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労働新聞 2021年4月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月30日〜4月9日)

米、中ロなど標的に「人権」報告書
 米国務省は三月三十日、二〇二〇年版「世界人権報告書」を公表した。中国・新疆ウイグル自治区や香港での「人権」問題を中国を非難。とくに新疆については「ジェノサイド(民族大量虐殺)と明記し、トランプ前政権の態度を引き継いだ。ロシアの反体制勢力への弾圧やミャンマーのクーデターなども取り上げた。また、プライス米国務省報道官は二二年に開かれる北京冬季五輪について、ボイコットを「同盟国と議論」すると述べた。ただ国務省は、検討が始まっていることは否定した。バイデン政権は「人権」を口実に対中攻勢をいちだんと強化しているが、自らが進める国内外の人権侵害こそ反省すべきだ。

バイデン政権、インフラ投資を発表
 バイデン米大統領は三十一日、八年間・二兆ドル(約二百二十兆円)規模のインフラ投資計画を発表した。法人税増税を財源に、老朽化した道路や鉄道など交通網の整備(六千二百十億ドル)、電力網や通信網(各千億ドル)などの内容。中国への対抗として、人工知能(AI)などの研究開発投資(千八百億ドル)、サプライチェーン(供給網)強化などに三千億ドルを求めた。「格差是正」を旗印にするが、トランプ前政権が三五%から二一%に引き下げた法人税率を二八%に上げたにすぎず、計画も内容も含めて大企業に奉仕するもの。国内矛盾の激化への対応をめざしたものだが、党派対立が激化し一致は容易ではない。

G20、最低税率で合意めざす
 二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が四月七日に行われた。、会議は、米IT(情報技術)企業などへのデジタル課税や法人税引き下げ競争を防ぐ「最低税率」を「二一年半ば」までに「合意をめざす」とする共同声明を採択した。声明には「保護主義と闘う」との文言も入り、米トランプ前政権時代からの「転換」を印象づけることに腐心した。だが、デジタル課税の範囲や税率を詰める過程は困難を伴う上、途上国の債務返済猶予の二一年末までの延長などでも加盟国間の溝は埋まっていない。とくに中国は、債務返済猶予で一方的に負担を迫られることを警戒している。コロナ禍で危機が深まるなか、国際協調は依然として難しい。

中国、活発な中東外交
 中国の王毅・国務委員兼外交部長は三月三十日、中東六カ国歴訪を終えた。サウジアラビアとは協力関係発展を確認、トルコとは新型コロナウイルス対策の協力を進めることや「一帯一路」構想での連携で合意した。イランとは二十五年の包括的協定を締結した。アラブ首長国連邦(UAE)では、同国内でのワクチン製造協力で合意した。さらにオマーンとバーレーンを訪問した。米国が中東での影響力を低下させるなか、中国は戦略的外交を進めている。

人民のたたかい

(3月30日〜4月9日)

 英国ロンドンやリヴァプールなど数十市で三日、警察によるデモ規制権限の拡大法案に反対するデモが行われた。行動は「法案を廃案にしろ」を合言葉に全国に広がっている。
 米国ニューヨークで四日、アジア系住民へのヘイト犯罪に抗議するデモ行進が行われた。
 メキシコのメキシコシティーで二日、数百人の女性が警察官による暴力に反対してデモ行進を行った。同国の観光地で、エルサルバドルからの移民女性が警官に殺害された事件が契機。
 キルギスで八日、警察が女性を誘拐・殺害した犯人を取り逃がしたことに抗議するデモが行われた。
 韓国のソウルで三月三十一日、「最低賃金連帯」がコロナ禍での生活難を打開するための最賃引き上げを求めた。この二年間、引き上げ水準は歴代最低水準となっている。


日本のできごと

(3月30日〜4月9日)

初のまん延防止措置適用、失政の結果
 政府は四月五日、新型コロナウイルス対策で緊急事態宣言に準じた措置がとれる「まん延防止等重点措置」を大阪、兵庫、宮城の一府二県で適用した。同措置は二月に施行した「改正」特別措置法で新設、適用となるのは今回初めて。緊急事態宣言時と同等の対策を知事に認め、知事は対象地域を指定し時短営業などの要請・命令が可能となる。従わない場合は過料を科すことができる。大阪などで感染力が強い変異ウイルスの感染者が増加したことが背景。変異ウイルス流入を水際で食い止められなかった失政の結果だが、その後も変異ウイルス検査は遅々として進まず、国や自治体の対策の圧倒的な遅れの後始末をあげて飲食店などに押し付ける施策。一方で開催中の通常国会では病床削減の推進や高齢者の医療費を倍化する法案成立に血道をあげるなど、菅政権や自公与党の悪政・失政はとどまるところを知らない。

仏とクアッドがベンガル湾で共同訓練
 海上自衛隊は五日、フランスが主導し米国やオーストラリア、インドなどが参加するベンガル湾での海上共同訓練に参加した。同湾はインド洋の北東部にあたるが、フランスはインド洋の海外領レユニオン島などに海軍基地を持つ。日米両国は、日米豪印の戦略的な枠組み「クアッド」の枠組みを欧州にも広げるよう策動し続けており、同訓練には南シナ海からインド洋を結ぶシーレーン(海上交通路)を確保したい中国を強くけん制する狙いがある。

対朝鮮制裁、2年延長を決定
 菅政権は六日、十三日に期限を迎える朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への独自制裁を二年間延長すると閣議決定した。国連安全保障理事会の決議による措置ではなく日本政府が独自に判断して科していたもので、二〇〇六年に発動し、対象を広げながら延長を繰り返してきた。輸出入の全面禁止に加え、朝鮮に寄港歴がある船を含むすべての船舶の入港禁止を続ける。敵視一本やりの対朝鮮外交は菅政権になっても変わらず、東アジアの平和に背を向ける蛮行だ。

4月からの負担増、国民生活を圧迫
 一日から国民負担増となる制度改正が始まった。公的年金の支給額は二〇年度比で〇・一%減らされる(六月支給分から)。マイナス改定は四年ぶりで、指標となる二〇年の物価低下が影響した。また六十五歳以上の人が払う介護保険料も各地で大幅に上がった。商品やサービスの価格表示を消費税額込みで示すことを強いる総額表示義務化に合わせた値上げや、コンビニATMの手数料値上げも行われた。コロナ禍で非正規労働者など低所得者の生活が苦しくなるなか、国民負担増につながる制度改定が重なり、菅政権下で生活はいっそう圧迫されている。

学術会議、任命拒否問題で反撃
 日本学術会議の会員候補六人を菅首相が任命しなかった問題に端を発した学術会議のあり方の議論で、同会議の幹事会は八日、昨年末から検討してきた組織見直し案について、国の特別の機関である今の組織形態を変更する積極的理由を見い出せないとする報告書案をまとめた。ナショナルアカデミーとしての役割を発揮するには、現在の国の特別機関として位置づけられた上で、政府からの独立と自律が法で保障されている組織が最も望ましいとし、組織改革攻撃を仕掛ける菅政権や与党に反撃した。また会見した梶田会長は「任命拒否問題に進展がない」として、理由を明らかにするよう政府に情報開示請求する意向を示した。同会議への攻撃で思想・言論統制をもくろむ菅政権には打撃だ。

男女格差、政治分野で特に顕著
 世界経済フォーラム(WEF)は三月三十一日、国別に男女格差を数値化した二一年のジェンダーギャップ指数を発表した。日本は調査対象となった世界百五十六カ国のうち百二十位で過去二番目に低く、主要七カ国(G7)では引き続き最下位となった。WEFはダボス会議を主催する国際機関で、経済・教育・医療・政治の四分野で格差を分析している。日本は政治と経済の分野が著しく低く、政治は百四十七位、経済は百十七位で、教育も九十二位と他国より遅れが目立つ。日本は〇六年に指数発表が始まってから低迷が続いており、政権与党の責任はきわめて重い。


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