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労働新聞 2020年10月5日号 トピックス

世界のできごと

(9月20日〜9月29日)

米討論会、民主主義の茶番露呈
 米国オハイオ州クリーブランドで九月二十九日、大統領選をめぐる第一回テレビ討論会が行われた。討論会は、新型コロナウイルス対策や大統領の「資質」をめぐって両者が「極左勢力の影響下にある」(トランプ氏)、「米国史上最悪の大統領」(バイデン氏)などと非難し合う、泥仕合となった。これは、多くの視聴者をあきれさせた。あげく、トランプ大統領は郵便投票を疑問視し、選挙結果の受け入れを言明しなかった。世論調査で劣勢のトランプ陣営の焦りを示したというだけでなく、現職大統領が自国の選挙制度を否定したに等しいもので、米国「民主主義」の劣化がまざまざと示された。

国連総会、米国の孤立鮮明に
 米国ニューヨークの国連で二十二日、総会の一般討論演説が行われた。トランプ米大統領は新型コロナウイルスへの対応をめぐって「責任をとらせないといけない」と、中国を非難した。中国包囲網をめざすとともに、自国でのずさんな対応への批判をかわす狙い。また、「テロ支援」などとイランを非難した。一方、習近平・中国主席は、新型コロナワクチンの「公共財」化、二〇六〇年までの二酸化炭素(CO2)排出量の「実質ゼロ」なども表明した。また、プーチン・ロシア大統領がワクチン開発をめぐる国際会議を提唱、世界経済については米国による「違法な制裁」の解除が必要だと述べた。米国が脱退した世界保健機関(WHO)については、「必要だ」(ドゥテルテ・フィリピン大統領)との声が上がった。米国の国際的孤立が、またも如実に示された。

中国アプリ停止を地裁が差止
 トランプ米政権が、中国企業のアプリ「ティックトック」の配信禁止を命じたことに対し、米連邦地裁は二十七日、一時差し止めを命じた。トランプ政権は「個人情報が中国に流出する安保上の脅威がある」などと難クセを付けたが、運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)は「表現の自由が脅かされる」と反論していた。同様に、騰訊控股(テンセント)が運営する「ウィーチャット」の禁止措置も差し止められた。ティックトックの米国事業の買収協議も合意に至っていない。トランプ政権による対中強硬策が、司法判断で一時阻止されたもので、政府の異常な強引さが際立っている。

新興国の貧困層増加、コロナ追い打ち
 世界銀行は二十九日、東アジア・太平洋地域の新興国の経済見通しを発表した。コロナ禍によって、二〇年に地域の貧困層が約四百五十万人増えると予想、過去二十年で初めて増加すると指摘した。中国を除くと、九百五十万〜千二百六十万人も増える。米ジョンズ・ホプキンス大によると、同日、コロナによる死者は全世界で百万人を超え、感染者は三千三百二十七万人に達した。死者数は米国が最多だが、直近の増加ペースではインド、ブラジルといった新興国で増えている。コロナ禍と各国政府の失政が貧困層を直撃、さらなる苦難に追い込んでいる。

人民のたたかい

(9月20日〜9月29日)

 米国ケンタッキー州ルイビルで二十四日、黒人女性が白人警官に自宅で射殺された事件に関して、州大陪審が警官への殺人罪適用を見送ったことに抗議するデモが行われた。行動には約三百人が参加したが、半数近くが不当に逮捕された。
 韓国で二十二日、イースター航空での七百二十人の整理解雇攻撃に対し、公共運輸労組など四十一の団体が会見を行い、政府・与党の対応を批判した。与党は、同社創業者の李議員の懲戒議論を進めているが、労組は解雇計画の撤回を求めている。
 イスラエルのエルサレムで二十六日、ネタニヤフ首相の辞任を求め、公邸前で数千人が集会を行った。

日本のできごと

(9月20日〜9月29日)

政権初の首脳外交、日米同盟強調
 菅首相が立て続けに首脳電話会談を行い、政権発足後初の首脳外交を展開した。九月二十日、米国のトランプ大統領と電話会談した。中国など東アジア情勢をめぐり意見交換し、日米同盟を発展させていく方針で一致した。日米首脳の電話会談は菅首相の就任後初めて。菅首相は同日、モリソン・オーストラリア首相と会談し、日米豪同盟重視を印象付けた。二十五日には中国の習近平・国家主席との会談の前に急きょインドのモディ首相と会談し、日米豪印の「準同盟」も強調した。習主席との会談では日中関係発展や経済関係者の往来再開の早期実現などで合意したが、一連の会談で内外に中国包囲の姿勢を印象付けた。二十六日には米ニューヨークで開催中の国連総会で初の一般討論演説にビデオメッセージで臨み、「積極的平和主義」「自由で開かれたインド太平洋」「法の支配への挑戦を許さない」など、安倍政権の外交を継承し暗に中国をけん制した。

学術会議人事に介入、前代未聞の暴挙
 日本学術会議の新会員について、同会議が推薦した会員候補のうち六人を菅首相が任命しなかったことが二十九日に判明した。同会議から新会員として推薦されていた大学教授に事務局から「首相の任命名簿に名前がない」と連絡があり発覚した。同会議は約八十七万人の日本の科学者を内外に代表する機関で、首相所轄だが政府から独立して政策提言などを行う。政府は任命拒否の理由を明らかにしないが、任命拒否された六人は安倍政権が強行した安全保障法制や共謀罪、辺野古新基地建設などに反対の意見を表明してきた。同会議の歴史で一度もなかった暴挙で、「学問の自由」に介入し思想統制への布石としたい政権の狙いは明らか。絶対に許してはならない。

自民が尖閣実効支配の強化を提言
 自民党国防議員連盟は二十三日、沖縄県・尖閣諸島の実効支配を強化する対策を政府に提言した。尖閣諸島を含む南西諸島で自衛隊と米軍の日米共同訓練を実施するよう求め、台湾防衛当局との情報共有強化や下地島空港(宮古島市)など南西諸島の空港・港湾の自衛隊使用に向けた整備も呼びかけた。防衛装備に関しは、警戒監視に使う滞空型無人機や高速滑空弾、水陸両用戦闘車の研究開発を急ぐべきとし、海上保安庁の巡視船への対空レーダー搭載と自衛隊との連携強化も盛り込んだ。海上保安庁の人員増や中国漁船の違法操業を取り締まる水産庁の体制増強、石垣市に「領土・主権展示館」の出先機関を設置し教育関係者向けの研修プログラムを創設する案も打ち出した。中国公船の活動活発化を理由にしているが、米国と歩調を合わせた中国包囲の軍事力強化のオンパレードだ。

規制委が東電に再稼働「適格性」
 政府の原子力規制委員会は二十三日、「社長はトップとして原子力安全の責任を担う」などと明記した東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)の保安規定の変更案を了承、東電が同原発を再稼働する原子力事業者としての「適格性」を認めた。保安規定は事業者が守るべき原発の運用や保守管理などについて定めたもので、事業者が作成し規制委の認可を受ける。違反した場合は原子炉の停止などの罰則が定められている。東電は二〇〇二年の原発検査データのねつ造、一一年の福島原発事故時のメルトダウン隠ぺいという重大な不祥事について、その都度「反省と教訓」を繰り返してきたが、どう生かされたのか検証されていない。規制委の認可はきわめて無責任だ。

民間給与7年ぶり減少、格差さらに
 国税庁は二十九日、民間給与実態統計調査を公表した。民間企業で働く人が二〇一九年の一年間に得た平均給与は前年比一・〇%減の四百三十六万四千円で、七年ぶりに減少した。従業員百人未満の中小企業の平均給与が減少し全体を押し下げたことが主要因で、事業所の規模別に見ると、従業員が三十〜九十九人の事業所の平均給与は四百十二万円で前年比で約五%減、十〜二十九人は四百四万円で約四%減、十人未満は三百四十万円で約五%減少した。一方、百人以上の企業では増加し、五千人以上の大企業は五百十九万円と約一%増となった。一九年分のため新型コロナウイルスによる経済活動の停滞影響は反映されていないため、格差はいっそう開いたことは確実。安倍政権下の実態を如実に示している。


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