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労働新聞 2021年4月25日号 トピックス

世界のできごと

(4月10日〜4月19日)

米、アフガン全面撤退表明
 バイデン米大統領は四月十四日、アフガニスタンに駐留部隊を九月十一日までに撤収する方針を表明した。米国は「対テロ」戦争に六・四兆ドル(約七百兆円)、対アフガンでは約二兆ドルをつぎ込んだ。一時十万人もの米兵を駐留させたが反政府勢力の勢いを削ぐことができず、半ば敗走した格好。一方、バイデン大統領は「今直面する課題」として「自己主張を強める中国」を挙げ、「対テロ」からのパワーシフトを鮮明にさせた。成果に乏しい「対テロ」戦争の泥沼から抜け出し、対中封じ込めに注力したい米国の悪あがきの一環だ。

台湾に米元高官らが訪問
 アーミテージ元米国務長官ら米代表団が十五日、中国・台湾を訪問し、蔡英文「総統」と会談した。アーミテージ氏は「(これまでの政権と違い)バイデン政権は単純明快に台湾を強く支持する」などと述べ、中台統一に向けた中国の動きを強くけん制した。一月の大統領就任式に台湾の代表を参加させたバイデン政権は、米台の実務者レベルの定期会合を積極的に認めるなど台湾との交流拡大を強めるなど、中国を抑え込むカードとして台湾をいっそう積極的に活用している。この間のバイデン政権の動きは「一つの中国」という国際準則を大きくき損するとともに、両岸、東アジアにおける軍事的緊張を高めるものだ。

気候変動問題で米中合意
 中国の習近平国家主席は十六日、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領とオンライン会談を行い、気候変動問題などを協議した。習主席は発展途上国に対する技術支援などを求めた。また、十四日に訪中したケリー米大統領特使は中国側特使である解振華氏と会談、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の履行に向けた協力で一致した。共同声明には米中がパリ協定に基づき二〇二〇年代に気候対策の強化することなどが盛り込まれた。中国への敵対を強める米バイデン政権だが気候変動問題では中国の協力は欠かせず、二十二日には気候変動サミットを主催する。中国は米国と一定の協力を保ちつつ、欧州なども巻き込みながら、気候変動対策が米国主導にならないよう対処している。

中国がネット通信大手に罰金処分
 中国政府は十日、ネット最大手アリババ集団に独占禁止法違反で百八十二億二千八百万元(約三千億円)の罰金処分を科した。金額は二〇年三月期純利益の約一二%にも及ぶ。同社に対しては昨年十一月、スマホ決済サービスを手がける傘下のアント・グループの上場が延期となっていた。中国は二月、同社や騰訊(テンセント)などIT(情報技術)大手への規制方針を発表していた。習近平主席は三月の全人代で貧困への「逆戻り防止」を強調、大儲(もう)けする大企業を統制しつつ、国内安定を意識している。

人民のたたかい

(4月10日〜4月19日)

 米国ミネソタ州で十一日、黒人男性が白人警察官に射殺されたことに抗議するデモが行われ、数百人が参加した。同州では昨年五月の黒人青年殺害事件を機に「ブラック・ライブズ・マター」が広がった。改めて、警察の対応への怒りが高まっている。  韓国釜山市で十五日、日本政府が福島第一原発事故の汚染水を放出する方針を示したことに抗議するデモが行われた。デモは日本総領事館前で行われ、傍観する米国と国際原子力機関(IAEA)への批判も相次いだ。  ドイツのベルリンで十五日、市が昨年施行した賃貸住宅の家賃制限について連邦裁判所が無効判断を示したことに抗議するデモが行われ、数千人が参加した。同市では一三年から一九年にかけて家賃が二七%も上昇していた。  スペインのマドリードで十七日、医療労働者などが病院の民営化を進めてきた右派の州政府に抗議するデモを行った。

日本のできごと

(4月10日〜4月19日)

日米会談、「台湾」明記で段階画す
 菅首相とバイデン米大統領が四月十六日、ワシントンで会談した。共同声明は「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」をうたった。台湾海峡について「平和と安定の重要性を強調する」と五十二年ぶりに明記し、香港と新疆ウイグル自治区について「深刻な懸念を共有」などとした。中国の内政に干渉し、事実上「二つの中国」に踏み込む点で段階を画すもの。沖縄県尖閣諸島に安保条約が適用されると再確認、普天間基地(沖縄県宜野湾市)移設の「着実な推進」、コロナ対策での「クアッド」の連携、半導体などサプライチェーン(供給網)での連携などでも一致した。米国の対中国戦略へのさらなる追随で、アジアでの軍事的緊張を高める愚行だ。

共産党、中国非難で米国を助ける
 共産党の志位委員長は十七日、日米首脳会談についての談話を発表した。日米同盟強化を「国民に負担と危険をもたらす」と非難する一方、中国の「覇権主義」や「人権」への批判が「本質的批判」でないなどとした。中国への敵視と包囲を強化する日米支配層を「左」から支えるもの。選挙での「野党共闘」のために支配層におもねる志位らの堕落は極まっている。

ワクチン接種始まるが先進国中最低
 新型コロナウイルスワクチンの高齢者への接種が、十二日から始まった。対象となる六十五歳以上の高齢者三千六百万人に対し、国から自治体に配布されたワクチンはわずか約五万人分。政府は連休までには約六百七十万回分の接種をめざすというが、河野担当相の発言は右往左往し、自治体窓口などで混乱が続いている。その後一週間で、接種者は人口の一%にも達していない。海外では少なくても一回摂取した人が人口の六割を超えたイスラエル、英国約四七%、米国約三六%。マスク生産などと同様、安全保障を置き去りにした政策のツケだ。

汚染水放出決定、内外から批判
 政府は十三日、東京電力福島第一原発からの汚染水を海洋放出する方針を決めた。東電は二年後をめどに放出する計画。全漁連や福島県内の七割の自治体が「反対」などの意見書を採択するなか、政府は二〇一五年の「関係者の理解なしに汚染水のいかなる処分も行わない」とする約束を反故にした。中国や韓国も反発、文・韓国大統領は国際海洋法裁判所への提訴を検討すると表明した。政府などは「安全性」を力説するが、トリチウム以外の放射性物質を含む懸念が強い。「タンク容量」を口実とする放出は、わが国漁業に大打撃を与え復興にマイナスだ。

柏崎刈羽原発に停止命令
 原子力規制委員会は十四日、東京電力・柏崎刈羽原発(新潟県)に核燃料の原子炉内への搬入を禁じる命令を出した。同施設の安全対策に不備が発覚したことが理由で、期限は「自律的な改善が見込める状態」となるまで。規制委は原子力規制庁内に追加検査チームを設置、追加検査を行う予定。再稼働はできても一年以上先となる見込みで、菅政権は打撃を受けた。ずさんな管理を続ける東電は、汚染水放出と同様に信頼できない。

入管法改悪案が審議入り
 入管難民法改悪案が十六日、衆議院本会議で審議入りした。同案は、三回以上の難民申請者を強制送還の対象にし、国外退去を拒んだ際の罰則を創設するなどの内容。わが国入管をめぐっては、在留資格喪失者すべてを対象とする「全件収容主義」、コロナ感染症がまん延し自殺者が相次ぐ劣悪な環境、異常に少ない難民認定率(〇・四%以下)など国際的批判を受けている。同案は難民申請者を迫害の懸念のある紛争国・地域に強制送還するもので、人道的にも断じて許しがたい。

熊本地震5年、急がれる復興
 二百七十六人が犠牲となった熊本地震の二度目の「本震」から十六日、五年を迎えた。熊本県は復旧・復興本部会議を開いたが、仮設住宅の「解消」は二七年にまでずれ込む見通し。南阿蘇鉄道の再開は二三年夏となる。仮設住宅には今なお百五十世帯・四百十八人が暮らしている。高齢者や一人暮らしが多い復興住宅では、問題が山積みだ。昨年の熊本豪雨の被災者と併せ、政府の責任で復興を急がなければならない。


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