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労働新聞 2021年3月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月1日〜3月9日)

全人代、「中等先進国並み」目標
 中国で三月一日、全国人民代表大会が開催した。李克強首相は政府活動報告でコロナ対策の成果とプラス成長を維持したことを強調した。併せて、二〇三五年に「一人当たり国内総生産(GDP)を中等先進国の水準に」との長期目標を示した。一人当たりGDPが二〜三万ドルに相当する。二五年までの第十四次五カ年計画も公表、成長率目標は見送り、米国の対中包囲網を見据えて内需中心の成長をめざすとした。香港や台湾、ウイグル問題については「高度に警戒する」と強調、香港では米欧などの干渉を排した形で新たな選挙制度を導入する方針を示した。米バイデン政権の対中包囲網に対峙していく姿勢を前面に打ち出した。

米、新政権の「安保戦略」策定へ
 ブリンケン米国務長官は三日、バイデン政権の外交軍事、経済政策の基本となる「国家安全保障戦略」の策定に向けた指針を公表した。国務長官は外交の優先課題としてコロナ対策とともに、中国を名指しし「ルールや価値観を弱体化させている」と決め付けた。ロシアや朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)、イランへの敵視政策の継続も明言した。また「同盟国や友好国との関係を復活させる」など、トランプ前政権からの「転換」を印象付けた。強い文言が並んだものの、対中関係で「二十一世紀最大の地政学的な試練」と危機感をにじませるなど、米一国では中国を抑え切れない現状を吐露した。

WTO、ワクチン供給で警鐘
 世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長(ナイジェリア出身)は、就任後初の演説を七日に行った。演説では途上国にコロナ・ワクチンのライセンス生産を許可し、世界の生産量を約三倍に増やすことを呼びかけた。南アフリカなどがワクチンや新薬について知財特許の放棄を求めていることに対し、米欧が反対していることを念頭に置いたもの。事務局長は速やかにワクチン接種できなければ世界経済は九兆ドル(約九百六十兆円)の損失を被ると警告した。WTOは米トランプ前政権が自国優先主義的な通商政策を打ち出すなどで苦境に追い込まれていた。コロナ禍が先進国と途上国との「命の格差」をいっそう広げている。

駐韓米軍経費負担増で合意
 米国ワシントンで開かれていた在韓米軍駐留経費負担をめぐる協議が七日に妥結した。今年の韓国側負担額は約一兆千八百三十三ウォン(約千百二十五億円、二〇一九年比約一四%増)で合意した。二二年は前年比五・四%増、二三〜二五年までには前年の韓国国防費と同率で増やすことも合意された。合意できずにいた二〇年は、一九年と同額の約一兆三百八十九億ウォンに据え置いた。八日には朝鮮を標的にした米韓合同軍事演習が始まった。春の合同演習は二年ぶり。コンピュータによる机上指揮所演習だが、朝鮮は「再三の警告に顔を背けている」と厳しく批判した。トランプ米前政権は朝鮮との「対話」を演出したが、バイデン政権は「対話」さえ後景化させて圧力を再び強め、駐韓米軍経費負担問題でも同盟国への負担増を踏襲した。

人民のたたかい

(3月1日〜3月9日)

 インドのニューデリーで六日、モディ政権が導入した農業改悪法の撤回を求める農民が高速道路を封鎖する実力闘争を行った。闘いはこの日で百日目を迎えた。
 ドイツで二日、金属労組IGメタルが四%の賃上げと雇用保障などの協定化を求めるストを開始した。
 パラグアイの首都アスンシオンで五日、有効なコロナ対策を打ち出さない政府を追及するデモが行われた。
 国際女性デーの八日、フランス・パリでは三万人が賃金格差の是正などを求めデモ行進した。オーストラリアのシドニーでは数百人の看護師、教育労働者などが州議会前で訴えた。ドイツ・ベルリンでは「沈黙を破り、世界を変えよう」とデモが行われた。



日本のできごと

(3月1日〜3月9日)

21予算案めぐり野党が組替動議
 二〇二一年度政府予算案(一般会計総額・百六兆六千九十七億円)をめぐり、野党が提案した組替動議が三月二日、衆議院本会議で自民・公明・維新の反対で否決された。本予算案は可決され、憲法の規定で年度内の成立が決まった。ただ、国民民主党の組替案は沖縄県辺野古への新基地建設を事実上容認している。一方、立憲・共産党による組替案は、生活困窮者への給付金などの再給付に加え、新基地建設費やマイナンバーカード普及費などの削減を含むものの、国民案にあった所得税の累進性・金融所得課税の強化を含まない。いずれも、菅政権の悪政への対抗軸にはなり得ていない。

緊急事態宣言が再延長
 菅首相は五日、新型コロナウイルス感染症をめぐり、七日までとしていた一都三県への緊急事態宣言を二週間再々延長することを表明した。二月の再延長決定時、菅首相は「早期解除」に言及していたが、完全に破綻した。感染を「収束」させて東京五輪を強行する構えだが、首都圏での感染者数は下げ止まりを見せず、展望はない。新たに高齢者施設での社会的検査の拡充などに言及したが、「遅きに失した」もの。変異株の感染も広がりつつある。悪政が感染拡大を招く悪循環だ。

デジタル改革関連法案が審議入り
 政府が提出したデジタル改革関連五法案が九日、国会で審議入りした。同法案はデジタル庁創設を柱とするもので、支配層が狙うデジタルトランスフォーメーション(DX)のためのもの。新型コロナウイルス対策での給付金支給の混乱や感染対策アプリの不具合など、デジタル化における日本の立ち遅れは顕著で、法改定で打開できる保証はない。関連法案には四十五カ所もの誤字や表記ミスが見つかるズサンさで、法案の体をなしていない。

韓国大統領が日本に対話を呼びかけ
 文在寅・韓国大統領は一日、日本の植民地支配に抵抗した「三・一独立運動」百二周年記念式典で演説した。大統領は「過去の過ちから教訓を得ることは、国際社会で尊重される道」と、侵略と植民地支配を美化するわが国保守政権をけん制しつつ、「日本政府と向かい合い、対話をする準備ができている」と関係改善を呼びかけた。わが国マスコミはいずれも「ボールは韓国側」という態度で、菅政権に関係改善のための努力を求めてさえいない。従軍慰安婦や元徴用工問題をはじめ、日本政府が誠実に対応してこそ、アジアで信頼を得ることができる。

総務省の腐敗が次々露呈
 武田総務相は八日、谷脇総務審議官の更迭・異動を発表した。総務省をめぐっては、菅首相の長男が所属する「東北新社」による幹部への接待に続き、同社の外資規制違反を見逃していたことも判明した。さらに、NTT幹部による接待も明らかになった。谷脇審議官らは「東北新社以外からの接待はない」と述べており、虚偽答弁は明白。谷脇氏は菅政権の目玉政策である「携帯電話料金引き下げ」を主導した人物。総務相当時の野田・自民党幹事長代行や高市衆議院議員らも接待を受けていたことも判明、安倍・菅政権による法令違反は「底なし」状態だ。

電事連、プルトニウム利用計画を説明
 電気事業連合会(電事連)、日本原燃、日本原子力研究開発機構は二日、内閣府原子力委員会にプルトニウム利用計画を説明した。同計画は十年ぶり、東京電力福島第一原発事故後初めての改定。電事連は原発の燃料にプルトニウムを使う「プルサーマル」を四基から十二基に広げる予定だが、原発名は明記できなかった。従来からの原子力政策にあくまで固執する電事連の姿勢と、国民の批判の強さを考慮せざるを得ない苦境もあらわになった。

実質賃金が11カ月連続マイナスに
  厚生労働省は九日、毎月勤労統計調査(速報)を公表した。一月の実質賃金は前年比〇・一%減、十一カ月連続のマイナスとなった。名目賃金は二十七万二千九百七十二円で〇・八%減、十カ月連続の減少。とくに、残業代に相当する所定外給与が同六・六%も減った。ボーナスなど特別に支払われた給与も一二・七%の大幅減。緊急事態宣言再発令で、国民生活は痛めつけられる一方だ。二一春闘で大幅賃上げを勝ち取ることが求められている。


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