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労働新聞 2020年9月25日号 トピックス

世界のできごと

(9月10日〜9月19日)

ASEAN、米の対中包囲網と一線
 ベトナムで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議などASEAN関連閣僚級会合が九月十二日、閉幕した。米国からはポンペオ国務長官が参加、「(南シナ海で)中国の軍事拠点建設を支援する企業との関係を断絶せよ」と圧力をかけた。だが、中国と領有権を争うベトナムでさえ「大国間の競争に巻き込まれたくない」(ミン副首相兼外相)、タイも「対立を協力に変える協議の枠組み」を提案、米国に同調しなかった。ポンペオ長官は、ARF閣僚会議に出席せずに去った。一方、中国の王毅外相は経済関係の強化や新型コロナウイルスのワクチン供給などで協力する姿勢を示した。ASEAN諸国は中国に警戒を示しつつ、米国の対中包囲網とは一線を画す姿勢を改めて示した。

米で迫る「財政の壁」
 米上院で十日、トランプ政権が提出したコロナ対策を盛り込んだ五千億ドル(約五十三兆円)規模の追加経済対策が民主党の反対により否決された。この対策案は、民主党が求めていた州・地方政府への資金支援や家計への現金給付を完全に排除するなど、有効とはいえぬもの。七月末には失業給付を加算する特例措置が失効、中小企業の給与補填策も期限が切れ、年末には支給期限も失効する。九月末には航空会社への雇用維持策も失効する。米国の感染者数は累計で約六百六十七万人と世界最多で、トランプ政権の対策が「大惨事」との声が上がるなか、十一月の大統領選に向けて議会での与野党対立は激しさを増す一方、米国は「財政の壁」に直面しようとしている。

対中関係破壊する米高官の訪台
 クラック米国務次官は十七日、台湾を訪問、蘇貞昌行政院長などと会談した。台湾側は一九七九年の米台断交以来の「最高位の訪問」とはしゃぎ、米との自由貿易協定(FTA)締結を熱望した。米台が新たなサプライチェーン(供給網)を形成することや、中国企業からの投資受け入れ審査の強化なども討議された。米側は、世界の半導体の約七割を受注生産する台湾への関与を強め、安定供給を狙う。さらに、巡航ミサイルなど総額七十億ドルもの台湾への武器売却を検討している。米国の振る舞いは七二年の「上海コミュニケ」などの合意に反するものだ。

一方的な米の対イラン制裁
 ポンペオ米国務長官は十九日、イランに対する国連制裁が自動的に復活したと発表した。同長官は声明で、「対イラン制裁が再び科される」と表明。「米国は全ての国連加盟国がこの措置を履行する義務を全面的に順守すると期待する」と述べた。一方、英仏独は制裁復活に「法的効力がない」と訴える書簡を国連に提出。ロシアのラブロフ外相も米政権が「イランを悪魔にしようとしている」と非難し、米国の一方的な制裁復活に反対する立場を改めて表明した。中国も制裁復活を認めない考えだ。

人民のたたかい

(9月10日〜9月19日)

 フランス・パリで十二日、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト運動」による大規模なデモが行われた。デモ隊は、投石など実力闘争を展開した。パリやリヨンなど各地で十七日、コロナ禍を口実としたリストラ・解雇に抗議する全国統一行動が行われ、パリのデモには約一万人が参加した。労組、学生団体が参加した。
 パレスチナ各地で十五日、アラブ首長国連合(UAE)やバーレーンがイスラエルと国交正常化したことに抗議するデモが行われた。
 チリの首都サンティアゴでアジェンデ政権がクーデターで倒されて四十七年となる十一日、大統領を追悼し、ピノチェト独裁政権による虐殺の真相究明を求めるデモが行われた。ピニェーラ現政権はピノチェトの流れを組む。
 コロンビアのボゴタで、警察によって男性が死亡した事件をめぐる抗議デモが行われた。

日本のできごと

(9月10日〜9月19日)

第99代・菅政権が成立
 菅・自民党総裁が九月十六日、衆参で第九十九代首相に選出された。首相交代は約七年八カ月ぶり。組閣・役員人事では、平井デジタル改革相、岸防衛相などは新任だが、加藤官房長官や河野行政改革・規制改革相らが横滑りし、麻生副総理兼財務相、茂木外相、二階幹事長らは続投。菅首相は、新型コロナウイルスへの対応を最優先としつつ、「縦割り打破」や規制改革を掲げた。「日米同盟を基軸」とも明言した。財界は新政権に改革を「期待」、首相も「働く内閣」を掲げて呼応した。財界の要求、米中との関係など、環境は難題だらけだ。

新立民、政治的対抗軸なし
 立憲民主、国民民主などが合流した新・立憲民主党が十五日、結党大会を開いた。枝野・旧立民代表が代表に就任、福山幹事長、泉政調会長らの執行部も決まった。約百五十人の衆参議員が参加した。出席した神津・連合会長は「総体として立民を支援」と述べた。党綱領では「共生社会」「国際協調」などがうたわれた。新党入りを見送った旧国民議員らの新・国民民主党も同日、設立大会を開いた。共産党は首班指名で枝野代表に投票したが、立民の外交政策の基本は「健全な日米同盟」で、国の進路の課題で依然、菅新政権との対抗軸がない。

米、防衛費倍増を要求
 エスパー米国防長官は十六日、日本など同盟国に「国防費を国内総生産(GDP)比で少なくとも二%」に増やすことを求めた。長官は「中国やロシアに対抗する」と訴えた。米国が北大西洋条約機構(NATO)以外に数値目標を求めたのは初めて。同盟国の負担で、米国主導の世界支配を維持する狙い。日本の防衛費は現在GDP比で約〇・九%、NATO基準でも一・三%で、倍増の大軍拡が必要。米国には「思いやり予算」の増額につなげる思惑もあり、要求は果てしない。

日印ACSA、狙いは中国包囲
 政府は十日、インドとの間で物品役務相互提供協定(ACSA)に署名したと発表した。自衛隊とインド軍が物資や役務を融通する協定で、日本にとっては、米国、英国、オーストラリア、カナダ、フランスに次いで六カ国目。インドを「準同盟国」と位置づけ、中国を包囲する「自由で開かれたインド太平洋」構想に取り込む狙いからのもの。インドは中国との領土紛争を抱えるものの、上海協力機構(SCO)やBRICSで中国と連携するなどバランスをとっており、米日の思惑通りに進むことはない。

GoToに東京追加、科学性乏しく
 政府は十日、「GoToトラベル」に十月一日から東京を加える方針を固めた。観光大手への支援策である同事業にとって、人口の多い東京が加わることは念願だった。だが、東京都の新規コロナ陽性者は依然、一日百人を超えており、検査数も一日六千人以下にとどまる。尾崎・東京都医師会会長が「(追加は)段階的に実施すべき」と述べたように、予断を許さぬ状況だ。科学的知見なしでの対象拡大は、国民の命をさらに危険にさらすものだ。

日銀が緩和維持も打開策なし
 日銀は十六、十七日、金融政策決定会合を開いた。景気判断を「経済活動が徐々に再開するもとで、持ち直しつつある」とした。その上で、長期金利をゼロ%程度に誘導する「イールドカーブコントロール」と、コロナ禍を機に強化した企業への資金繰り支援、上場投資信託(ETF)買い入れ拡大などを維持した。黒田総裁は菅新政権と「しっかり連携」と述べたが、緩和政策はすでに限界だ。政府から「頼り」とされる日銀だが、緩和政策はますます限界で、危機打開策はない。

自殺者増加、コロナ禍の影響明白
 警察庁は十日、八月の自殺者が千八百四十九人に達したと発表した。前年同月から二百四十六人(一五・三%)も増加、とくに女性の自殺者は百八十六人も増えて六百五十人となった。コロナ禍により、女性労働者が多い観光・飲食・小売業が打撃を受けたこと、感染者が再拡大に転じるなか、政府の支援策が切れた影響が見て取れる。加藤厚労相は「生きづらさを感じている方々へ」と題した緊急メッセージを発したが、国民生活再生のための具体的支援こそ急ぐべきだ。


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