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労働新聞 2021年1月25日号 トピックス

世界のできごと

(12月10日〜1月19日)

米議事堂占拠、無様な米国流「民主」
 米国ワシントンで一月六日、トランプ大統領の支持者らが連邦議会を包囲し、一部が議事堂へ突入した。警官一人を含む五人が死亡、夜間外出禁止令が発令され、州兵が出動する事態となった。議事堂では、各州選挙人による投票結果を集計するための上下両院会議が開かれていた。トランプ大統領は「不正」を騒いで抗議デモを扇動した。米国内外から「責任はトランプ氏にもある」(メルケル独首相)などと非難が殺到している。下院では大統領への弾劾訴追決議案が可決され、新政権の下で上院で弾劾裁判が開かれる。他国に「民主」を押し付ける米国だが、足元の混乱は無様そのもので、世界から呆れられている。

米、再度の大規模財政出動計画
 バイデン米次期大統領は十四日、一・九兆ドル(約二百兆円)規模の新型コロナウイルス感染症対策を示した。減税、一人当たり千四百ドル(約十四万五千円)の追加現金給付、失業給付特例加算の九月までの延長、最低賃金引き上げなどが内容。財政出動規模は、トランプ政権による対策と合わせて約六兆ドル(約六百二十三兆円)に達する。感染拡大が収まらないだけでなく、議事堂突入事件などの社会的危機への対処に迫られたもの。だが、財政赤字はますます深刻化、バイデン新政権は手を縛られることになる。

米、政権移行期に対中制裁強化
 トランプ米政権は十三日、中国・新疆ウイグル自治区で生産された綿製品や一部野菜の輸入を禁じた。従来から特定企業からの輸入を禁じていたが全域に広げた。ウイグル族への「強制労働」が口実だが、米国の輸入企業にも打撃を与える。また、スマートフォン大手の中国・小米(シャオミ)など九社を人民解放軍と関係が深い企業のリストに追加、米国人による株式投資を禁じた。国有石油大手には禁輸措置を課した。政権交代直前の対中圧力で、新政権下でも多くは引き継がれよう。

米、台湾との関係拡大へ
 ポンペオ米国務長官は九日、台湾との間で外交官や軍人の接触を制限してきた内規を撤廃すると発表した。トランプ政権は中国包囲の狙いから、台湾との関係を拡大させてきた。昨年十一月には、米海兵隊が四十年ぶりに台湾で訓練を開始、クラフト国連大使による初の台湾訪問計画も発表した。台湾関係法以上の関係拡大で、「二つの中国」の立場を強めるもの。米国による対中内政干渉には際限がない。

イスラエルがシリアを大規模空爆
 イスラエルは十三日、シリア国内にあるイラン関連施設に十数回に及ぶ大規模な爆撃を行った。イスラエルの隣国シリアで、イランの影響力が拡大することを防ぐ狙い。空爆はトランプ米大統領の退任直前、ポンペオ米国務長官がイランを「最大のテロ支援国」と決めつけた翌日に強行された。空爆は「トランプ後」を見据え、バイデン新政権をけん制するものでもある。中東の混乱は、新政権にも難題だ。

中国EU、投資協定で合意
 中国と欧州連合(EU)は十二月三十日、包括的投資協定(CAI)で大筋合意した。経済規模で世界二位と三位の結び付きが強まる。合弁会社の要件を段階的に廃止、EU企業の中国参入制限が緩和される。中国は国有企業への補助金の透明性を高め、紛争解決メカニズムも設ける。EU側は中国の「強制労働」を問題視したが、中国が国際労働機関(ILO)関連条約の批准を約束して折り合った。東アジア包括的経済連携(RCEP)に続き、米新政権の発足を前に、中国の存在感が高まっている。EUも独自の戦略外交を強め、中国への参入を急いでいる。

英EU、辛くもFTA合意
 英国とEUは二十四日、自由貿易協定(FTA)などで合意した。ギリギリの合意で、関税復活による経済へのショックは辛うじて避けられた。ジョンソン英首相は「国の運命の主導権を取り戻した」と勇んだが、物流停滞などは不可避的。安全性基準など未合意のものも多い。「金融大国」の英国だが、二〇一六年の国民投票以降の混乱で、同国市場の世界株価指数に占める比率は一六年の一〇%から四%に低下している。英国は各国とFTA締結を進めるが、存在感低下は不可避的だ。

ECB、半年ぶり緩和追加策
 欧州中央銀行(ECB)政策理事会は十二月十日、追加緩和を決めた。半年ぶりの追加策で、資産購入の特別枠(PEPP)を五千億ユーロ積み増して一兆八千五百億ユーロ(約二百三十兆円)とし、期限も二〇二一年六月末から二二年三月末に延長する。マイナス金利(▲一%)での銀行への貸し出し(TLTRO)も一年延長し二二年六月までとする。コロナ禍による景気悪化を理由としたもの。ECBの総資産は、約一年前のラガルド総裁就任から四割以上も急拡大している。米連邦準備理事会(FRB)、日銀と合わせた緩和マネーが株式や不動産などに流れ込み、バブルを膨らませている。

コロナ死者が2百万人突破
 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計で、新型コロナウイルス感染症の死者が一月十五日、世界で二百万人を超えた。昨年九月末に百万人を超えてから三カ月半で倍増、十万人増えるのに七日しかかからず過去最短。感染者は九千三百万人を超え、九月末の三倍以上。各国で医療がひっ迫、「格差」は拡大、人民の苦難は増している。

人民のたたかい

(12月10日〜1月19日)

 ドイツで十二月二十二日、米アマゾンの労働者千七百人が賃上げを求めてストライキに突入した。
 インド南部のカルナータカ州で十四日、中国・台湾の製造大手ウィストロンの工場でストが発生した。参加者は二千人に達した。
 韓国で二十四日、家具量販大手イケアの労働組合が待遇改善を求めてストに入った。全従業員の約半数にあたる七百五十人が参加した。
 韓国のソウルで一月七日、重大災害企業処罰法制定運動本部が、文政権による労災被害者家族への補償範囲を狭める法案に抗議した。
 米国ロサンゼルスなど十五都市で十五日、ファストフード店で働く労働者が、最低賃金の時給十五ドル(約千五百六十円)への引き上げを求めてストに突入した。

日本のできごと

(12月10日〜1月19日)

再び緊急事態宣言も抜本対策は皆無
 菅政権は一月七日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言を発令した。首都圏一都三県が対象で、十三日には近畿・東海・九州の十一都府県に拡大した。期間は二月七日まで。「このままでは医療壊滅」(中川日本医師会会長)という危機に迫られた対応。発令は四月に続く二度目だが、責任を「若者の外出や飲食」に感染拡大の押し付けるもの。肝心の検査・医療の支援拡充などは不十分な一方、感染拡大の一端となった「GoTo」は「再開をめざしたい」(赤羽国交相)と意欲を示した。国民の命と生活を危機に追い込む菅政権の不支持率は半数を超えるが、怒りは当然だ。

通常国会召集、苦境にじむ施政方針
 第二〇四通常国会が十八日、召集された。施政方針演説を行った菅首相は、コロナ感染防止対策を優先する姿勢を示したが、感染再拡大に対する失政への反省は皆無。再度の給付金支給など国民生活を救うための施策もなかった。財界の求める規制改革、米国と歩調を合わせた「自由で開かれたインド太平洋」などの外交指針も改めて掲げた。内外の危機がコロナ禍で深刻化するなかで支持率は急落、政権の苦境を示す内容だ。

21予算案、9年連続過去最大更新
 菅政権は十二月二十一日、二〇二一年度政府予算案を閣議決定した。十五日に決定された二〇年度第三次補正予算案と併せ「十五カ月予算」と位置付ける。一般会計総額は百六兆六千九十七億円で、九年連続で過去最大を更新。軍事費に過去最大の五兆三千四百二十二億円を投入する一方、社会保障費の自然増を千三百億円削減した。持続化給付金などの再支給は盛り込まれず、コロナ禍による医療機関の減収補てんもなかった。また予備費五千億円と別枠でコロナ対策予備費として五兆円を計上、政権にフリーハンドを与えている。国民生活の救済には程遠い。

安倍氏が「桜」弁明、幕引き図る
 安倍前首相は十二月二十五日、衆参の議院運営委員会で「桜を見る会」前日に開かれた夕食会の費用補填(ほてん)問題について説明した。事実と異なる説明をしたことについて「おわび」を口にする一方、後援会の費用補填については「知らなかった」などと言い訳に終始した。安倍氏がこれまで「事務所は関与していない」などと虚偽の答弁をしたのは衆議院調査局の調査で少なくとも百十八回にのぼり、政治責任は重大だ。また有権者への寄付を禁じた公職選挙法違反や、政治資金収支報告書の虚偽記載という政治資金規正法に反することは疑いがない。東京地検特捜部は、後援会代表である公設第一秘書を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴する一方、安倍氏本人は不起訴としたが、こんな幕引きは許されない。

税制改正大綱、大企業支援策を列挙  自公与党は十日、二〇二一年度の税制改正大綱で合意した。「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環を図る」として、脱炭素やデジタル化を企業への投資減税や研究開発減税の拡充や、産業構造の変革のための合併・買収の推進措置、国際金融都市に向けた税制上の措置などが列挙されたほか、コロナ禍で打撃を受けた経済の下支えを名目に住宅や自動車の減税措置の延長されるなど、大企業支援策が列挙された。一方で、国民の要望が多い消費税減税は盛り込まれなかった。コロナ禍の中で苦境にある国民をよそに、自公与党は大企業支援に血道をあげている。

後期高齢者の医療2割負担導入狙う
 政府の全世代型社会保障検討会議は十五日、最終報告案を閣議決定した。七十五歳以上の高齢者の医療費窓口負担について、二割負担の対象を、単身世帯で年収二百万円以上、夫婦とも七十五歳以上の世帯で年収三百二十万円以上とした。開始は二二年十月から二三年三月までの間とした。菅政権は「若い世代の保険料上昇を少しでも減らす」などと説明するが、高齢者の医療費を若い世代に肩代わりさせる後期高齢者医療制度を導入したのは自公政権で、議論を世代間問題にすり替えることは許されない。

代替イージス艦や「敵基地攻撃」決定
 菅政権は十八日、ミサイル阻止に関する新たな方針を閣議決定した。秋田・山口両県への配備を断念した陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替としてイージス艦二隻の新造を明記した。また「敵基地攻撃能力」保有は明記しなかったが、陸上自衛隊の十二式地対艦誘導弾(SSM)の射程を大幅に伸ばし、事実上の敵基地攻撃能力である「スタンド・オフ・ミサイル」として開発、また航空機や艦船からも発射可能にする方針も盛り込んだ。将来的な敵基地攻撃能力の保有をにらんだ動きで、アジアの緊張を高める日本の軍事強大化の一環だ。

破たん鮮明もIR基本方針決定
 菅政権は十八日、IR(カジノを中核とする統合型リゾート)の基本方針を決定した。日本のIRの制度設計や最大三カ所とされるカジノ設置地域の選定基準などを定めたもの。同時に誘致自治体が国に申請する期間を二一年十月からに九カ月間遅らせる政令も閣議決定した。同方針は、一九年十二月に秋元元内閣府IR担当副相が逮捕されるカジノ汚職事件が発覚、決定が見送られてきた。しかしコロナ禍を受けて、世界最大のカジノ企業である米ラスベガス・サンズが日本進出断念を決定するなど、大阪府・市や横浜市などの誘致のもくろみは風前の灯火となっている。安倍前政権が「成長戦略の目玉」として進めたIR推進を引き継ぐ菅政権だが、破たんを認めるべきだ。

中国にらみ外相が中南米アフリカ訪問
 茂木外相は一月四〜十四日、中南米とアフリカの八カ国を訪問した。大規模なインフラ投資や貿易を通じ中南米やアフリカへの関与を強めている中国の動きをにらんだもので、各国で「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を訴え、「ルールに基づく国際秩序の維持・拡大」に向けた連携強化を確認した。しかしコロナ禍の中での外遊には与党内からも批判の声が出た。政権移行期の米国の「不在」の穴を埋めるもくろみだが、米国の手先外交は真の国益につながらない。


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