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労働新聞 2021年2月15日号 トピックス

世界のできごと

(1月30日〜2月9日)

バイデン外交演説、中国への対抗明言
 バイデン米大統領は二月四日、外交政策について初の演説を国務省で行った。大統領は中国・ロシアを名指しし「米国に対抗しようとする中国の野心」「民主主義にダメージを与え混乱させようとするロシアの意思」などと、対抗姿勢を鮮明にさせた。また「米国は戻ってきた」と、環境問題などでの「国際協調」の姿勢を演出した。ドイツ駐留米軍の大幅削減計画の凍結も表明した。トランプ前大統領の「米国第一主義」を転換させるかのようだが、低下した国際的威信を挽回させることは困難で、中ロへの対抗も首尾よく進む保証はない。

米欧、ミャンマー再制裁へ
 バイデン米大統領は一日、軍部によるクーデターが発生したミャンマーへの制裁を検討する声明を発表した。大統領はミャンマー国軍を非難、「権力を直ちに放棄」することを求めた。中国に対するものと同様に「民主」「人権」を口実にした国際政治を強化しようとする、バイデン政権の性格を示すもの。ミシェル欧州連合(EU)大統領も同日、クーデターを「強く非難」する声明を公表している。その後、米国は軍司令官ら十人・三団体に対して資産凍結などの制裁を強行した。だが、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国は「内政不干渉」の態度を維持している。米国は、歴史的に関係が深い中国・ミャンマー間を分断すべく二〇一六年に制裁を解除しただけに、再制裁へのジレンマは深い。

「人権」理由にロシア制裁を準備
 欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は九日、ロシアのプーチン政権を「憂慮すべき権威主義」などと呼び、同国への追加制裁について「具体的な提案を行う」と述べた。同国の反体制派指導者への実刑決定などを理由としたもの。またロシアは、反体制派によるデモに参加したことを理由に、ロシアとドイツ・ポーランド・スウェーデンの外交官を「国外追放」し、これに三カ国が報復する事態になった。EU加盟国は、三月下旬の首脳会議で対応を決める予定だ。

ダボス会議、米国の孤立あらわ
 世界経済フォーラム(WEF)によるオンライン会合「ダボス・アジェンダ」が一月二十九日、閉会した。今会議は、シンガポールで開く年次総会(ダボス会議)の準備会合で、テーマは「信頼回復に向かう重要な年」。ただ、年次総会は八月に再延期された。バイデン米新大統領の「国際協調」に期待する首脳がいる一方、メルケル独首相がデジタル課税問題で注文を付けるなど、米国への不信感もにじみ出た。中国とロシアは、「単独主義や自己陶酔でごう慢になるいかなるやり方も必ず失敗する」(習近平主席)、「一極集中型の世界秩序をつくろうとする時代は終わった」(プーチン大統領)と、米国を強くけん制した。米国の孤立がいちだんとあらわになった。

人民のたたかい

(1月30日〜2月9日)

 全インド電力エンジニア連盟(AIPEF)が三日、電力民営化につながる電力法改定案に反対してストライキを行った。
 インドで農業関連新法に反対して一月三十日、農民有志がハンガーストライキに突入した。モディ政権が法成立へ強硬姿勢を崩さぬなか、二月六日には全国で道路封鎖行動が闘われた。
 韓国のソウルで二月一日、国民健康保険公団の労働者が労働条件改善と窓口直営化などを求めてストライキに突入した。ストには約千人が参加した。
 韓国で五日、民主労総が第七十二回定期代議員大会を開催した。昨年十一月のゼネストなどを成果として確認、二一年の方針として放送局事業などのメディア戦略強化や青年労働者対策の強化などを決定した。

日本のできごと

(1月30日〜2月9日)

緊急事態宣言延長も新たな補償なし
 菅首相は二月八日、東京など十都府県への緊急事態宣言を延長した。期間は三月七日まで。解除されたのは栃木県のみ。会見で首相は状況の改善した地域から順次解除する方針を示したが、新規陽性者数は高止まりが続いており、医療ひっ迫の道筋は示せず、この場に及んでもPCR検査拡充にはまったく触れなかった。夜八時以降の営業時間短縮を要請される飲食店への一日最大六万円の協力金の増額や、持続化給付金と家賃支援給付金の再支給も行わないなど、コロナ感染拡大の犠牲を挙げて労働者や事業者に押し付けるものだ。

特措法改悪、弾圧強化策こそ本質
 インフルエンザ特別措置法や感染症法などの改悪案が三日、参議院本会議で可決・成立した。自公与党に加え、立憲民主党も賛成した。入院や感染経路の調査を拒否した者に対し、当初案にあった刑事罰(懲役)は撤回されたが、行政罰としての過料が課される。営業自粛などの要請に応じない事業者にも過料を課すことも可能となる。わが国支配層は階級矛盾の深まりを見越して事あるごとに弾圧強化の法整備をもくろんでおり、事実上の戒厳令合法化を切望している。コロナ禍に乗じた今改悪もその一歩で、成立に加担した立民や、それを批判しない共産党の罪も重い。

自公与党議員が深夜飲食も責任取らず
 与党国会議員が緊急事態宣言下の深夜に銀座で会食を行っていた問題で、公明党の遠山前幹事長代理が一日、衆議院議員を辞職した。自民党の田野瀬文科副大臣、松本前国対委員長代理、大塚国対副委員長の三人の衆議院議員は離党届を提出した。労働者や事業者への多大な犠牲の押し付けでコロナ感染拡大防止に「協力」を強いる一方、自らは平然とそれを軽んじる姿勢には危機感も責任感も皆無。自公与党に政権担当の資格がないことは、この一件だけからも明白だ。国民の怒りは当然で、離党でお茶をにごすなど論外である。

英がTPP参加申請、中国包囲の一環
 英国は一日、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を申請した。実現すれば発足時のメンバー国以外で初。従来から日本政府が呼びかけていたもので、「英国はわが国と基本的価値を共有するグローバルな戦略的パートナー。ハイスタンダードなルールをアジア太平洋を越えて広げる大きな可能性を秘めている」(西村経済再生担当相)など、中国に対抗する経済的連携結束の狙いをにおわせた。そもそも、TPPは中国を経済的に包囲する狙いで米国が主導した枠組みだが、トランプ前政権時に米国が離脱した。わが国政府が米国の「遺訓」に沿って中国対抗にまい進している格好で、英国の加盟推進もこの一環だ。

日経平均30年ぶり高値も好景気遠く
 日経平均株価が八日、東京市場では三十年六カ月ぶりに二万九千円台を回復した。コロナ対応の巨額の経済・金融政策が打たれているところにワクチン接種の進展などが加わり、投資家内に「経済正常化」による景気回復期待が広がったことでマネー流入が加速した。株価上昇の過熱ぶりはバブル期並み。政府の財政支出や日銀による異次元金融緩和によるマネーは一部富裕層に利益をもたらす一方、大多数の国民は好景気とは程遠い現状に置かれ、「格差」はますます開いている。菅政権のコロナ対策が勤労国民をいっそうの苦難に追い込んでいることの証左だ。

消費支出落ち込み最大、格差拡大も
 総務省は五日、二〇二〇年の家計調査発表した。二人以上の世帯の消費支出は月平均で二十七万七千九百二十六円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年から五・三%減った。減少は二年ぶりで、落ち込み幅は比較可能な〇一年以降で最も大きかった。コロナが感染拡大の影響で旅行関連や外食、衣料品などへの支出が大きく落ち込んだ。一方、収入は二人以上の勤労者世帯の月平均で六十万九千五百三十五円と前年比四・〇%増え、可処分所得も前年から四・六%増の月平均四十九万八千六百三十九円となった。困窮する国民が多くいる一方で貯蓄の余裕がある国民が多いことを示すもので、格差解消と国民生活を守る政治が急務であることを示している。


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