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労働新聞 2020年10月15日号 トピックス

世界のできごと

(9月30日〜10月9日)

トランプ感染、振る舞いに批判
 トランプ米大統領は十月二日、自身と夫人が新型コロナウイルスに感染したことを明らかにした。米疾病対策センター(CDC)は「最低十日間の隔離」を勧告しているが、大統領は四日に抜け出し「健在」をアピール。一方、ホワイトハウスで感染が拡大しクラスター(集団感染)化している。発生源とされるのは、保守派最高裁判事候補の指名式典で、無防備が露呈した。世界最大七百万人以上の感染者数を出しながら、「免疫ができた」(トランプ大統領)など荒唐無稽な発言を繰り返すトランプ政権に対して、医学誌がトランプ氏に投票しないことを呼びかける異例の文書も発表された。トランプ政権はコロナ禍の責任を中国に負わせようとしているが、米国こそがコロナ対策の障害物となっている。

米追加経済対策、選挙の具に
 トランプ米大統領は六日、追加経済対策をめぐる民主党との協議を十一月の大統領選後まで先送りすると発表した。直後、中小企業への雇用支援策などに限った対策を指示するなど、対策を大統領選の駆け引きに使う姿勢。大統領は一・六兆ドル(約百七十兆円)規模の対策を提案したが、民主党は自治体支援を盛り込んだ二・二兆ドル規模を打ち出し、協議は難航していた。総額三兆ドルの経済対策が期限切れを迎えるなか、米経済は「財政の壁」に直面しつつある。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は追加経済対策の必要性を訴えていたが、トランプ大統領は選挙しか見ていない。

世銀、1億5千万人が極度の貧困に
 世界銀行は七日、新型コロナウイルスの世界的な流行によって、二〇二一年末までに一億五千万人が新たに極度の貧困に直面する可能性を指摘する報告書を発表した。五月には、二〇年中に極度の貧困に陥る人を六千万人と推計していたが、予測を大幅に引き上げた。一日一・九ドル(約二百円)未満で生活する極貧人口は、今年中に世界総人口の九・四%、約七億二千九百万人になるという。十人中約八人は、世銀が中所得国と位置付ける国の居住者。一方、スイス金融大手などが発表した報告書によると、保有資産が十億ドル(約千六十億円)を超える資産家の総資産額が過去最高を記録した。七月末時点で二千百八十九人で、総資産額は約十兆二千億ドル(約千八十兆円)。一七年の八兆九千億ドル(約九百四十兆円)を上回った。コロナ禍が貧困層を直撃する一方、一握りの資産家が富を独占する構造が強まっている。

欧州の雇用いっそう悪化へ
 欧州連合(EU)は一日、八月の域内失業者が約千五百六十万人に達したと発表した。前月比二十三万八千人増加し、コロナ危機が始まった三月からは百七十万人以上もの増加となった。失業率も七・四%と五カ月連続で悪化。特に二十五歳未満の若年層で顕著で一七・六%(約三百三万人)に達する。航空機製造大手エアバスや独自動車大手ダイムラーなど大手製造業が大規模なリストラを発表するなど雇用危機の本格化は不可避。これまで感染を比較的抑制してきたドイツで感染者が増加、フランス、スペインなどでも同様の傾向を示しており、経済全般を直撃するおそれがある。

人民のたたかい

(9月30日〜10月9日)

 米国ロサンゼルスで一日、新型コロナウイルスの感染拡大で支払いが困難になった家賃や住宅ローンの支払い停止を求めるデモが行われた。参加者は裁判所前に集まり、「家賃をキャンセルに」「立ち退きは死だ」と書かれたプラカードを掲げて声を上げた。  インドネシアのジャカルタなど主要都市で八日、海外からの投資促進のための制度一括法(オムニバス)法に反対する労働者や学生が大規模なデモを行った。同法は五日に成立したが、外資呼び込みのための規制緩和策で、労組などからは労働者の権利を侵害するものだとの声が上がっていた。

日本のできごと

(9月30日〜10月9日)

概算要求が過去最高額に
 財務省は十月七日、二〇二一年度予算の各省庁による一般会計の概算要求総額が百五兆四千七十一億円だったと発表した。前年度を四千億円以上上回る過去最高額。新型コロナウイルスへの対応などで金額を示さない「事項要求」が多数あり、実際の要求額はさらに多くなる。防衛省は過去最大の五兆四千八百九十八億円を計上、電子戦部隊の南西諸島への配備や偵察用小型衛星計画などを含む。地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替案も「事項要求」とした。総務省は、情報銀行によるデータ仲介の実証実験費として約一億七千五百億円を、経産省は石炭火力発電所などから出る二酸化炭素(CO2)を海上輸送する基地の整備費などを盛り込んだ。要求は、国民生活再生を「後回し」にした項目が多数だ。

学術会議介入は思想・言論統制の一環
 日本学術会議の新会員について、菅首相が会議側が推薦した候補のうち六人の任命を拒否していたことが九月三十日、判明した。推薦者が任命されなかったのは初で、六人のなかには、安保法制や共謀罪を批判してきた研究者も含まれる。菅首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的に判断」などと述べたが、名簿を見ていないことも明らかになるなど矛盾だらけ。任命拒否は学問の自由に反するだけでなく、安倍前政権下で進んだマスコミ統制と軌を一にした動きで、政治軍事大国化を進めるための思想・言論統制策動の一環だ。

日米豪印外相会談、中国対抗を確認
 日米豪印の外相が十月六、七日、東京で会談した。中国に対抗する「自由で開かれたインド太平洋」に向けた協力を確認、南シナ海やサイバー問題で協議が行われた。ポンペオ米国務長官は「融和策は正解にならない」と中国への敵視をあらわにさせ、日本にも通信網から中国の影響を排除することを求めた。茂木外相は、日米安保が「国際社会の平和と安定の礎」と明言、岸外相も四カ国防衛相会談の開催に意欲を示すなど、菅政権は中国包囲網づくりに余念がない。だが、オーストラリアやインドの対中外交は複雑で、足並みは必ずしも一致していない。

茂木外相が3カ国歴訪で中国包囲狙う
 茂木外相は四日まで、ポルトガル、フランス、サウジアラビアを訪問した。サントスシルバ・ポルトガル外相との会談では、「自由で開かれたインド太平洋」構想を念頭に「海洋秩序の維持」での連携を確認した。ルドリアン仏外相とは、共同訓練など安全保障分野での協力で合意した。ファイサル・サウジ外相とは、「脱石油」改革を支援することを表明した。ポルトガルは二一年前半の欧州連合(EU)議長国で、サウジは二十カ国・地域(G20)議長国。中国包囲と併せ、日本の存在感維持を狙った歴訪だ。

酒税・たばこ税など国民負担増加
 一日から、国民生活に身近な部分で増税が行われた。生活保護の生活扶助が減額されたほか、酒税などが引き上げられた。第三のビールは三百五十ミリリットルあたり九・八円、ワインは一リットルあたり十円の増税で、たばこは一箱五十円値上げされた。コロナ禍で勤労者の収入が激減するなか、消費をさらに冷え込ませるものだ。

東証事故、金融都市構想吹き飛ぶ
 東京証券取引所のシステムで一日、障害が発生し、終日、売買停止に追い込まれた。一九九九年のシステム化以降、終日停止は初めて。システムを担当した富士通の指示ミスと、東証のスキル不足は明白。わが国金融インフラの脆弱さが顕在化、菅政権や小池都知事らが掲げる「国際金融都市構想」、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」に打撃を与えた。

福島原発訴訟、原告勝訴判決
 東京電力福島第一原発事故をめぐり、避難住民など約三千六百人が、国と東電を訴えた裁判で、九月三十日、仙台高裁は両者の賠償責任を認める判決を下した。原告が居住地の「原状回復」と慰謝料など総額約二百十五億円を求めたのに対し、高裁は一審判決からほぼ倍増の約十億一千万円を認定した。判決は津波の到来を予見できたと断じ、国の権限不行使を「違法」とした。国・東電は不当にも最高裁に上告、住民側も一部補償が認められなかったことを理由に上告した。住民完全勝訴の判決が求められる。


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