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労働新聞 2020年8月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月30日〜8月19日)

ポンペオ長官、対中強硬エスカレート
 スロベニアなど東欧四カ国を歴訪中のポンペオ米国務長官は八月十二日、チェコ上院で演説し、「中国共産党はソ連がやらなかった方法で我々の経済や政治、社会にすでに入り込んでいる」と、5G(次世代通信規格)などでの包囲網形成を呼びかけた。国務長官は七月末、北大西洋条約機構(NATO)加盟国をけん制しているが、今回はとくに、中国と関係の深い東欧を揺さぶり、くさびを打ち込む狙い。米国は、対中敵視をさらにエスカレートさせている。

米、イラン制裁復活求める
 トランプ米大統領は十九日、二〇一五年の「核合意」で解除されたイランに対する制裁を復活させるよう、国連安全保障理事会に求めることを明らかにした。ポンペオ国務長官は、ロシアと中国が制裁復活を拒否した場合、「責任を取らせる」とも明言した。だが、十四日には、米国が提出した対イラン武器禁輸措置の延長を求める決議案が、安保理で否決されている。「核合意」から一方的離脱した米国に制裁を再発動させる権限があるはずもなく、米国のイラン敵視政策は国際的孤立を深めるばかりだ。

米画策でイスラエル・UAE国交
 トランプ米政権は十三日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化を発表した。イスラエルと国交を持つアラブ諸国は、エジプト、ヨルダンに次ぎ三カ国目。共同声明では、大使館設置、投資などでの関係強化がうたわれた。イスラエルは、ヨルダン川西岸入植地の併合をひとまず見送った。トランプ政権がイランへの包囲を強化するとともに、大統領選挙での「ユダヤ票」を狙ったもの。「重大な過ち」(ロウハニ大統領)と非難したイランはもちろん、パレスチナをはじめアラブ人民の反発は必至。中東のさらなる混乱は避けがたい。

バイデン氏指名、国内矛盾打開は困難
 米民主党は十八日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで全国大会を開き、バイデン前副大統領を大統領候補に正式指名した。副大統領候補にはハリス上院議員が指名され、事実上、十一月の大統領選の構図が決まった。政策綱領では、「為替操作や違法な助成、知的財産の窃盗」などと、中国への敵視を明記、「同盟関係を修復」して対抗する意思を表明した。また「最低賃金引き上げ」など格差是正策ともとれる政策が採択されたが、黒人差別反対デモにあらわれた深刻な国内矛盾を打開できる展望はない。米国の危機は深く、どの政権でも打開は困難だ。

ベラルーシへ米欧が干渉
 ベラルーシ大統領選が九日、投開票され、ルカシェンコ大統領の六選が確実となった。ミンスクなどでは抗議デモが発生、ルカシェンコ大統領は、国民投票で新憲法を採択した後に辞任する可能性があると譲歩した。ベラルーシと連合国家を形成するロシアは、軍事支援を行う構えだが、米国は「ひどい状況」(トランプ大統領)と非難、欧州連合(EU)首脳会議は大統領の再選を認めないと表明した。旧ソ連崩壊後、米欧はウクライナなどに介入してきたが、新たな干渉は許し難い。

リムパック、米韓演習を強行
 米国、日本、オーストラリア、韓国、フランスなど十カ国、約五千三百人による「環太平洋合同演習(リムパック)」が十七日に始まった。対潜水艦戦を中心に、中国への軍事的けん制を強めるもの。並行して、米韓合同演習も十八日、始まった。朝鮮労働党中央委員会総会は十九日、これに激しく反発した。アジアの軍事的緊張を高める暴挙だが、新型コロナウイルスの影響で規模縮小を余儀なくされるなど、米軍にもほころびが隠せない。

インド、中国アプリを禁止
 インドのモディ首相は十五日、独立記念日の演説を行った。カシミール問題をめぐって中国とパキスタンを強くけん制した。これに先立ち、IT(情報技術)大手の小米科技(シャオミ)など中国企業のアプリ約四十七種類の使用を禁止したと発表した。中国との国境紛争を受けた措置で、七月には政府調達における中国企業の参入を制限している。領土問題だけでなく、感染者数が世界第三位となるなど、新型コロナ対策の遅れに対する国内の不満をそらす狙いもあると思われる。

人民のたたかい

(7月30日〜8月19日)

 ドイツのベルリンで八月十四日、従軍慰安婦問題で日本政府が公式に謝罪・補償することを求めた集会が行われ、人権団体や在独日本・韓国・スーダンなどの女性団体が参加した。
 ベトナムのハノイで十七日、配車サービス・ビーグループの運転手数十人が、ボーナス制度の変更に抗議してストライキを行った。
 タイのパタヤで五日、配車サービス・グラブの運転手百人が、待遇改善を求めてストライキに入った。
 パナマ議会が七月三十一日、コロナ対策を口実に労働法制改悪案が可決されたことに抗議し、労働組合など数百人がデモ行進を行った。
 ブラジル中西部で八月十七日、ボルソナロ政権によるコロナ対策を批判し、先住民が高速道路を封鎖した。
 米国で人種差別に抗議する闘いが続いている。ニューヨークで十五日、人種差別に反対するデモの一部が激しい抗議を繰り広げた。IT(情報技術)企業・ピンタレスト社員が十四日、社内での人種・性差別に抗議してストライキに入った。
 米国のシカゴなど三十五学校区で三日、教職員数千人が、コロナ禍の中での学校再開に抗議して行動を行った。教員連盟(AFT)は、全国ストを行う可能性に言及している。
 米国の全国看護師組合(NNU)が五日、コロナ対策を求める統一行動を実施、十六州二百カ所でデモ行進を行った。
 韓国のソウルで十日、ポラメ病院でのストライキが解除された。昨年九月、非正規労働者が正規職への転換を求めたのに対し、当局が拒否したことに対して七月末から闘われたもの。
 レバノンのベイルートで八日、大規模爆発の責任は政府の怠慢と腐敗にあるとして、約一万人が政府打倒を掲げたデモ行進した。
 トルコ各地で五日、エルドアン政権がイスタンブール条約(暴力から女性を守る国際条約)からの脱退を検討していることに抗議するデモが行われた。
 イスラエルのエルサレムで一日、汚職に手を染めたネタニヤフ首相の退陣を求めて一万人がデモを行った。行動は全国三百カ所で行われた。

日本のできごと

(7月30日〜8月19日)

コロナ再拡大の危機にも首相雲隠れ
 新型コロナウイルス感染が再拡大し、七月三十一日には一日の感染者数が初めて千五百人を超えた。日本医師会は八月五日、PCR等検査体制のさらなる拡大・充実のための緊急提言を公表、全国知事会も八日に緊急提言で医療提供体制の強化や休業補償を求めた。豪雨災害の復旧など切迫する国民的課題が山積するなか、安倍政権は野党からの臨時国会召集要求に応じないどころか、一カ月半も会見にさえ応じないなど、無責任きわまりない。

沖縄で独自緊急事態宣言、国は冷淡
 沖縄県の玉城知事は八月一日、独自の緊急事態宣言を発出した。期間は十五日までで、その後二十九日まで延長された。人口あたり新規感染者数が全国最多水準、病床利用率が一〇〇%を超えるなどの状況を受けてもの。原因は、米軍基地や政府が強行したGoToキャンペーンなどだが、安倍政権は冷淡な対応に始終している。名護市辺野古の新基地建設などに反対する玉城県政や県民に対する報復ともいえる対応は犯罪的だ。

GDP減が戦後最悪、経済失政も
 内閣府は十七日、二〇二〇年四〜六月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表した。前期比年率二七・八%減と戦後最悪のマイナス成長となった。しかも昨年十月の消費税増税から3四半期連続の減少で、計五四・一兆円が吹き飛んだ。安倍政権は繰り返し「景気拡大は戦後最長」などと言ってきたが、内閣府は七月末、景気拡大局面が一八年十月で終了し後退に転じたと公式認定した。失政がコロナ禍の傷を深めたことは疑いない。以降の見通しも暗く、安倍政権は罪を重ねている。

自民が敵基地攻撃言、首相は意欲
 自民党の国防部会と安全保障調査会は八月四日、事実上「敵基地攻撃能力」の保有について早急な検討と結論を求める提言をまとめ、安倍首相に提出した。首相は「しっかりと新しい方向性を打ち出し、速やかに実行していく」と意欲を示した。提言は「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力」のほか、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策などを求める内容。具体的表現は避けたが先制攻撃を可能とする内容で、戦力の不保持や専守防衛などをうたう憲法内容から大きく逸脱することは明白。戦後日本の安全保障政策の大転換となる、きわめて危険な策動だ。

閣僚4年ぶり靖国参拝、好戦姿勢へ
 「終戦記念日」の十五日、高市総務相や小泉環境相ら四閣僚が靖国神社をを相次いで参拝した。同日の閣僚参拝は四年ぶりで、安倍政権下では最多。また安倍首相は参拝を見送ったものの私費で玉串料を奉納した。また首相は全国戦没者追悼式の式辞で、アジア太平洋戦争での加害責任や反省には今年も触れない一方、第二次政権発足以降毎年盛り込んでいた「歴史と向き合う」という趣旨の内容を初めて削り、さらに集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の過程で使用した「積極的平和主義」という言葉を新たに加えた。これらの好戦姿勢は支持率回復を試みた右派へのアピールでもあるが、中国対抗の軍事力強化をにらんだ動きでもある。

日英外相会談、中国敵視鮮明に
 茂木外相は五日、英国を訪問し、ロンドンでラーブ外相と会談した。日本の閣僚が海外を訪問するのは世界的にコロナ感染が広がった今年二月以降で初。英国の欧州連合(EU)離脱を受けた新たな日英貿易協定の早期締結の重要性を確認、また香港問題などをめぐり対中国政策で緊密な連携を続けることでも一致、中国を念頭に置いた「自由で開かれたインド太平洋」実現のための協力など幅広い分野での関係強化を確認した。茂木外相はその後歴訪した東南アジア各国でも、南シナ海をめぐる問題で中国対抗を呼びかけた。中国敵視姿勢を強める英国を起点にした一連の歴訪で、中国包囲にまい進したもの。

立民・国民、合流へ前進も勢い低下
 立憲民主党は十三日、両院議員懇談会で国民民主党との合流に向け、新党の綱領や規約などを了承した。国民も十九日に両院議員総会で合流を正式に決定した。しかし合流をめぐっては、国民の玉木代表が十一日に分党を宣言し自身は新党に参加しないことを表明、地域組織レベルでの不参加も相次ぐなど、勢いは低下している。そもそも、新党の綱領では国の基本政策で「健全な日米同盟を軸に」などと旧民主党と大差なく、安倍政権・自民党の対抗軸になり得るものではない。本来的に、労組が支持すべき新党ではない。

歴史わい曲教科書不採用相次ぐ
 横浜市教育委員会は四日、来年度から四年間中学校で使用する教科書を採択した。一二年度から今年度まで九年使われてきた、侵略戦争を美化し改憲を誘導する育鵬社の歴史と公民の教科書は不採択とした。また愛媛県教育委員会は十九日、二一年度の県立中等教育学校の前期課程(三年生まで)の歴史教科書に、一一年から三度にわたり採択してきた育鵬社の教科書を不採択とした。同社の教科書をめぐっては、東京都立中高一貫校と特別支援学校、神奈川県藤沢市、広島県呉市などでも不採択に転じる動きが進んだ。歴史わい曲に反対する運動の成果であり、大きな一歩だ。

米軍基地ドローン禁止区域に初指定
 防衛省は七日、小型無人機ドローンの飛行を原則禁止する施設として在日米軍十五基地を初指定した。沖縄の嘉手納基地やキャンプ・シュワブ、普天間基地などが対象。これにより基地・施設と周囲三百メートルの上空は九月六日以降は米軍の同意がない限りいかなる目的でもドローンを飛ばすことができなくなる。河野防衛相は「テロなどに使われる懸念もある」と説明したが、報道機関のドローンまで一律に規制、上空からの取材を妨害する思惑があることは明白。安倍政権は事件・事故の相次ぐ米軍を野放しにする一方で、国民・住民には徹底して冷酷だ。


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