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労働新聞 2020年10月25日号 トピックス

世界のできごと

(10月10日〜10月19日)

米大統領選、大規模集会を強行
 トランプ大統領は十月十七日、ミシガン州マスキーゴンとウィスコンシン州ジェーンズビルで支持者集会を開いた。両州はバイデン候補との激戦州だが、新型コロナウイルス感染者が再び増加するなか、批判を無視しての強行開催。トランプ氏は、ミシガン州での集会で同州のホイットマー知事(民主党)を「収監せよ」などと叫び、アリゾナ州での集会ではバイデン候補の家族も批判するなど、なりふり構わぬ姿勢をむき出しにした。ホイットマー知事に対しては、右派団体による誘拐計画も発覚した。世論調査で未だ劣勢にあるトランプ陣営の焦りのあらわれであると同時に、米「民主主義」の劣化を示すものだ。

米、新START延長を拒否
 オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は十六日、プーチン・ロシア大統領が提案した、新戦略兵器削減条約(新START)の無条件での一年間延長を拒否した。条約期限が二〇二一年二月に迫るなか、米国は、米ロがすべての核弾頭数に上限を設けた上での一年間延長を逆提案した。これは、新STARTの対象外である、短・中距離核戦力などの爆発力を抑えた非戦略核弾頭の保有数で優位にあるとされる、ロシアを抑え込む狙いからのもの。米国は同条約から一方的に脱退を表明、中国を条約に引きずり込んで、核戦力の優位を保とうとしている。

中国、戦略物資の輸出規制
 中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は十七日、戦略物資やハイテク技術の輸出管理を強化する輸出管理法を成立させた。管理品目を定め輸出を許可制にするほか、安全保障などを理由に禁輸企業リストを作成、輸出を禁じるもの。対象は顧客企業のほか、中国から材料を輸入して完成品を輸出する第三国企業も含む。施行は十二月一日を予定している。事実上、華為技術(ファーウェイ)など、米国からのさまざまな制裁への対抗措置で、米国はしっぺ返しを受けた格好だ。

途上国債務の返済延長で合意
 二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は十四日、途上国債務の返済猶予期限を二〇年末から半年延長することで合意した。コロナ禍で計約十二兆ドルの財政出動が行われ、債務はさらに拡大、とくに新興諸国でデフォルト(債務不履行)危機が強まっている。最大の債権国である中国を「情報開示が不十分」と批判していた先進諸国も、デフォルトの連鎖を恐れてまずは延長を容認した。ただ、民間債権者の猶予では合意されていない。同日、国際通貨基金(IMF)は、報告書「未曽有の危機に立ち向かう財政政策」を公表した。二〇二〇年の世界の政府債務が約九十兆ドルと、国内総生産(GDP)にほぼ等しい規模(九八・七%)に、二一年には約一二五%に達すると予測した。政府債務の増大は、世界経済の破局の芽である。

人民のたたかい

(10月10日〜10月19日)

 フランスのパリなどで十五日、労働組合が呼びかけ、医師・看護師の増員を求めるデモ行進が行われた。
 米国のワシントンなどで十七日、トランプ大統領が連邦最高裁判事に保守派のバレット高裁判事を指名したことに抗議し、数千人がデモを行った。
 「コロンブス・デー」の十一日、米国オレゴン州ポートランドで「先住民の怒りの日」抗議デモが行われ、リンカーン、セオドア・ルーズベルト両元大統領の銅像が倒された。
 コロンビアのボゴタで十五日、ドゥケ大統領の腐敗を糾弾し、退陣を求めて五千人が抗議行動を行った。
 パキスタンのカラチで十八日、コロナ対策で無策なカーン首相の退陣を求める大規模集会が開かれた。

日本のできごと

(10月10日〜10月19日)

自民が学術会議検討、思想統制強化へ
 自民党は十月十四日、日本学術会議のあり方を検討するプロジェクトチームの初会合となる役員会を開いた。座長となった塩谷元文科相は「これからは政策のための科学という考え方で」と強調、学術会議が否定してきた軍事・安全保障に関する科学研究に向けた議論を本格化させる姿勢を示した。また河野行革担当相は十七日、学術会議の会員任命拒否問題からの論点ずらしが目的との批判に反論、政府としても支出する年間約十億円の予算を行革の対象として検証することを「あえて検証しないのは逆に変」などと開き直った。政府与党を挙げての学術界への言論・思想統制強化が進められようとしており、きわめて危険な動きである。

中曽根合同葬、思想統制強化に利用
 中曽根元首相の内閣・自民党合同葬が十七日に行われた。歴代首相経験者がこぞって参加、遺骨の警護には陸上自衛隊を動員するなど、「浮沈空母」など対米追随や行革、国労など労組攻撃にまい進した元首相を最大限に神格化した。また政府は十五日、全国の国立大や都道府県教育委員会などの教育現場に弔旗の掲揚や黙とうでの弔意の表明を求める通知を出し、さらに合同葬に二〇二〇年度予算の予備費から約九千六百万円が支出されるなど、元首相の葬式を政府与党を挙げての国民思想統制に最大限利用した。

菅政権が中小企業の再編・淘汰へ本腰
 菅政権が未来投資会議を廃止して新たに設置した成長戦略会議の初会合が十六日に行われた。菅首相はかねてから中小企業の再編を進める方針を示しており、十六日に開いた成長戦略会議の初会合では、中小企業の淘汰を声高に訴える小西美術工藝社のアトキンソン社長らを集めた。また自民党税制調査会の甘利会長は十四日、二一年度税制改正で中小企業の再編を促す税制優遇策を検討する考えを示した。政府・与党で具体策を検討し、年末に決める与党税制改正大綱に盛り込む。政府与党を挙げて中小企業の再編・淘汰を本格化させているが、自党の支持基盤に打撃を与えるものでもある。

米価下落で大規模な需給調整を答申
 農水省は十六日、二一年産の主食用米の需給見通しなどを公表した。需給安定のための妥当な生産量は六百七十九万トンと二〇年産の収穫見通しより五十六万トン(八%)少なく、改定食糧法が施行された〇四年以降では前年比で最大の減少幅。コロナ禍などによる需要低迷で二〇年産主食用米の卸売価格は六年ぶり、国が生産調整(減反)を廃止した一八年以降は初めて下落する状況を受けてものだが、農水省の答申は作付け面積にすると約十万ヘクタールという過去にない規模の調整となる。主食の安定供給の責任は国にあり、減反廃止の影響を検証し、農家が安心して中長期的な経営ができるよう米価安定に向けた方策が求められている。

待遇格差訴訟で最高裁判決相次ぐ
 最高裁で正社員と非正規社員の待遇格差をめぐる訴訟で相次いで判決が出された。十三日には大阪医科薬科大学の元アルバイト女性がボーナスなどを、東京メトロ子会社メトロコマースの元契約社員が退職金を求めた裁判で、いずれも支給は認められず原告が敗訴した。十五日には日本郵便の契約社員らが扶養手当や有給休暇を求めた裁判で原告が全面勝訴した。判断は分かれたが、労組は待遇格差解消を求めて闘うと同時に、「同一労働同一賃金」を名目に正社員の待遇を引き下げようとしている財界の策動も警戒することが求められている。

「都構想」住民投票告示、公明前面に
 大阪市を廃止して特別区に再編する「大阪都構想」の是非を問う二度目の住民投票が十二日に告示された。告示後初の日曜日十八日には大阪維新の会の松井代表(大阪市長)と公明党の山口代表が初めて共に街頭演説し「賛成」を呼び掛けた。公明党は一五年に行われた住民投票で「反対」したが、近く予想される総選挙をにらんで維新と取り引きし、「賛成」に転じて前面に立っている。市が解体され府に財源が吸い上げられれば住民サービスの低下は必至で、維新はもちろん、党利党略から賛成に回った公明、陰に陽に連携する菅官邸の罪はきわめて重い。


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