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労働新聞 2021年3月25日号 トピックス

世界のできごと

(3月10日〜3月19日)

米中協議、米は「人権」で攻撃
 ブリンケン米国務長官と楊・中国共産党政治局員らが三月十八日、米アラスカで協議を行った。バイデン政権成立後、米中外交当局の会談は初めて。長官は冒頭発言で、新疆ウイグル、香港、台湾やサイバー問題を取り上げて「経済的威圧」「深い懸念」などと難クセを付けた。中国側は「内政干渉に断固として反対」と反論し、黒人問題を取り上げて「米国こそ人権でより良い対応を取る」ことを指摘した。また、中国側はトランプ前政権下で実施された制裁や輸出規制の解除を含めたが、米側は明言を避けた。「人権」を軸に中国への攻撃を強めようとする、バイデン政権の態度が如実に示された。

クアッド、米韓で包囲網を策動
 アラスカでの米中会談を前に、米国は対中包囲網づくりに腐心した。日、米、オーストラリア、インドの四首脳(クアッド)は十三日、初の首脳会議を開き共同声明を発表した。「自由で開かれたインド太平洋」での結束をアピール、コロナ対策ワクチンの製造体制や気候変動対策などの作業部会設置で合意した。ただ、インドに配慮して中国を名指しすることはできなかった。また、米国と韓国の外務・国防閣僚会議(2+2)が十八日、ソウルで開かれた。ブリンケン米国務長官は朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の「人権」問題を非難、「非核化」を主張した。だが、対中関係を重視する韓国に配慮し、共同声明には「中国」と明記できなかった。国際環境は激変、米国の対中包囲網づくりは容易ではない。

バイデン大統領、景気対策に署名
 バイデン米大統領は十一日、一兆九千億ドル(約二百十兆円)規模の新型コロナウイルス経済対策法案に署名した。年収七万五千ドル(約八百十万円)以下の国民への現金再給付、失業給付増額の延長、州政府への支援などの内容。財政規模は史上二番目の規模で、深刻な国内矛盾の緩和を狙ったもの。二〇二二年の中間選挙を見据えたものでもある。ブーシェイ大統領経済諮問委員会(CEA)委員は「格差を食い止める」などと勇むが、階級矛盾の解決に結びつくはずもなく、インフレを起こして低所得者層をさらに苦しめる可能性がある。政府財政赤字もさらに拡大する。

FRB、23年までの緩和を表明
 米連邦準備理事会(FRB)は十七日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開いた。会合では、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の〇〜〇・二五%への据え置きなどゼロ金利政策の維持、米国債購入などの量的緩和政策継続を決めた。パウエル議長は、少なくとも二三年末までゼロ金利政策を維持する方針を表明した。また、二一年中に物価上昇率が二%の目標を超えると予想したが、「一時的なもの」とした。コロナ禍以前と比して雇用者数は九百五十万人も少ないなど、国内事情は深刻。世界経済のバブル化をさらに促進させて危機を深めるものだ。

人民のたたかい

(3月10日〜3月19日)

 インドの国営銀行の九つの労働組合が十五日、民営化方針に反発してストライキに入った。二日間で約百万人が参加、店舗閉鎖や人員削減、給与カットにつながると抗議した。インドには十二の国営銀行があり、うち二つの民営化が計画されている。  スペインで十四日、医療従事者五千人がコロナ対策の強化を求めてデモ行進を行った。  韓国のソウルで十日、コロナ禍を口実に整理解雇されたアシアナ航空下請労働者らが復職を求め闘争に入ってから三百日が経過した。労組と支援団体は座り込みで闘争継続を表明した。  イエメンのアデンで十六日、公共サービスの劣悪化に抗議するデモ隊が大統領宮殿に突入した。  英国のロンドンで十五日、警官による女性への暴力に抗議して議会前で集会が行われた。


日本のできごと

(3月10日〜3月19日)

東日本大震災から10年、復興遠く
 三月十一日、東日本大震災から十年を迎えた。菅首相は式辞で「復興の総仕上げの段階」などとの現状認識を示したが、被災地では高齢化や過疎化が進み、コロナ禍も加わり生活や産業は困難な状況が続いている。国は「十年の復興期間」の終了に伴い支援策を縮小・打ち切る方向だが、実態を無視し支援を打ち切ることは許されない。また東京電力福島第一原発事故は収束のメドさえ立たず、増え続ける汚染水と海洋放出問題も残されたまま。国には長期に福島への支援を継続・強化する責任があり、被災者支援の抜本強化こそが求められている。

NTT接待、歴代総務相にも疑惑
 NTTによる総務省をめぐる高額接待問題で、幹部職員にとどまらず、野田自民党幹事長代行や高市衆院議員などの歴代総務相も高額接待を受けていたことが十一日に報じられた。二〇一八年から三年間の政務三役への接待が二十六回で、その前の三年間の三倍近い頻度で行われていたという。菅首相が官房長官当時、携帯電話料金の大幅引き下げを求めた時期や、競争激化で利益率が業界三位に転落したドコモをNTTが完全子会社化してテコ入れする動きを強めた時期にも重なる。通信行政に関係する与党議員が接待にどっぷり漬かり行政をゆがめた疑いは濃厚。同省の谷脇前総務審議官が十六日に辞職したが、幕引きは許されず、徹底的な真相解明が求められている。

日米2プラス2、中国敵視前面に
 日米両政府は十六日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。共同文書では、中国の「既存の国際秩序と合致しない行動」に警鐘を鳴らし、海警法や尖閣諸島、台湾海峡、南シナ海、香港及び新疆ウイグル自治区の「人権」状況などに「深刻な懸念を共有」などと、敵視モードを高めた。日本を中国包囲網の最前線にする策動が進んでいる。

病床削減促進の悪法案が国会審議入り
 医療法等改定案が十八日、衆議院本会議で審議入りした。病床削減や病院統廃合を行った医療機関に全額国費で給付金を配り、その原資に消費税増税分を充てる仕組みの本格導入や過労死ラインの二倍の年千八百六十時間の時間外労働を容認するなど、病床削減を促進し長時間労働を容認することが柱。コロナ危機の下で抜本的強化が求められる医療体制を逆に縮小・弱体化させる内容で、許しがたい。

3年7カ月ぶりに米牛肉セーフガード
 政府は十八日、日米貿易協定に基づき米国産牛肉に緊急輸入制限措置(セーフガード)を発動した。二〇年の累計輸入量が発動基準の二十四万二千トンを超えたためで、三十日間、関税を現行の二五・八%から三八・五%に引き上げる。米国産牛肉への発動は一七年八月以来、三年七カ月ぶり。今後は発動基準数量について米国と協議されるが、生産者を守り国内の増産に支障が出ないよう、輸入急増に歯止めをかける防波堤の効果を維持するため、安易な妥協は許されない。

自殺者11年ぶり増、女性や若者増
 警察庁と厚生労働省は十六日、二〇二〇年の自殺者数(確定値)を発表した。前年比九百十二人増(四・五%増)の二万千八十一人と、リーマン・ショック後の〇九年以来十一年ぶりに増加した。男性は十一年連続で減少したのに対し、女性は二年ぶりに増加に転じた。年代別では、四十歳代が最も多く中高年層の割合が高かった一方、二十歳代が一九・一増と最も増加率が高かった。コロナ禍での経済的な苦境や孤立が背景にあるとみられる。政治の責任は重大であり、早急な対策が求められている。

大手軒並み低額回答、連合にも責任
 自動車、電機、重工などの大企業は十七日、労働組合の春闘要求に対し集中回答した。自動車では業績好調のトヨタが定期昇給も含む総額九千二百円で、ベアを含むか明らかにしていない。日産もベア分は示さず平均月七千円で、ホンダ、マツダ、三菱自動車はベア要求そのものを見送った。電機では、二千円の統一要求に対し十一社が千円にとどまった。ベアと定昇を合わせた賃上げ率が二%を割れば一三年以来。業績好調でも賃金を抑制する動きが広がり、これを許す連合指導部の責任は重大だ。


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