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労働新聞 2021年5月15日号 トピックス

世界のできごと

(4月20日〜5月9日)

気候サミット、先進国と途上国で溝
 バイデン米大統領は四月二十二、二十三日、オンラインで開いた気候変動サミットで各国・地域の首脳に温暖化ガスの排出削減への協力と行動を求めた。先進各国は相次いで新たな削減目標を表明したが、途上国からは経済成長への配慮や支援を求める声が上がった。中国の習近平国家主席は「開発や経済成長と環境配慮のバランスを取る必要性」を指摘した。インドのモディ首相も「協力する」と述べたが、ロシアのプーチン大統領は新たな削減目標は示さなかった。トランプ前政権で一歩的に「離脱」し、バイデン氏が大統領就任後、最優先したパリ協定の修復だが、先進国と途上国の溝が改めて浮き彫りになった。

バイデン大統領、初の議会演説
 バイデン米大統領は二十八日、就任後初の議会演説を行った。演説で「米が世界を主導する」と宣言したものの、来年の中間選挙を意識して、外交問題は演説の二割にも満たず、八割以上を内政問題に費やした。演説は米国社会の分断ががいかに深刻かつ複雑であるかを吐露するものとなった。

米軍とNATO軍、アフガン撤退開始
 アフガニスタン駐留の米軍とNATO軍の撤退が五月一日に始まった。バイデン米大統領は今年九月十一日までに米国建国以来の「最長の戦争」を終わらせると表明したが、これはトランプ前政権とタリバンによる「完全撤退合意」の流れで、バイデン政権の成果とはいえない。また、アフガニスタン政府軍とタリバンとの戦闘は続いており、テロも続発している。帝国主義諸国にさんざん踏みにじられたアフガニスタンの和平の道程は遠い。

G7外相、「中ロが脅威」の声明採択
 先進七カ国(G7)外相会合は五日、「中国、ロシア、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が現在の最大の脅威」とする共同声明を採択した。また台湾やウクライナへの支持を表明した。声明は、先の日米共同声明に続いて米国の対中政策と歩調を合わせることとなった。だが、G7が世界経済の中に占める位置は年々低下し、「多極化」の世界で影響力は弱まっている。G7内部でも議長国の英国は欧州連合(EU)離脱で国内矛盾も激化、独仏もそれぞれの思惑から対中政策でも足並みはそろっていない。

ロシア、年次教書で米欧に警告
 ロシアのプーチン大統領は二十一日、内政・外交の施政方針を示す年次教書演説を行った。ウクライナやベラルーシ情勢で対立を深める米国や欧州に対して「一線を越えないと期待する」を強くけん制、ロシアに対する「挑発行為」には「迅速かつ強硬な対応」を取ると警告し、圧力に屈しない姿勢を明確にした。一方、軍備管理での国際協調について「国際社会の全てのメンバーと良好な関係を維持したい」「(対話の)橋を燃やしたくはない」と述べ、対話継続の姿勢も示した。

人民のたたかい

(4月20日〜5月9日)

 米国ノースカロライナ州エリザベス・シティで四月二十一日、黒人男性が警察官に射殺された。同市では大規模な抗議デモが連日起きており、州政府は二十六日、非常事態を発令した。
 チリ労働者中央同盟(CUT)はメーデー前日の三十日、全土でコロナまん延への抗議、先住民族への弾圧中止、ジェンダー平等など柱とするゼネストを実施し、大統領の退陣を要求した。チリでは十一月に大統領選挙が実施される予定。
 コロンビアで、政府の税制改革に反発する大規模なデモが二十八日から始まり、治安部隊との衝突で多数の死傷者が出た。大統領は税制改革案を撤回したが、貧困問題や治安部隊の暴力に抗議する反政府デモは五月に入っても各地に拡大している。
 韓国済州島の水産業者が三十日に集会を開き、東京電力福島第1原発の処理済み汚染水の海洋放出決定を撤回するよう日本政府に要求した。水産業協同組合によると、済州のほか釜山市、江原道など全国九地域で漁業関係者約千人が同時に集会を開き、海洋放出決定の撤回を求めた。


日本のできごと

(4月20日〜5月9日)

3回目の緊急事態宣言、延長・拡大も
 菅首相は四月二十三日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言を東京、大阪、京都、兵庫の四都府県に発令した。昨年四月、今年一月に続く三回で、期間は二十五日から五月十一日まで、酒類を出す飲食店や大型商業施設に休業を要請した。首相は「大型連休に効果的な対策を短期集中で実施」と説明したが、その後も変異ウイルス感染拡大は収まらず、宣言は五月末日まで延長、また愛知と福岡も追加された。さらに九日には北海道、岐阜、三重の三道県にまん延防止等重点措置が新たに適用された。感染阻止に不可欠な検査体制は一向に強化されないなど失政は明白で、国民に三度も宣言を強いる菅政権の罪は思い。

国政選挙で与党全敗、政権求心力低下
 衆議院北海道三区と参議院長野選挙区の二つの補欠選挙、参議院広島選挙区の再選挙が二十四日に投開票され、菅政権は初の国政選挙で全敗した。汚職疑惑で前議員が辞職した北海道で自公与党は候補者を立てず、野党現職議員死去に伴う弔い合戦となった長野では惨敗、大規模買収事件で有罪となった議員の当選無効に伴う信任投票となった広島では、与党は強固な保守地盤を元に必勝を期したが競り負けた。「政治とカネ」不信やコロナ対策の失政など政権与党への憤りを如実に反映した。さらなる菅政権の求心力低下は不可避で、半年以内に迫った総選挙前に政権運営は困難さを深めている。

コロナ禍悪用し改憲・強権化を策動
 菅首相は憲法記念日の五月三日、改憲をもくろむ右翼保守団体が主催する集会に寄せたメッセージで緊急時の政権の権限強化について「憲法にどう位置付けるかはきわて大切な課題」と述べ、実質的な戒厳令も可能とする緊急事態条項導入に意欲を示した。また同日、自民党の下村政調会長は条項創設について「今回のコロナを、ピンチをチャンスとして捉えるべきだ」と述べた。政権与党は、自らの失政で国民に多大な犠牲と打撃を強いるだけでなく、火事場泥棒のごとき改憲で自らの権限強化と国民統制・弾圧強化をもくろむ思惑を増長させている。菅政権の強権化に国民的反撃が必要だ。

中国けん制狙う茂木外相の欧州歴訪
 茂木外相は七日、訪問先のポーランドで同国とスロバキア、チェコ、ハンガリーの東欧四カ国(V4)と外相会談を行った。茂木氏は、欧州連合(EU)が九月に「インド太平洋戦略」を策定したことを念頭に、EUの関与に歓迎の意を示し、戦略策定に向けたV4各国の積極的な貢献に期待感を示した。中国は東欧を広域経済圏構想「一帯一路」の欧州の玄関口と位置付けてインフラ投資を進めるなど影響力を強めているが、茂木外相の歴訪はその中国けん制を狙う米国などの意向も受けたもの。また茂木は前の二日に訪英、日英外相戦略対話や主要七カ国(G7)外務・開発大臣会合に出席し、ここでも中国けん制を主導している。

外交青書、中国敵視の姿勢鮮明に
 茂木外相は四月二十七日、閣議で二〇二一年版の外交青書を報告した。東シナ海や南シナ海での中国の軍事活動について「日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念」と明記、前年度版の「地域・国際社会共通の懸念事項」から表現を強めた。沖縄県尖閣諸島周辺で活動する中国公船を「国際法違反」と断じ、初めて外交青書に盛った。中国への抑止力の強化に向け米国などと連携を強化する戦略を明記した。また前年度版ではほとんど触れられていない「新疆ウイグル自治区の人権弾圧」への記述も大幅に増やした。中国敵視とけん制を米国と連携し強める思惑が鮮明化している。

RCEP国会承認、国内農業に打撃
 日本・中国・韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)などが二〇年十一月に署名した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が二十八日、参議院本会議で承認された。参加国全体で工業製品や農林水産品など九一%の品目で関税を段階的に撤廃される。日本が適用除外を主張したコメや牛肉・豚肉など重要五品目は関税削減対象から外れ、政府は「輸入増は想定しにくい」(野上農相)と説明するが、野菜・果樹を中心に農業生産の減少額は五千六百億円強に上るとの試算もある。自動車分野では大幅な利益増が見込まれており、国には農業犠牲の貿易自由化を許さぬ対策が求められている。


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