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労働新聞 2020年11月5日号 トピックス

世界のできごと

(10月20日〜10月29日)

中国、「双循環」路線打ち出す
 中国共産党の第十九期中央委員会第五回全体会議が十月二十九日、閉幕した。会議では二〇二一〜二五年の「第十四次五カ年計画」の骨格を固め、三五年には「一人当たり国内総生産(GDP)を中等先進国(イタリアなどが相当)並み」との目標を掲げた。実現に向け、貿易を軸とする「外」と、国内消費など「内」を合わせた「双循環」を掲げた。対米摩擦の長期化を見据え、「国内の循環が主体」と位置づけ、「外需依存」からの転換を印象づけた。「国防の増強」も掲げた。二〇年の米欧などの成長率が大きく低下するなか、中国は自信を強めている。

欧州、コロナ禍再燃
 欧州で新型コロナウイルスの感染が再拡大、マクロン・フランス大統領は二十八日、全土の外出制限を十二月一日まで行うと発表した。ドイツでも、メルケル首相が飲食店などの営業を十一月二日から禁止すると発表した。イタリアは全土で飲食店の夜間営業を制限、スペインは非常事態宣言を再び発した。背景には、夏季休暇における移動制限緩和とされる。ユーロ圏の七〜九月期実質GDPは前期比一二・七%となったが、十〜十二月は再びマイナスに転じることが予想されている。

米、台湾に相次ぎ武器売却
 米政府は二十六日、台湾に対艦ミサイルなど総額二十三億七千万ドル(約二千五百億円)の武器売却を承認した。二十一日にも、空対地ミサイルなど総額十八億ドル(約千九百億ドル)の武器売却を決めていた。トランプ政権下、米国から台湾への武器売却は増え続け、最近ではF16戦闘機六十六機が売却された。総額は約百七十四億ドル(約一兆八千億円)に上り、台湾の軍事予算を大きく上回る。中国内政への干渉強化だ。中国はすぐに対抗、ロッキードなどに制裁を課した。

ポンペオ、対中対抗叫ぶが乏しい成果
 アジア歴訪中のポンペオ米国務長官は二十九日、インドネシアのジャカルタでジョコ大統領などと会談、経済協力など関係強化を確認した。長官は、南シナ海で中国と領海権を争うインドネシアを取り込む狙いで「中国共産党の不法な主張を受け入れない」などとした。だが、インドネシアは「困難な時期に包摂的な協力を模索する必要性」(ルトノ外相)と一線を画した。同国は七〜八月、南シナ海で活動する米哨戒機の領内での給油・着陸を拒否している。次の訪問先であるスリランカも「中立で非同盟」(グナワルダナ外相)と同調しなかった。中国包囲網の形成にやっきな米国だが、思惑通りには進まない。

WTO次期事務局長めぐり混乱
 世界貿易機関(WTO)は二十八日に開いた非公式会合で、空席の事務局長をめぐり、ナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相を推薦した。韓国の兪通商交渉本部長を支持する米国は、中国が支持するナイジェリア候補に反対、空席が続くこととなった。米国は昨年末、貿易紛争を処理する「上級委員会」の委員選考にも反対、WTOの機能停止をもたらしていた。国際機関のポストをめぐって台頭する中国への対抗を優先する米国の振る舞いに、世界は混乱させられている。

人民のたたかい

(10月20日〜10月29日)

 ハンガリーのブタペストで二十三日、オルバン政権による大学自治のはく奪に抗議する学生や教員のデモが行われ、約一万人が参加した。
 ポーランドのワルシャワで二十二日、憲法裁判所が妊娠中絶をほぼ禁止する判決を下したことに対して、女性を中心に約一万五千人がデモを行った。
 英国ロンドンで二十九日、コロナ禍で急増する貧困層の子どものために無料の給食を求めるデモが行われた。
 米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで二十六日、黒人男性が警官の射殺された事件に抗議するデモが行われた。

日本のできごと

(10月20日〜10月29日)

「実績づくり」焦る所信表明演説
 菅首相は十月二十六日、初の所信表明演説を行った。演説内容は、新型コロナウイルス感染症対策、規制緩和などの成長戦略、政治機構改革、外交・安全保障の四分野。とくに、デジタル庁設立や携帯電話料金引き下げなどの改革を力説、「国民のために働く内閣」などとぶち上げた。また、温暖化対策では「二〇五〇年までに温暖化ガスの排出ゼロ」を打ち出し、不妊治療への対策強化にも言及した。改革は、立ち遅れた生産性向上を推し進める意思を鮮明にさせたもの。外交は、中国に対抗する政治軍事大国化路線を継続・強化を示した。財界の要求に応えつつ、一年以内に迫る衆議院選挙に向けた実績づくりを急ぐ姿勢が鮮明だ。

核兵器禁止条約に署名せず
 加藤官房長官は二十六日、核兵器禁止条約について「署名しない考えに変わりない」と述べた。同条約は、核兵器の保有や使用を全面禁止するもの。二十四日にホンジュラスが批准書を寄託、五十カ国・地域が批准したことで、二一年一月に発効する予定。現状では、核保有国は署名していない。加藤長官が「抑止力の維持・強化を含め、安全保障上の脅威に適切に対処」と述べたように、米国の「核の傘」に下で中国敵視を進め、核武装の意思も隠し持つわが国支配層の意思を受けてのもの。被爆国でありながらの署名拒否は、世界からひんしゅくを買っている。

中国敵視の日米合同演習始まる
 日米共同統合演習「キーン・ソード(鋭い剣)」が二十六日、始まった。演習は十一月初旬まで、自衛隊三万七千人、米軍九千人が参加し、日本周辺の海空域、在日米軍・自衛隊基地、種子島と臥蛇島で実施される国内最大規模の演習。今回は、米空軍のCV オスプレイが初めて海上自衛隊艦艇に着艦、日米の相互運用性を印象づけた。臥蛇島などでの演習は、「離島奪還」を想定したもの。カナダ海軍の艦艇も参加した。また、新たに宇宙状況監視訓練が加えられた。山崎統幕長は日米同盟は「かつてないほど強固」などと語ったが、中国敵視でアジアの緊張をあおるものだ。

「厚労白書」を閣議決定
 二〇年度版「厚生労働白書」が二十三日、閣議決定された。「令和時代の社会保障と働き方を考える」をテーマとした。四〇年の高齢者人口は三千九百二十一万人(人口の三五・三%)と予測、医療福祉従事者一千七十万人が必要になると推計している。逆に出生数は一九八九年から四割減の七十四万人になるという。これへの対応策として、ICT(情報通信技術)の活用による生産性向上も「急務」とした。また、「健康寿命の延伸」「さまざまな生き方の選択を支える環境づくり」などに言及した。医療・年金など、社会保障費削減のための世論誘導の意図に貫かれたものだ。

「次期作支援」見直しに抵抗広がる
 農水省が十月中旬、「高収益次期作支援交付金」の運用見直しを打ち出したことへの抵抗が広がっている。全国農業青年組織協議会(JA全青協)は二十七日、野上農相に要請を行った。同交付金はコロナ禍で打撃を受けた農業者を支援するため、第一次補正予算で設置された。当初は交付対象面積を次期作の全作付面積としていたが、七月末の第一次申請締切後、「売上が減少した品目」に狭めた。コロナ禍以前から経営が苦しく、また、すでに次期作に向けた準備が始まるなか、突然の「見直し」は農業者の希望を奪うものだ。

再雇用賃めぐり判決
 名古屋地裁は二十八日、定年後再雇用者の基本給が減額されたことをめぐる訴訟で、労働者勝訴の判断を下した。原告二人は定年後六十五歳まで嘱託職員として働いたが、業務内容と職責は定年前と変わらない一方、基本給は月九万円〜十万円も下がった。判決は、基本給が定年前の六割を下回ることを「不合理な待遇格差に当たる」「生活保障の観点からも看過しがたい水準」と認め、被告の自動車学校に未払い賃金分計約六百二十五万円の支払いを命じた。原告勝訴ではあるが、「六割以上なら合法」ともとれる不十分な判決。高齢労働者の「活用」を掲げる政府は、定年延長や再雇用後の賃金保障のために規制を急ぐべきだ。


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