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労働新聞 2020年9月5日号 トピックス

世界のできごと

(8月20日〜8月29日)

米共和党、トランプが受諾演説
 米共和党は八月二十四日、十一月の大統領選にトランプ大統領を正式に指名した。トランプ大統領は「十カ月で千万人の雇用を創出する」など、荒唐無稽(こうとうむけい)ともいえる公約を乱発した。北大西洋条約機構(NATO)への防衛費負担増や、イラン核合意からの離脱などを羅列した。中国に対する敵視政策を誇示、生産拠点を米国に戻した企業を優遇する税制を発表した。だが、稚拙な新型コロナウイルスへの対応、黒人差別に反対する国民の声の高まりなど、トランプ政権を取り巻く環境は厳しさを増し、再選への見通しは立たない。同盟国からも「自国第一」への反発は続いている。「アメリカンドリームを救う」と叫ぶトランプの声は、会場に詰め掛けた抗議の訴えにかき消された。

米、同盟国に負担増迫る
 エスパー米国防長官は二十六日、ハワイで演説した。インド太平洋地域について、「中国との大国競争」の中心地と位置づけ、「同盟国、パートナー国との強固なネットワーク」で中国への対抗を強める姿勢を強調した。また、「同盟国には、公平かつ釣り合う形で貢献してもらう」と言い立て、いっそうの負担増を求めた。この演説に合わせるように、米軍のU2偵察機が米中間で設定した空域に侵入、挑発を強めた。二十八日には中国企業十一社を、中国軍の関連企業として追加認定したと発表、銀行取引の制限などの制裁案を発表した。しかし、米国が同盟国と位置づける韓国や周辺の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国は中国との決定的な関係悪化を望まず、米の姿勢は反発を呼ぶ可能性もある。

FRB、「物価2%超」の新指針
 米連邦準備理事会(FRB)は二十七日、「当面の間は二%を上回るインフレ率をめざす」という指針を発表した。現在の物価上昇は一%を下回っている。新型コロナウイルスの影響が長引くなか、ゼロ金利の長期化へカジを切った。インフレ期待を高めて実質金利を下げ、経済を刺激する狙いもある。ゼロ金利維持のための国債の大量購入は、事実上の財政ファイナンスでもある。金融緩和の裏側で、国債バブル崩壊の危機も膨らんでいる。

思うに任せぬ米のイラン包囲網
 中東・北アフリカを歴訪しているポンペオ米国務長官は二十四日、ネタニヤフ・イスラエル首相と会談した。同国とアラブ首長国連邦(UAE)との国交正常化を自賛、他のアラブ諸国の追随に「期待」した。だが、UAEは戦闘機Fを米国から購入する計画にイスラエルが反対したことに反発、三カ国会談をキャンセルした。バーレーンもパレスチナ問題の解決を強調、米国の思惑は空振りに終わった。イラン包囲網の形成にやっきな米国だが、イランも国際原子力機関(IAEA)の事務局長の訪問を受け入れるなど、したたかに対抗している。

人民のたたかい

(8月20日〜8月29日)

 イスラエルのテルアビブで二十三日、リゾート地で起きた少女に対する集団性暴行事件に抗議するデモが行われた。参加者は、検察が性暴力事件の八三%を不起訴にしていることに抗議。暴力根絶に向けた予算の拡充や司法制度の改革などを求めた。
 米国ワシントンで二十八日、人種差別の廃絶を求める大規模な集会とデモが行われた。この行動は一九六三年、キング牧師が呼びかけた「ワシントン大行進」から五十七年目。参加者は「人種差別こそパンデミック、革命が治療」と訴え、トランプ大統領を厳しく批判した。五月に白人警察に殺害されたフロイドさんの家族も参加、差別撤廃を求めた。なお、二十三日にはウィスコンシン州で黒人男性が警察に射殺される事件が発生、抗議行動が広がりを見せている。

日本のできごと

(8月20日〜8月29日)

安倍首相、内外の行き詰まりで退陣
 安倍首相(自民党総裁)は八月二十八日、辞任する意向を表明した。首相は二十四日、連続在任日数で佐藤元首相を抜いて歴代最長記録を更新したばかり。二〇一二年に成立した安倍政権は、「強い日本」を掲げたが、アベノミクスは日銀の金融緩和と財政出動に依存したもので、一部の大企業・投資家を潤わせる一方、国民生活は厳しさを増した。外交でも、日米同盟強化と中国への敵視を強め、日韓関係の悪化など、アジアでの孤立を深めた。コロナ禍への対応でも完全に後手に回り、政権の腐敗もきわまった。辞任の直接の理由は健康問題だが、内外政治の行き詰まりのなか、事実上、辞任に追い込まれたものだ。)

コロナ新対策、無症状者を軽視
 政府は二十八日、新型コロナウイルスに対する新対策を発表した。軽症・無症状者は自宅や宿泊施設での療養を徹底させ、抗原キットの一日二十万件への拡充、二一年前半までに全国民向けのワクチン確保などを掲げた。併せて、厚労省は雇用調整助成金の特例措置の期限を十二月末まで延長した。自宅などでの療養は「医療崩壊」を防ぐ名目だが、無症状者による感染拡大という現実を軽視し、医療充実のための財政負担を逃れる姑息な狙い。抗原検査は、一日あたりPCR検査が依然として政府公約に達していない現実を見れば、当てにならない。新対策は、国民の命を健康を守るものではない。

日米防衛省会談、対中対抗強化
 河野防衛相とエスパー米国防長官は二十九日、米領グアムで会談した。両者は、東シナ海や南シナ海での「一方的現状変更の試みに反対」と、中国への対抗で一致した。日米の協力による新たなミサイル防衛システムの構築でも確認した。米中双方による南シナ海での軍事行動が強まるなか、日本は米国の側に立つことを改めて約束するもので、危険な戦争への道だ。

フィリピンにレーダー輸出決まる
 防衛省は二十八日、三菱電機とフィリピン政府との間で、軍事用警戒管制レーダー四基(総額約一億ドル=約百七億円)の輸出契約が成立したと発表した。国産防衛装備品の輸出は、政府が一四年に「武器輸出三原則」を廃止して以降、初めて。河野防衛相が「『自由で開かれたインド太平洋』のビジョンに合致する」と述べたように、南シナ海での中国への警戒を後押しする狙い。自国軍需産業への支援策であると共に、米国主導の対中包囲網づくりの片棒を担ぐものだ。

RCEP、インド抜きの公算強まる
 日本、中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など十五カ国は二十七日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)閣僚会合を開いた。安倍政権が参加を重視してきたインドは欠席し、不参加となる可能性が高まった。とくにASEANは、南シナ海問題などで中国包囲網を強める米国と一線を画し、早期の対中国関税引き下げのメリットを求めて「インド抜き」を容認する構え。インドが不参加となれば、RCEP圏内人口は、世界人口の約半数の三十四億人から約四割減とはなるものの、世界最大級の経済圏となることに変わりはない。

最低賃金、生活改善に遠く
 四十七都道府県の二〇年度最低賃金額が二十一日、出揃った。中央では引き上げ額の目安を提示することが見送られたことから、東京、北海道、大阪など七都道府県で据え置きとなった。四十県では引き上げられたが、一〜三円にとどまった。最高額の東京都と、最低額の秋田県などの差は二百二十一円で、前年度から縮まったものの、わずか二円。一六〜一九年度は二十円以上の引き上げが続いてきただけに、コロナ禍を口実とする賃金抑制の動きは顕著だ。

増大する水害被害
 国土交通省は二十一日、一九年の水害による住宅やインフラなどの被害をまとめた。被害額は二兆一千四百七十六億円で、一九六一年以降で最悪。台風十九号による被害が全体の八六%以上を占める。都道府県別では、福島、栃木、宮城の順。今年に入ってからも、九州南部を中心とする豪雨など、被害が相次いでいる。国交省はビルの容積率緩和などの対策を打ち出したが、小手先の対策では間に合わない。


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