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労働新聞 2020年12月5日号 トピックス

世界のできごと

(11月20日〜11月29日)

G20、ワクチンで米孤立
 二十カ国・地域(G20)首脳会議が十一月二十一、二十二日に開かれた。首脳宣言では、コロナ禍による世界経済の「成長回復へあらゆる努力を惜しまない」とし、ワクチンへの「公平なアクセス」に努めることも盛り込まれた。新興諸国の債務返済猶予に、民間債権者が協力することも呼びかけた。だが、米国はワクチンの「囲い込み」を進め、途上国は「後回し」。トランプ大統領は会議のさなか、ゴルフに興じた。他方、中国は「ワクチン外交」を強化、優先供給協定をマレーシアと結んだ。バイデン新政権でも深刻な国内対策を優先せざるを得ず、米国は世界のかく乱者となっている。

米、オープンスカイ条約から離脱
 米国務省は二十二日、軍事施設を上空から相互偵察できる領空開放(オープンスカイ)条約からの正式離脱を発表した。同条約は二〇〇二年に発効、冷戦期の米ロ間の緊張を緩和させるものと位置づけられてきた。トランプ政権は五月、ロシアの「条約違反」を主張して離脱の意向を示していたが、ロシアは違反の事実を否定、独仏なども離脱の「再考」を求めていた。米ロ間では中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効しており、今回の脱退で、軍事的緊張がさらに高まる可能性が高い。

FRB、資金供給策縮小を発表
 米連邦準備理事会(FRB)は二十日、コロナ対策として発動した中小企業向けの資金供給策などを、二〇年末で打ち切る方針を発表した。停止されるのは、中小企業向け融資、社債購入、資産担保証券への資金供給、州・地方債の購入で、当初枠は四兆ドル(約四百十五兆円)。トランプ政権が制度の延長を認めなかったことによるものだが、バイデン次期政権陣営は反発している。トランプ政権の「最後っ屁」ともいうべきものだが、失業給付特例なども失効するなか、新政権はさらに厳しい状況で船出する。

中韓外相会談、米国けん制
 訪韓した中国の王毅国務委員兼外相と康京和外相が二十六日、会談した。両外相は、日中韓首脳会談の開催と、日中韓自由貿易協定(FTA)協議を加速することも確認した。習近平国家主席の訪韓でも調整した。王外相は訪日に続く訪韓で、「世界には米国だけがあるわけではない」「中韓は守望相助(外敵に対して共に守る)の戦略的協力パートナー」「南北双方が真の朝鮮半島の主」と呼びかけた。韓国にとって最大の輸出入相手国である利点を生かしてひきつけることに加え、米日韓同盟にくさびを打ち込む狙い。中国の戦略的外交が目立っている。

人民のたたかい

(11月20日〜11月29日)

 フランス七十都市で二十八日、マクロン政権による警察官の撮影を禁止する法案に抗議し、五十万人以上が集会とデモを行った。警官による黒人への暴行事件も、反対世論を強めている。
 韓国のゼネラルモーターズ(GM)労組が二十三日、勤務時間半減のストライキに入った。二十日までの断続ストに続くもの。一八年以降の賃金凍結の撤回、定年延長などを求めたもの。起亜自動車労組も二十四日から、半減ストに入っている。
 韓国各地で二十三日、建設労組が労働災害を起こした企業を処罰する法整備を求めて座り込みを行った。  インド全土で二十六日、労組十団体による統一ストライキが始まった。二十五万人以上が参加、貧困家族への現金支給などを求めている。
 インドのハリヤナ州などで二十六日、農業改革に反発する農家がデモ行進した。モディ政権は、州市場での保証価格による農作物販売を自由化する法案を準備している。
 中国・台湾の台北で二十二日、蔡当局が米国産豚肉の輸入規制を緩和すると決めたことに対し、消費者団体など五万人が撤回を求めてデモを行った。

日本のできごと

(11月20日〜11月29日)

GoTo見直しも責任放棄変わらず
 菅首相は十一月二十一日、「GoToトラベル」の運用一部見直しなどを表明した。前日に政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が感染拡大地域の「適用除外」などを提言したことを受けた動き。だが、感染はすでに「第三波」に突入、陽性者激増で医療関係者からは早くから事業見直しを迫る声が相次ぐなか、あまりに遅く無責任な対応。しかも見直し地域は都道府県知事の判断に基づいて選定するとするなど、責任を自治体に丸投げし、「静かなマスク会食を」などと国民の努力頼みの姿勢にも変更はなかった。国民生活の実態に目を向けずGoToで一部大企業の利益だけを保証する菅政権は打倒しなければならない。

五輪追加経費2千億円、試算は過少
 東京五輪・パラリンピックの延期に伴う追加経費を大会組織委員会が約二千億円と試算していると二十九日に報じられた。追加経費には会場施設の追加利用料や営業補償費、組織委職員の人件費などが含まれる。来夏への延期を決めた三月時点では三千億円規模と見込まれていたが、大会の簡素化とコスト削減で約三百億円を圧縮した。この試算には、この先の感染状況が流動的などとしてコロナ対策費が含まれておらず、さらなる費用の追加は避けがたい。国民の苦難をよそに開催ありきで、天井知らずの血税投入をもくろむ菅政権は許しがたい。

国民投票法改定案、実質審議入り
 衆議院憲法審査会は二十六日、改憲手続きを定める国民投票法の改定案についての実質審議を始めた。同法は、改憲案が衆参両院でそれぞれ総議員の三分の二以上の賛成を得て発議された後、改憲の是非を問う国民投票の手続きを定めたもので、第一次安倍政権下の二〇〇七年に成立した。改定案は駅や大学、商業施設でも投票できる「共通投票所」導入など七項目からなり、一八年六月に提出されて以降は実質審議は行われていなかった。臨時国会での同審査会での採決は見送られたが、事実上の審議入りで手続きを一歩進めた形となった。コロナ禍でのドサクサ採決をもくろんだ菅政権や与党はもちろん、審議入り拒否を貫かなかった野党の罪も重い。

森友疑惑の国会質疑で虚偽答弁139回
 衆議院調査局は二十四日、学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐる国会質疑で、安倍政権下の政府答弁のうち事実と異なる答弁が計百三十九回あったと明らかにした。調査対象は一七年二月〜一八年七月に衆参両院で麻生財務相、佐川宣寿財務省理財局長(当時)らが行った答弁で、学園との応接録がありながら不存在とした答弁や、当初の賃貸方式の調整過程で学園側に貸付料の概算額を示していたのに提示していないとした説明など。同疑惑をめぐっては「桜を見る会」前夜祭の問題をめぐっても検察当局の動きが急で、国は安倍前政権による数々の悪行を糾明しなければならない。

イージス艦、地上案より2割超高額
 防衛省は二十五日、秋田・山口両県への配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」代替案の調査に関する中間報告の概要を自民党の関係部会に示した。代替四案のうち最有力とされているイージス艦型の場合、二十隻で約四千八百円を超え、陸上案の約四千億円を大きく上回り、その他の案でもいずれも陸上案を超える。しかもこれには迎撃ミサイルや維持整備費などは含まれておらず、さらなる血税投入は不可避。そもそも陸上案は米国のトランプ大統領から米国製兵器の追加購入を迫られて導入が決まったもので、米識者からもその狙いがハワイやグアムの防衛にあると指摘されている。代替案そのものをやめるべきだ。

中国外相来日、関係強化前進へ
 菅首相は二十五日、来日した中国の王毅外相と会談した。日中間のハイレベルの要人往来はコロナ拡大後初。茂木外相との会談では、ビジネス関係者などを対象にした両国の往来再開も決めた。日本側は沖縄県尖閣諸島をめぐる問題や日本産食品の輸入規制などについても言及したが、総じて日中関係強化の方向を強調した。政治・軍事面で米国による対中包囲網強化の前面に立つ菅政権だが、経済面での対中関係強化がわが国にとって不可避な課題であることを印象付けた。


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