制上の措置を講じることを付則に加えることで与党と合意、法成立に協力した。政権与党からコロナ禍に乗じて「戒厳令」に道を開く緊急事態条項を持ち込む改憲待望論が相次ぐなか、みすみすこの憲法改悪に手を貸す行為で罪は重い。

運動弾圧強める土地利用規制法成立
 土地利用規制法が会期末ギリギリの十六日未明に参議院本会議で強行可決され、成立した。国が基地や原発などの周辺約一キロと国境離島を「注視区域」に指定、利用状況を調査し、「機能阻害行為」があれば利用中止を命令・勧告し、従わなければ刑事罰を科すことが可能となる。調査対象や範囲、期間、実施主体などについては歯止めとなる規定はなく、法施行後は政令に白紙委任され、際限なく拡大し得る。反戦、反基地、反政府運動への監視・弾圧を強化する危険な法律で、廃すべき悪法だ。

緊急事態の解除、五輪にらんだ布石も
 菅政権は十七日、新沖縄を除く九都道府県の緊急事態宣言を再延長せず期限となる二十日での解除を決めた。七都道府県を七月十一日までのまん延防止等重点措置に切り替える。また感染症対策の基本的対処方針を改定、知事の判断で飲食店などに引き続き営業時間短縮や酒類提供の制限が課される一方、イベント入場客を上限一万人とするなど、有観客での五輪開催に向けた布石も打った。十分な補償もなく感染拡大対策を事業者に押し付ける一方、感染拡大リスクの高い五輪開催に突き進む菅政権の蛮行は許しがたい。

専門家提言、五輪「別格のリスク」
 政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志は十八日、東京五輪開催による感染拡大リスク分析や提言を国と組織委に提出した。七月から八月にかけての感染者・重症者の再増加の可能性を指摘した上で、五輪は規模や社会的注目度が通常のスポーツイベントと別格で、また開催が夏休みやお盆に重なるため、開催を契機とした全国各地での人流・接触機会の増大で感染拡大や医療ひっ迫のリスクがあると警鐘を鳴らした。その上で、五輪を開催する場合は無観客が最も望ましいが、有観客の場合は現行の大規模イベントの基準より厳しい基準を採用すべきだとした。しかし国や組織委はこの専門家の科学的見地を無視し大規模有観客開催へと突き進んでいる。

元法相実刑判決も原資の出所に触れず
 二〇一九年の参議院議員選挙広島選挙区の大型買収事件をめぐり、東京地裁は十八日、河井元法相に懲役三年の実刑判決を言い渡した。地元の地方議員や首長ら百人への総額約二千八百七十万円の配布を妻・案里元参議院議員(公選法違反で有罪確定)の当選のための買収だと認定、「選挙買収の中でも際立って重い部類」と断罪した。しかし、河井陣営には自民党本部から一億五千万円の選挙資金が提供され、そのうち税金を原資とする政党助成金は一億二千万円だったことがすでに明らかになっているが、判決では買収資金の出所には触れなかった。国民の血税が買収のために使われた疑いが濃厚だが、自民党は資金提供の経過や使途を明らかにしておらず、実態解明が求められている。


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